カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編

カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック後編

カスタム車の進化を考える際に、カワサキ空冷Zシリーズは最適な例となる。前後17インチホイール化やエンジンの耐久性/過渡特性向上など、登場から半世紀近くのバイク進化を取り込んできた背景があるからだ。その最前線にいる栃木県足利市のブルドックが販売中のZ用パーツから、進化の過程と効果も見えるのではないか。詳細を前編・後編に分けてお届けする。

ストリートを重視してZのアップデートを図る

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こうしたブルドックオリジナルパーツ群、その原点は和久井さんの体験にもあったようだ。

「18歳の頃になけなしのお金でZ750FXを買ったんです。30年くらい前。それでオーバーホールだ分解整備だ……としていくんですが、そこに立ちはだかるのは純正欠品の壁です。そんなに古いとも思ってないし、普通にバイクはあるからパーツ欠品なんて考えたこともなく、どうしようもなくなって。 Zには思い入れがありますから、Z好きの皆さんにはそんな思いはさせたくないなあって。30年後にまさか自分がこんなパーツを作ることになるなんて…とは思います(笑)。

カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編02

その上で、あくまでストリートユースをターゲットにする。レースが過酷な世界で、パーツ性能が高いことも承知してます。ただストリートユースでは、レースのように毎レースごとにエンジンを開けてチェックしたり、交換したりというわけにいきません。そうした耐久性を考えるとストリートの方が過酷。ですから基準をストリートに取っているんです。

冒頭のミッションも、そんな基準で細かく試作とテストを重ねた上で作り込んだんです。ストリート用パーツはそこまでやって、ようやくものになると思います。振動や音にも気を遣うんです」

マフラーにしても、新しい発見はあるという。車体に極力寄せられ、現代風デザインの変則断面サイレンサーを持つマッコイネオはその好例だ。当初はそのコンパクトさから音量が厳しいかと思われたが、実際に作るとかなり音量は抑えられ、音質もZらしい質を高めるものになったという。他機種だと難しいが、Zならではの部分もあってのことのようだ。

このように、以前なかったものを新作していくことで、まだまだZの世界は広がると和久井さん/ブルドックは捉えている。「パーツとしてはZ1-R用テールカウルをストリート向けにリニューアル。またオイルポンプも新作が進んでいます。その上で、新たに〝ストリート用デモ車〞を作る予定です。

今までのデモ車は、GT-Mのイメージを見てもらうとともに、常にその時点ごとの最先端を組み込んできたもの。パーツも開発途中のものもあったり、自分でどうしても試したいからとすぐバラしては組んで……という側面もありました。今回作るのは先端ではあるんですが、耐久性も機能も確認して、市販しているストリート向けパーツで組みます」

カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編03

▲ブルドックの代表・和久井維彦さん。「超カスタムでありながら自然なたたずまい、普通に使える」をコンセプトにZカスタムやパーツ群を送り出している。

コンプリートカスタム車GTMの見本として作られるとのことだが、GT-Mはすでにどの車両も、この新デモ車になって不思議のない作り。つまり、新デモ車はすぐオーダーできるGT-Mの見本にもなり、同時にパーツ組み込み見本にもなるということだ。 またブルドックのオリジナルパーツはカタログにまとめられ、2020年版が間もなく完成。そこにはミッションやマフラー、ピストンやスリッパークラッチなど、Zの全身に渡るパーツが網羅される。

ここでは割愛するが、ひとつひとつのパーツにもミッションと同じくストーリーがある。共通するのは、10年、20年前にはなかった機能が持たされていることだ。それらをカタログ等で見て、使えば、今後さらにZカスタムの楽しみが増す。そこは間違いのないところだ。

 

進化するZのカスタム手法

生産から半世紀、カスタムブームからでも30年近く。今もZ用パーツやカスタム手法は進化している。そのいくつかを拾ってみよう。

ステアリングダンパー
カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編04

かつてはフロントフォークとフレーム横を結んだステアリングダンパー。今はSS用のコンパクトなものがあり、車両製作時にステーをステム近くに追加してマウント可能にしている。

電装レイアウト
カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編05

GT-Mでの例で左側が前方。シート下スペースを活用しバッテリーやヒューズ類を整然と集中マウントし、電気系の管理をより確実化している。もちろんハーネスも引き直される。

スリーパークラッチ
カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編06

現代バイクで標準装備されるスリッパークラッチもTSS製を用意しZ系に対応(写真はZ1000R用でプレート類はF.C.C.製としてキット化)。150psでもまず滑らず、6速ミッションとの併用が効果的。

 

Z用パーツ群の進化

カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編07

サンスターとのコラボレートディスク。フロントのφ320mmディスクは通常現代車向き三角穴だが、ブルドックではZにスポークデザインに。リヤディスクもフローティングピンが通常ステンレスのところ、前後で色やルックスを合わせられるアルミピン/オリジナルインナー仕様となる。

カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編08

アルミ削り出しエンドにショート仕様で200mmという短さのチタンシェル。まさに最先端デザインのWinMccoy NEOサイレンサー。音量は意外にと言えるほど抑えられ、Zにはマッチングが良かった。

カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編09

アップマフラー装着時の干渉を防ぎ、17インチZに適した疲れにくいポジションを得るステップ。リヤマスターもリザーバーをマスターに寄せつつ干渉を防ぐように工夫される。

カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編10

エンジンは自社内で行う内燃機加工により、作業や仕様などの内容を確実に把握。

カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編11

ピストンはピスタルレーシング製鍛造品でトップドームやバルブリセスの形状、トップ部分の軽量化などを見直した最先端仕様。ブルドックではφ77㎜(1229㏄)/φ78㎜(1260㏄)を専売。

カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編12

スリーブも超々ターカロイ製(外側銅めっき)を標準化した。

カスタム見直しメソッド! Zシリーズ ブルドック 後編13

以前なかったパーツの例、ダイナモ/ワンウェイクラッチキット。Z系の弱点、ワンウェイクラッチの滑りや破損をクラッチローラーを3→20個に増やして解決、スターターギヤを新作、スターターコイルやマグネットも現代のFI車に使えるほどの大容量化を果たしている。

※本企画はHeritage&Legends 2020年5月号に掲載されたものです。

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WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。