ZRX1100/1200/DAEGの整備とメンテナンスポイント

カワサキ・ZRX1100/1200/DAEGの整備とメンテナンスポイント

カワサキZRXのオーソドックスなネイキッドスタイルに長年使われてきた左サイドカムチェーンエンジン。車歴も長いものが多くなったZRXシリーズだが、代わるものがない、気に入っているなら乗り続けたい。ならばどうしたらいいか? ZRX1100/1200/DAEGのパーツ&カスタム車製作と入庫車両から見えてくるヒントを、ストライカーワークスに尋ねてみた。

パーツ&カスタムから見えてくるカワサキ・ZRXシリーズの整備とメンテナンス

軽症ならば早めに手を打てば十分長く乗れる

「DAEGの生産終了から4年が経ちますけど、ZRXシリーズはアフターパーツも動いているようですし、車両の問い合わせや入庫も多い印象があります」

こう言うのは、ストライカーワークスの店長、鈴木さん。同店は新 辰朗さんが代表のカラーズインターナショナルのアンテナショップとして活動。カラーズ・ストライカーブランドの販売や取り付け、また車両のメンテナンスやカスタム化にも対応するショップだ。

ZRXシリーズについては多くの車両が作業入庫してきたが、その中でどんな整備傾向があったかを聞いてみた。

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「意外にと言うか、重症なものはあまりなかったようです。元々のベースになったGPZ900Rほどではない感じ。今の車両らしい作りになっているのも大きいでしょうか。それでもいくつかありますから、順にお話しましょう。

まずはやっぱりエンジン、電気といったあたりが多いほか、シリンダーヘッドカバーからのオイル漏れも2〜3割の車両で出てました。プラグ交換時にプラグホール内側のガスケットにオイルが溜まっているものもあります。3〜5万km走ったような車両ならば、まめに見た方がいいでしょう。即性能に影響するものでもないですが、プラグ交換時にいっしょに直すのもいいですね。

オイルフィラーキャップを開けた際には中に見えるクラッチバスケットに傷がないかも見た方がいいです。何か細いものでつついたような傷があるなら、オルタネーターチェーンのテンショナーが暴れた痕です。後のことを考えればチェーンを換えるか、TGナカガワさんの対策テンショナーを使うのがいいですね。普通の使い方をしていて特にハイチューンでないなら、あとはエンジンオイル交換などの定期メンテナンスでかなり乗れます」

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ZRX1100(1997~2000)

基本的には大きな問題がなく乗り続けることが出来るバイクという認識でいいだろうか。ただ、と鈴木さんは続けてくれる。

「その乗れることに安心ばかりもしてられないかもしれません。古い個体で謎のエンスト(エンジンストール)が起こるものがありました。普段は普通に乗れるのが、突然止まる。それで電気だろうってスペアのヒューズを持ち歩いて止まったら換えるってしてたんですけど、根本的な解決ではない。よく調べたらハーネスの被覆が剥けているところがあって、それが何かの拍子に金属に当たるとショートして止まってたんですね。そういうところの劣化は気をつけないといけないです。ネック部とか折れ曲がりの多いようなところ。

ZRXでは国内仕様だとメーター内にリミッターの配線があり、外から衝撃を受けてここに影響があるとリミッター誤作動で吹けないというのもありますから、中古車は遍歴にも気をつけます。 最初のプラグまわりも、プラグと合わせてプラグコードやプラグキャップも古くて固くなっていたら換えてあげるといいと思います。ひび割れは割と見かけますし、そうなると火の飛びも悪くなってますから。

ほかにもタンク下の点火コイル。これも見た目何も変わらないですけど、使っていけば熱などで徐々に劣化して、パワーも落ちます。社外品にもウオタニSP2などありますから、カスタムがてらに換えるとリフレッシュできます。

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ZRX1200R(2001~2008)

何かおかしいと思ったらその時にトラブルシュートしておけば被害も少なくて済むと思いますし、こうしたあまり大ごとでない部分は先回りで対処した方がいいでしょうね。1200ではキャブレターの分解清掃を依頼されることも多いのですが、同車ではフロートチャンバーのOリング交換が多かったですね。キャブ本体がダメということもなく、こうした細かい部分がきちんとされることで性能も戻ることがほとんどです」

素材や設計が現代化してからの登場だったZRXシリーズは、放置や無理な扱いがなければ定期整備での維持が難しくないという印象のようだ。車体側でもステムやホイールベアリングの給脂や交換といった、当然やるべき部分を重視するという方向だった。

 

ZRXシリーズはまだタマもあり今から手に入れるにも良好

パーツの動きや問い合わせからも、ZRXは今も乗りたい人、買う人が多いようです、と鈴木さん。

「ZRXをよく扱っている印象があるのか、ここまでのような内容での問い合わせは多いです。パーツはストライカー製品で言うと、ステップとマフラーのZRX用は安定して売れ続けています。おそらくですが、中古で今手に入れて、最初に換えてみようかというので買ってくださるんでしょう。

今はZRXのような取り回しも使い勝手も良くてパワーも十分という、ある意味で普通に使えるようなバイクがないという印象で、中古市場を探されている。販売期間も長く、仕様も大きく変わらない。それで自分好みのポジションと特性、あと軽量化という具合で少しいじる。マフラーもフルエキ、スリップオンとも動いているようですし。

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ZRX1200DAEG(2009~2016)

1200が特にそんな感じで、先に言ったような各部の見直し=電気やキャブ、ベアリング類。加えて、サスペンションのオーバーホールあたりも視野に入れて定期整備していけば5〜7万kmは不安や不満もなく乗れると思います。

DAEGはよりまとまりの良い優秀なパッケージになっていますから、これも同様に見てあげればいいと思います。ブレーキキャリパーも1100や1200のような6ピストンではなく、4ピストンで整備も楽になっていますし。付け加えておくと、6ピストンは揉み出しした後でも戻りの悪いピストンが残りやすいですから、ここはいっそブレンボ4Pにしてしまう等で対処したいですね。高くないですし」

ストライカーでは今、カワサキ車の商品開発の軸はZ900RS(コンプリート車設定もある)に移ってはいるものの、今回作業例となったパーツデモ車のDAEGは各種イベントに、またショップでのツーリングにも稼働しているとのこと。普通にそばにあるバイクというポジションも持つZRX。困ったらストライカーワークスを訪ねるのもいいだろう。

 

ZRX1200 DAEGのデモ車と共に整備とメンテのポイントを紹介

パフォーマンスが高い一方で、現代的な作りの標準的なバイクという印象のZRX。ストライカーワークスのデモ車ZRX1200 DAEGと共に、今から手に入れた場合でも気をつけたい箇所を見た。

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【ステム他ベアリング類は適度にグリスアップしておきたい】
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1980年代バイクよりも組み立てや元々のパーツの精度が上がり、素材も向上するなどで大きな問題は少なくなったが、基本的な潤滑等は欠かせない。ステアリングステムなどの可動部への給脂(グリスアップ)は車検ごとなどに行いたい。ショップに点検/整備として依頼するのもありだ。

【点火コイルは徐々に劣化するので社外交換でリフレッシュ】
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1100/1200/DAEGともほぼ同形状の鋼管ダブルクレードルフレーム。燃料タンクを外して真ん中下方に現れる円筒形のパーツが点火コイル。外観上は何も変わらないが使用による熱や経年で内部は徐々に劣化する。新品またはウオタニSP2などへの社外品交換で性能回復やプラスができる。

【メインハーネスのこすれや劣化はエンジン不調に直結】
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今や重要部品として認識したい配線系。ステアリングヘッド部はハンドルを切ることも多く、メイン含めハーネス(金属線+被覆の構成)が曲げられて、場合により中で切れたり配線が露出することもあり、そうなるとエンジン不調にもつながる。時に応じてよく観察し、劣化がないか確認を。

【プラグコードとキャップは要注意、点火プラグとともに確】
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点火プラグに被さって電気を送り込むプラグキャップとコイルからつながるプラグコードは意外に劣化を見落としがち。キャップ(樹脂製)の割れや色あせ、コードのひび割れ等が見られたら即交換。内部も劣化して性能を落としていることが考えられる。プラグと一緒に点検しよう。

【ホイールベアリングなどの可動部もタイヤ交換時に確認する】
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ステムベアリング以上に気を配りたいのがホイールベアリング。水も浸入しやすく、大きな荷重も受けるところでもあるので、タイヤ交換の際などに一緒に点検し、必要に応じて給脂する。壊れて回転しにくいケースも多くあるので、その際は交換。消耗品と考えるのも手だろう。

【エンジンや水まわりは大きな問題はなし。通常メンテを重視する】
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同店に入庫してきた車両では大きなトラブルはなかった水まわりとエンジン。ただ、年月の経った車両はラジエーターや配管内の劣化(水垢堆積や錆び)も見られやすくなるので、走行距離を重ねた車両では冷却水交換時に確認するのもいい。エンジンもまずは通常メンテを施すこと。

【ヘッドカバーからのオイル漏れはあるものだからまずは拭く】
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シリンダーヘッドとヘッドカバーの間にあるラバーパッキン部からのオイルにじみ、またプラグホール内側のオイル溜まりはZRXでよく見られる。大ごとではないが次のトラブルを防ぐ、またいつ起こったか分かりやすくするためにまずは漏れを拭き、他のトラブルがないか確認。

【1100と1200の6Pキャリパーはブレンボ4P化してしまうのも手】
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1100と1200のノーマルではフロントに対向6ピストンキャリパーを使っていたZRX。メンテナンスでピストン揉み出しをした際に戻りの悪いものがあり、引きずり等の原因になる。ここは写真のようにブレンボキャスト4Pに変更する手がある。DAEGでは純正で4ピストンを採用した。

【吸気系も普通に乗られていれば大丈夫】
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ZRX1200RのCVK36キャブ。内部としてはフロートチャンバーのOリング劣化が目立つ程度で、これもインシュレーター含めて劣化に注意ということだ。

【フィラーキャップを外してクラッチに打痕があるケースはスターターに注意】
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エンジン右後ろのオイル注入口(フィラーキャップ)を外すとクラッチバスケットが見えるが、この時打痕が見られる場合は要注意。セルを回してスターターが回る際にテンショナーが踊りクラッチを叩いた痕だからだ。チェーンを換える、またはTGナカガワ製対策テンショナーへの換装を鈴木さんも勧めているとのことだ。

【前後サスも動きを確認してオーバーホール等を行っておくといい】
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インナーチューブ径φ43㎜で社外品も多いフロントフォーク、ツインショックも豊富なリヤサスとも換装した個体も多いZRX。きちんとした腰のある動きになっているかを確認、年数や距離でのオーバーホールも検討しておきたい。これも細かい部分ではあるが、全体としての性能維持に効く。

【ステップやマフラーはアフターパーツに交換することも多い】
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ステップキットやマフラー(フルエキ/スリップオン)は定番的なパーツとして今も需要があると鈴木さん。写真はφ110/480㎜のヒートカラー真円チタンサイレンサーを装着。

 

■取材協力・ストライカーワークス

※本企画はHeritage&Legends 2019年11月号に掲載されたものです。