CB-Fアップデートの要点は精度と軽さにあり 後編

ホンダ・CB-Fアップデートの要点は精度と軽さにあり 後編

ホンダ・CB750F発売からほどない1980年にオープンし、今に至るまで多くのCB-Fを扱ってきたタジマエンジニアリング。車体からエンジンまで、定評あるカスタム手法は今も新たなステージに進んでいる。その詳細を前編・後編に分けてお届けする。

エンジンのポート加工とクランク軽量化で弱点を対策

ーー前編に続けてタジマエンジニアリングにホンダ・CB-Fについて聞いていこう。

そのエンジンも、タジマスペシャルが確立している。クランクシャフトの軽量加工とフルバランス調整に、これを支持するメタルジャーナルの鏡面仕上げ。ヘッド部はおなじみポートの加工研磨。ピストンは二硫化モリブデンフッ素コート(オーベルコート)と、各部に定番メニューが与えられる。

「どれもフリクションを減らして、ポンピングロスも減らす。滑らかに作り込むことで、エンジンにも滑らかさや伸び感が出てきます。クランクは12・3㎏のノーマルから2㎏前後軽量化しますがトルク感は失われず、レスポンスが良くなる。ただ落とすだけだとバランスも強度も落ちますから、軸部に向けてテーパー形状にして行います。

新しいところではメタルクリアランスかな。今は35/1000(mm)で取るようにしてます。油圧も上げて、極力ブレのない微細なクリアランスの中で油膜を保持してクランクをフローティングさせる。これに合わせ軸=ジャーナル側も鏡面仕上げします。

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ポートは拡大と研磨をするんですけど、Fの場合、ノーマルカム仕様で施して効果がある。充填効率を高めてやって、ノーマルでも低中速がある分を生かしながら、上も伸びる。バルブも少し大きくしてやって、スプリングは少し固めに。強化タイプだと固すぎなので、これも対応品を見つけてます。 あとはタイミングをきちんと取ること。1970年のS800レーシング(4輪。同店はこの世界でも有名だ)時代から続けていることですけどね。

一般的にはオーバーラップを開くと出力特性が高速型、詰めるとトルク型になりますが、ここも個体ごとに合わせます。燃焼効率が高まればパワーも出て、燃費も上がるし、耐久性も高まる。この仕様で5万㎞は楽に保ちます。今なら1100用にクロスミッションも社外品があって、組んだ車両もあるし、新品の出ない1100F用カムチェーンテンショナーも他機種純正流用で使えるようにしてます。これが今のタジマ仕様。難しいことはしてません。ただ、オイル交換は定期でちゃんとしてね。通年10W-40でいいですよ」

エンジン仕様も細部でアップデートされていた。ここに込められたのは、田島さんがFの現役時代から施し、効果ありと見た内容だ。じつは、田島さんがショップを開いたのはちょうどF登場から1年、39年前の7月だった。開店時から一番やりたかったのは今のようなカスタム作りで、各部メニューは車両販売の傍らで積み上げられてきた。車両販売が落ち着き、冒頭の「Fの形を大事にして楽しみたい」お客さんが増えるのとタイミングが合い、今ようやく田島さんはやりたいことを前に出したということだ。

 

エンジンの弱点対策

弱点らしい弱点は限られるCB-Fのエンジンだが、その弱点を対策し、手を入れればパワーも出せて特性も良くなり、さらに長寿化も図れる。積み上げられた定番にもうひと重ねのタジマ流を見よう。

【STDカムでこそ有効なポート加工】
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燃焼室に効率良く混合気を送り、すーっと燃焼ガスを排出するよう行われるポート加工は、CB-FではハイカムよりSTDカムで有効だという。処理肌も少し粗さを残して流体を滞留させない。

【ヘッドまわり冷却に有効な気筒間ホール加工】
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1- 2番、3- 4番の各ポート間には通風穴があり(写真は排気側で、下ではスタッドボルトが貫通しているのが分かる)、ここを少し拡大加工して通風性を高めて冷却に生かせる。ただSTDともどもここに溜まる砂がエンジン作業時に内部に落ちることもある点は要注意。

【シートリングは精密加工バルブガイドも精密打ち替え】
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バルブガイドは必要に応じてタジマ自製品を打ち替え(ガイドを冷やし、ヘッドを熱する)し、正しい芯が出るようにして使う。

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シートリングの当たりも田島さんが理想値とする1mm幅に加工。写真は750FでINφ21.5→24 ㎜ /EXφ19.5→20mmに大径化。ビッグバルブ化の際は燃焼室横も加工して大径化で狭くなるバルブ脇のガス抜けスペースを確保する。

【純正ベースにコーティング処理して使う】
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ピストンはタジマでは基本的にノーマル鋳造品をベースに使う。ただしバランス取り、また写真のようにサイド部へのオーベルコート(二硫化モリブデンフッ素コート加工)を必ず行い耐久性と初期なじみ性、潤滑性を高めている。同加工は今の市販車にも使われ、有効だと田島さん。

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上の写真は2枚とも左はCB1100F/R純正φ70㎜(1062cc)、右はRSC(レーシングサービス・コーポレーション=HRCの前身)製CB-Fベース市販レーサーRS1000のφ70㎜ピストン。ともにオーベルコート加工済み。1100Fには今は中古良品を探して同加工で使うことも多い。RS1000ピストンは今タジマで製作中の車両に組むという。支持剛性も高く、左でも分かるように肩が高く圧縮も上がるがリングは共通。この有効性も今後確認される。

【カムチェーンの前側ガイドは現行品で代替する】
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CB750Fでは再生産されていて、900Fでも1100F用を使ってきたカムチェーンガイド(シリンダー前側に入りクランクとEXカムをつなぐ。写真右)は、折損しやすいパーツで、1100F用も廃盤。そのためタジマでは現行機種用から代替品を探して対処。耐久性も確認済みだ。CB-F特有の前2列/後1列カムスプロケットもバーニア(長穴)加工して本文中のバルブタイミング調整に活用している。

【15%軽量化をベースにしたクランクはフィールも良好】
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2kgを目安に軽量化するというクランクはAMAスペンサー車用を見本にカット。気筒ごとに落とす量や箇所は異なり、ノーマルを参考に落とすという。ウエブと全体の強度を落とさないようにピン部に向かってテーパー加工。ノーマル排気量+ポート加工+軽量クランクでノーマル以上のパワー、街乗りで多用する3000~4000rpmの振動も消え、耐久性も高まる。12万kmの走行例もある。

【ミッションまわりにも選択肢が出てきた】
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左はCB1100F用5速、右はRS1000用5速クロスのともに純正ミッションで、ギヤ比の違いも分かるだろう。今は1100F/R用にドリームクラフト製5速クロスミッションもあり、選択肢自体は増えたとも田島さん。エンジン仕様でもミッション延命化を補助している。

 

CB-Fの取り回しの軽さを重視したマシンパッケージングも

車体とエンジン加工を定番化した上で、タジマスペシャルはパッケージにも注目できる。

「どうせだから今走って気持ちいいのがいいでしょ。だから現代車に近いんでしょうけど。フレームはヘッドパイプとピボットをつなぐ、人間で言うと体幹を鍛えるように考える。でもフレームワーク自体は変えられないから、全体で強くして、かつ1カ所に負荷が集中しないよう考える。補強で重くなってはいけないから効果的に素材、場所、方法を選ぶ。

無駄なパートの見直しや現代パーツの使用で最終的に20~30kg軽く出来て、目標値で車両重量200kg、あと燃料が10kgと思ってもらえればいい(750Fで整備重量247c、CB1300SFだと270kg)。ここは見えないけれど、オーナーは分かる。今風な感じでしょ? ディメンションはいろいろと試していった結果、現行CB1300SF(SC54)とほぼ同じになりました。

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▲RCB/RS1000の外観を持たせたタジマ“RS仕様”のカスタム(1号機は販売済みでこれは2号機。3/4号機も製作)。CB750FCをベースにCB1100R用エンジン(排気量は1062ccのままで軽量クランクやポート拡大、ピストンコーティング、ベアリング/メタル類一新)を搭載。吸排気はFCRφ37㎜+メガホン。フレームはP.14の通りの20カ所で、φ38㎜アルミ材の着脱可能サブフレームもセット。フォークはKYB+SHOWA混成仕様φ43㎜で東洋硬化でハードコート、オフセットは35 ㎜。スイングアームはタジマ加工品でホイールは3.50-17/6.00-17サイズ。P.14の1100Fに近しい内容を持ちながら、外観を大きく変えてオリジナリティも持たせている。

キャスター25度、トレール99mm、フォークオフセット35mm。真似してそうなったんでなく、オフセットもキャスターも変えていってこうなった。17 インチだとこのあたりに最適値がある。メーカーの数値もスゴイよね(笑)なんて村嶋君と確認したりしてます。これでストリートもオートポリスの走行会も楽しめますよ」

ルックスも、純正流用足まわりでFらしさをキープしたり、着脱可能なサブフレームによってRCB/RS1000スタイルにもできる(しかもFスタイルとのコンバーチブル)など、バリエーションも豊富になった。

こうして信頼のメニューが出来れば、その上が追える。同店では今、モノサスCB1300SFやCR110スタイルのCBXなど、複数車両の作業が進んでいる。これらのノウハウは機種をまたいでCB-Fに転用も見込め、新メニューにつながる。こうしてFはさらに快適化でき、楽しむ年月を増やすことが出来るのだ。

■取材協力・タジマエンジニアリング

※本企画はHeritage&Legends 2019年10月号に掲載されたものです。

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