GPZ900RTGナカガワ後編

カワサキ・ニンジャ GPZ900Rカスタム最前線!トレーディングガレージナカガワ 後編

劣化する車両、悪化する環境。そんな中でより長くカワサキのNinjaに乗りたいと思った時に、カスタムやチューニングは御法度なのだろうか。答えはNOだ。余裕あるパワーを得ながら耐久性も有効なエンジンチューニングとはいったいなんなのか? トレーディングガレージナカガワの手法に注目した。今回は前編・後編の後編です。

環境が悪い今を乗り越えるために必要なメニュー

ーー前編に続けてトレーディングガレージナカガワにエンジンチューニングについて聞いていこう。

「まず結論というか、ニンジャでまだエンジンを開けたことがない、距離が出ている。そういった人は間違いなくオーバーホールまたはチューニングメニューを施すべきです。それも、できるだけ早いタイミングのほうがいい。

なぜかと言うと、今までよりもパーツ事情、エンジン事情が悪化しているからなんです。パーツは純正欠品が加速度的に増えていて、エンジン内部もかなり減りました。クラッチまわり、ミッション、コンロッドにクランク。純正オーバーサイズピストンもない。在庫や中古良品で補うにしても、価格が目に見えて上がっている。

じつは10年ほど前にも同じ『今こそ』を勧めているんですが、その時に開けたエンジンより、今の方が内部のキズなど、ダメージがよりひどくなっている。すると換えるパーツも増える。つまり、同じ仕上がりになる作業をしても、料金が今までよりも多くかかることになるんです」中川さんは言う。

パーツ調達が厳しくなれば、状態のより悪いエンジンが元になれば、同じ作業をしても費用はかさむ。でも、だからと言って作業を見送るのは劣化を見過ごすだけになる。

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「少なくとも、それは避けてほしい。走行距離が8〜10万kmになっているような場合はなおさらです。今からもこのパーツ減少/高騰傾向は続きますし、良化はしないと思います。それで今エンジンを開けてリフレッシュしてやれば、ここからまず5〜6万kmは保ちます。それに状態も分かるし、次のオーバーホール時の費用も軽減できる。早め早めが重要です。

純正オーバーサイズ品の終了にも、スペックエンジニアリングさんが互換品を作ってくれて、今ウチでも組んで使ってます。それで良好なのでTGNのメニュー内にも加えさせてもらいました。これでメニューにも余裕が生まれました。

話は少し変わりますが、チューニングとしても人気で、ウチとしてもベストバランスとして勧めるのはφ78㎜のTGN#1050メニュー。ですが今、外観もエンジンもきれいなニンジャを作りたいという方も増えて、その場合は純正オーバーサイズ程度というオーダーが多いです。そこに使える新品ピストン(ここではスペック製)があるのですから、ワンステップ完成。それから5〜8万km走って、まだ972や1050化出来るというように、先の余裕も残せます。そうした考えで接してほしいですね。

あとはキャブレターインシュレーターやオルタネーター/バランサーのダンパー、水まわりのクランプなど、ダメになりがちなパーツも早め早めに交換しておきたい。とにかく予防です」

日頃から距離や時間で状態に配慮しながら付き合う。その上で今後長く乗るための対策を施してやる。ベースが持つ現代バイクに近いユーティリティと安心感に、充実のパワーも得て楽しめることは間違いがない。ならば今こそが、ニンジャエンジンの開けどきだと言っていいのではないだろうか。

 

各部のTGNチューニングメニューも進化を続ける

ピストン
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▲TGNエンジンメニューで使われるピストン(写真ではコスワースのみTGN加工済み、他は出荷状態)と排気量を紹介する。左から、純正Φ72.5mm(908cc)、SPECエンジニアリング製Φ73.0mm(920cc、+0.5mmの1サイズオーバー)、ワイセコΦ75.0mm(972cc、+2.5mmでポピュラーなサイズ)、ワイセコΦ78.0mm(1050cc、TGN的にベストなバランス)、そして右端がコスワースΦ79.omm(1137cc)。左の4つはストローク55mm(STD)で、右端のみ58mmで使用

コンロッド
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▲4本あるコンロッドは重量合わせとバランス取りを行い、場合によりH断面コンロッドも使う。写真左はノーマルのTGN加工品で、ロッド部に重量合わせの跡が見られる。右側はロッド部が曲がったGPZ900Rのもので、ノーマルで不調を訴えたエンジンを開けたらこうなっていた

シリンダー
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▲シリンダーは上記各ピストンに応じてボーリングまたはスリーブ交換。スリーブ単体の摩耗(樽状に減る)以外にブロック側の変形も多く、ゆがみが見られたら使わない。TGNでは「パワーパッケージ」として972ccと専用ライナー交換済みの1050 cc/1108㏄/1137cc各排気量用シリンダー&ピストンキットも用意する

クランク
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▲クランクはよりスムーズな回転と適度な慣性力を得るためにバランシングし、軸=ジャーナル部は1/1000mm単位での平滑加工=ラッピングを行う。これもTGNの通常メニューに入り、実作業は#2000砥石での研磨。傷を消しフリクションを低減するが、入庫品の傷の増え具合が最近顕著になったとのこと。処理前後は体感できるほどの違いがあるとのこと

カムシャフト
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▲カムシャフトの軸部もクランクと同様にラッピングとカム山エッジ取りを行う

軸受け
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▲クランクケースと上のクランク軸との間に入る軸受け、クランクメタル(メタルと軸の間は微小な隙間があり、オイルが入る。上写真の穴はケースからのオイル供給用)。指定合い番でクリアランスを合わせるだけでなく、TGNではここもR-SHOT処理して表面硬度やオイル保持性を高める

ミッション
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▲GPZ900Rのミッションは純正欠品となり、これまでダメージ時に新品交換できたものがそうはいかなくなった。TGNでは「TGN保証付き・ショット処理済みリビルドトランスミッションKit」を製作し常時在庫する

■取材協力・トレーディングガレージナカガワ

※本企画はHeritage&Legends 2019年8月号に掲載されたものです。

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