GPZ900RTGナカガワ前編

カワサキ・ニンジャ GPZ900Rカスタム最前線!トレーディングガレージナカガワ 前編

劣化する車両、悪化する環境。そんな中でより長くカワサキのNinjaに乗りたいと思った時に、カスタムやチューニングは御法度なのだろうか。答えはNOだ。余裕あるパワーを得ながら耐久性も有効なエンジンチューニングとはいったいなんなのか? トレーディングガレージナカガワの手法に注目した。前編・後編に分けてお届けするが、まずは前編をどうぞ。

高い耐久性を持つカワサキ・Ninjaのチューニングエンジンに注目

トレーディングガレージナカガワ(以下TGN)はもう20年以上もニンジャ系エンジンのチューニングメニューを次々構築し、ユーザーに提供してきた。

ZX-11やZRX1100/1200といった後継機とのエンジンパーツ互換性を活用しての排気量拡大(ボアだけでなく、以前に行っていたような1200系クランクによるストローク変更もできる)や、同系エンジンでよく言われてきた弱点=カムかじりやオルタネーターチェーン切れ=の対策、さらにはそれ以前のチューニングエンジンで当然視されていた耐久性の低さも克服し、パワーも十分、きちんとしたオイル交換等のメンテさえしていれば(これは他の市販車でも同じ、必須のことだが)5〜6万kmは保つ耐久性も合わせ持つという内容に進化した。同店では1度オーバーホールして15万km以上乗り続けたという車両もあるという。

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代表・中川さんはチューニングメニューを確立する一方で、その内容をさらに充実させてきた。新しいところでは、およそ1年前に導入した表面加工のR-SHOT(略してRS-D)がある。これは対象物の表面に樹脂メディア(媒体)を打ち込む=ショットしてディンプル加工を行うもので、打ち込みによって対象物の表面応力を分散して硬度を高め、かつ微小くぼみができることによるオイル保持性向上を狙う。エンジン内部パーツが主対象で、新品は元より、寸法が保たれていれば中古にも使える。このことから良好な中古品に打つことが多く、TOT車両でも数台が依頼しているという。

ストリート/レーシング問わずで、このRS-Dとモリブデン系ショットのWPC処理とを使い分けて施すことで、TGNのメニューはより充実した。ピストンは元より、ロッカーアーム、クランクメタルにミッションなど、主な可動部に施せる上に、ネガがない。また潤滑性が高まることで、滑らかなエンジンができ、同時に耐久性も高まる。さらにピストンやミッションも、中古品の延命と再活用が可能になった。

とくにニンジャ系エンジンにおいては、純正欠品部分の増えたミッションには特に有効だった。中古ながら良質な部品をピックアップしてR-SHOTを施した上で組み合わせ、TGN保証付きのリビルドミッションとしての供給が行えるようになったからだ。これはレース用途のみでなく、ストリートでも評価が高い。R-SHOTはミッションにも、これに組み合わせるシフトドラム/アームにも施すのがお勧め、と中川さん。

このような手法を中川さんが採ること、また延命を重視することは当然ながら生産終了から15年以上経ったニンジャには大事なのだが、こうしたメニューを受けたとして、それらにはどんな先が待っているのか。どれを選ぶといいのか。そして、パーツの供給事情が悪化していると聞く今、あえてメニューは受けるべきなのか。

 

定番ゾーンに入ったTGN・エンジンメニュー

TGナカガワが用意するニンジャ系エンジン用チューニングメニューはもはや定番と言える。燃焼効率の向上やフリクションロスの低減、バランス取りにセキュリティ(耐久性)向上に向け、多彩な加工とオリジナルパーツが設定される。

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・ヘッドチューン
・各部バランス取り[燃焼室/ピストン/コンロッド等]
・エッジバリ取り
・メタル合わせ
・クランク軸ラッピング
・R-SHOTほか表面加工
※排気量各種(908/920/972/1050/1108/1137……etc)
※対策メニュー各種(DOS他オイルバイパス/DIS・HIR他点火系etc)
・=加工 ※=パーツほかセレクト

上に挙げたのはTGNエンジンチューニングメニューの主なもの。排気量等の基本スペックはそのままながらメニューには随時改良の手が入っている。エンジン内部だけでなく外観のリフレッシュや、右ページ/下に見られるような弱点対策/強化用オリジナルパーツもこのメニューの恩恵を高めるものとなっている。

ピックアップコイル
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▲クランク軸左端に付いた同軸ローターの凸部がクランクケース側のピックアップコイルを通過することで各気筒の点火時期を決める。上はA1~11で2個あり、右のA12~では後ろ側1個となる。この2個タイプが点火ずれを招くことやハーネスの変更に対応するためTGNでは「GPZ900R用 HIR改 2-1コンバートkit」を用意。確実な点火を助ける

DIS
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▲点火ユニット→コイル→プラグと電流が流れる点火系。ノーマルコイルを廃して現代モデル同様にプラグキャップ一体式とするDIS(ダイレクトイグニッションシステム)は点火強化と簡素化が図れる

ヘッドバイパスキット
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▲早期から作られたキットで、オイルポンプ部からロッカーシャフト内部へ直接オイルを送るライン(写真左手に見えるホース/別体パーツ)、を引いてとくに吸気側で見られるカム/ロッカーアームの潤滑不足を対策。いわゆるカムかじりを予防する

HIR
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▲ノーマルニンジャで見られる4000〜6000rpmのトルク谷の原因が電気系にもあると判断、低/中/高回転域の各適正点火マップを製作し設定。ほか計10種のマップを保存(PCで製作可)/切り替え可能とした点火ユニット

DOS-R(ダイレクトオイルシステム)
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▲右上のヘッドバイパスの考えを発展させ、ヘッドカバー内4カ所にオイルノズルを追加してカム/ロッカーアームの接触部に直接オイルを噴射するようした。潤滑オイル量が増えセキュリティも向上

R-SHOT
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▲本文のようにメディアを対象物に打ち込む表面加工で、写真はそのうちR-SHOT(D)を施したピストン。対象物表面の応力を分散し硬度を高め、オイル保持ディンプルも作る。モリブデンを打つWPCと使い分けている

エッジバリ取り
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▲これも初期からのメニューで、クランクケースの端で尖ったエッジを落とし、滑らかにすることでこの部分がエンジン内に落ちてトラブルを招くことを予防する。かなり重要だ

■取材協力・トレーディングガレージナカガワ

※本企画はHeritage&Legends 2019年8月号に掲載されたものです。

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