いろいろ実践したけれどまだやれることがある!
前後17インチ化にリヤのリンク比を適正化したカワサキGPZ900R“赤Ninja”(前回、2020年11月9日掲載の当欄参照)を作ったウイリー。その安定性が高かったことを受けて、2005年に新たな方法に着手したのがこの2号機=“青Ninja”だ。その手法とは、キャスターを立て(赤Ninjaはノーマルの29度)、リヤサスまわりを改良することだった。
「17インチらしいスポーツ性の高いハンドリングにしたかった。リヤサスのリンクもレーサーと同じようなレバー比と変化率にした。このリンクを付けるためにはフレーム側も改造しなくちゃいけないから、ノーマルフレームのままでは無理でした」と、ウイリー・富永さん。
その言葉の通り、青Ninjaではフレームが徹底的に改良された。ただし、ニンジャフレームそのものは維持したストリート仕様だ。エンジンハンガーは赤Ninja同様のパイプ仕様としつつもピボット位置を可変、ウイングタイムステムもフォークオフセット可変とし、スイングアームはハイトコントロールタイプ。リンクはスーパーバイクレーサーなどと同じリンク比とするなどがその内容だ。
エンジンも同様に純正鋳鉄スリーブにめっき処理。ピストンはSTD+2.5mmの鋳造φ75mmをWPC処理(スリーブともSOHCエンジニアリング製)。φ75×55mmで約971.44cc(このため車両もWR972と命名)。カムはヨシムラST-1。キャブはヨシムラTMR-MJNφ38mmを使った。
「この青Ninjaは一応成功。でも、一般のライダーがここまでやるのは大変。けれど、7N01スイングアーム、フォークオフセット30~28mmのウィングタイプのステム、オーリンズ正立フォーク、17インチ対応リンクなどを使って、キャスター角25度に設定できれば、スポーツ走行ぐらいは十分にいける仕様になるはず」と富永さん。
ウイリーではこの青Ninjaの後、赤Ninjaの進化型(3機目の開発車両)も製作し、各パーツを煮詰めていった。
「今でもニンジャ用パーツは人気があるし、レースで使う人もいる。こだわる人はこだわるから」(富永さん)と、ZRX1200DAEGやZ900RSももちろんいいけれど、ニンジャにしかない楽しみ方があるという。まだまだ、ニンジャはカスタムで進化させる可能性がある、を示してくれる車両となった。
Detailed Description詳細説明
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キャスター角は純正の29度から24度に立てた。ヘッドパイプは40mm後方に。フロントエンジンハンガーは純正の板からパイプに変更。こうした部分は各種金属材料を熟知し、その加工・溶接に長けているからできる補強だ。一方のスイングアームピボット位置はノーマル-13mm~-20mmまで可変。ピボット部はボックス状に新作している。
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開発中期の仕様。ウォーターラインが完成形とは異なっているが、キャスターが経っていることや車高が適正なことはこの写真からも読み取れるだろう。
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7N01ビッグ目の字スイングアームはリヤキャリパー直付け仕様。チェーン引きはハイトコントロールでタイプでコの字型をしている。
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青Ninja用はSPLリンクで、レバー比はスーパーバイクレーサーなどと同じ約2:1。その変化率は3%以下と、ほぼフラットになる。ウイリーではディメンション設定やリンク比などの設計でも、専用ソフトまで持って対応している。こうした部分も製品に反映されるところ。
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トリプルツリーはオフセット可変式とした。フォーククランプ部のカラーを回すことで、26mmと28mmを選べる仕組みだ。
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写真上側の中央はウイリー製削り出しサーモスタット。この方が冷却水交換作業がしやすい。ラジエーターからウォーターポンプへの水路はケースカバー上へ移設。パイプはアルミ手曲げ。オイルクーラー位置は前輪との干渉を防ぐためラジエーター下から横(縦置き)に移設された。
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吸気側ロッカーアーム、およびカムのカジリ対策で考案したヘッドオイル噴射。クランク#3大端部潤滑用経路も新設。
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CNC削り出しのヘッドカバー。この後人気製品になり、現在は他モデル用(ZRX1200DAEGなど)も市販されている。
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この車両にも装着されるトップエンドオイルフィッティング・デュアルインレット。熱強度が非常に高いAP2000のCNC削り出しによるもの。
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油圧式クラッチシリンダーもニンジャ向けの人気製品だ。これはスピードメーターケーブル仕様。写真右には可変のピボット部も見える。
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エンジンカバー類もAP2000材削り出しで作られる。高強度で万一の転倒時にはケース保護にも。写真はこの青Ninja開発時の試作品だ。