TGナカガワの特許技術R-Shot#M施工に注目! 後編

TGナカガワの特許技術R-Shot#M施工に注目! 後編

樹脂を特殊配合したメディア(粒子)を高圧照射してパーツ表面に滑らかな下地を形成するのが『R-SHOT』。これを下地に二硫化モリブデンを塗布浸透、さらに焼結処理してパーツ表面の平滑化とフリクション低減を実現するのが『R-Shot#M』。どちらもトレーディングガレージナカガワが提供する、独自の表面処理の特許技術だ。パーツの精度を上げるばかりでなく、中古パーツ再生にも効く幅広いその効能は、絶版車オーナーの心強い味方となってくれるだろう。その詳細を前編・後編に分けて紹介する。

摩擦低減と高硬度化を自在に実現する施工技術

まずは『R-SHOT』。敢えて分かりやすく書けば、ブラスト処理がイメージしやすいだろう。さまざまな樹脂を配合したメディア(粒子。同店は滑走剤と表現)を高圧照射して、対象物の表面を滑らかに加工する技術だ。対象物は非鉄金属。例えば新品、中古品を問わずピストンのスカート部にRSHOTを施工すれば、条痕(成型時に作られるオイル保持溝)を残したまま、微細な凸凹面を追加して、より深いオイル溜まりが作れる。中古ピストンなら、使用とともにできる擦り傷や、先の条痕効果を打ち消しオイル保持力を低下させる縦傷も消し去る。

さらに施工時に一定の応力がかかることで、対象物の表面硬度も上げられる。このR-SHOT施工時点で、フリクション低減+表面硬度アップの恩恵が十分に受けられるのだ。R-SHOT用メディアは使用箇所でその粒子の成分を変えられるのも、大きな特徴だ。

そして『R-SHOT#M』。RSHOTで形成した素材表面を下地に独自ブレンドの二硫化モリブデンを塗布、焼結処理する施工技術だ。この焼結も他にない工程。P97のイラストに詳しいが、素材表面に焼結形成する二硫化モリブデン層は0・5μm〜5μmの間で、用途に応じて膜厚調整が可能。また素材表面からの凹深層側も、先のR-SHOTでの下地処理の加減で調整が可能だ。

TGナカガワの特許技術R-Shot#M施工に注目! 後編02

焼結処理された形成膜は、組み付け後の長時間の摺動で減少しても、凹層に残存した二硫化モリブデン層が露出することで、フリクション低減効果は維持される。こうした二硫化モリブデンによる表面処理で聞く「被膜剥がれ」はない。仮にR-SHOT#Mが無効化することがあるとすればそれは、二硫化モリブデンが浸透する素材表面の凹層がすべて削り取られるほどのダメージを受けた時だけだ。

トレーディングガレージナカガワではこのR-SHOT、そしてR-SHOT#Mを効果的に組み合わせることで、モータースポーツの第一線からストリートユースまで、多様なニーズに応えている。レースの現場で言えば、二輪ならTOTなどイベントレース参戦車はもちろん、四輪でも各種公認レース用エンジンパーツの施工依頼実績も多数あるほど。

 

一生付き合うと決めた愛車にこそ使ってみたい

当企画では、トレーディングガレージナカガワに最も入庫が多い、GPZ900R用エンジンパーツへの施工例を紹介したが、同店が提供するGPZ900R向けTGNコンプリートエンジン製作時の採用率は100%。同様に純正部品の枯渇に悩む、ZやCB-F、GSX1100Sなど、人気絶版車への施工依頼も少なくない。『一生モノとして付き合う』と決めた愛車の延命は、各オーナーの何よりの命題だろうし、もし運良く希望パーツが入手できるとしても、その価格は上がっていくことはあれど、下がることはない。

「新品パーツを揃えて組むこと、その後のパーツ寿命を考えれば、施工価格は高いものではないと気づいてくださる方が多いです」(中川さん)。極端な例では、説明するまでもなくR-SHOT#M施工を依頼するオーナーもいたとか。R-SHOT、そしてR-SHOT#Mへの期待は高まるばかりだ。

 

ピストンまわりへの施工はドライスタート時のカジリ対策に有効!

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ピストンまわりへのR-SHOT#M施工は、長期不動エンジンのドライスタート時のカジリに対する防御として有効なほか、組み上げ直後の初期馴染み向上にも貢献。R-SHOTとの併用で、下写真のように中古ピストンも使用範囲内のものなら新品同様に蘇る(さらに表面硬度もあがる)。施工はスカート部が主体というが、トップランド部が荒れていたら迷わず行うべきという。腰上ではピストンピンまでセットでのR-SHOT#M施工を推奨。エンジン騒音や油温の低減など享受できるメリット多数だ。

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最新のチャレンジはオイルポンプ部へのR-SHOT#M施工だった

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通常のモリブデン施工では困難なオイルポンプへの施工も実現。トロコイド部とシャフトはR-SHOT#M、摺動相手の本体側とキャップ部にはR-SHOTが施工される。ポンプのフリクション低減は油温・油圧の良化はもちろん、エンジンが本来持つ出力を引き出すことができる。多数の擦り傷もR-SHOTで復元可能だ。

 

フリクション低減はもちろんスムーズ化は気持ちいい走りに直結

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ミッションまわりへのR-SHOT#M施工例。部品点数が多いミッションには施工効果大。同店では40%ものフリクション低減を確認済み。ユーザーの報告でも、エンジンノイズが大幅低減したと好評。シフトタッチの雑味もなくなり、走りの気持ちよさも体感。絶版車のミッションまわり部品は廃番に悩むケースも多いから、長寿化も恩恵になる。

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考え得る摺動パートへの施工はほぼOK

TGナカガワの特許技術R-Shot#M施工に注目! 後編08

エンジンまわりの摺動部への施工とその効果がダイレクトに快走につながるのが、R-SHOTとR-SHOT#M。使用範囲も広がる。左列、カムホルダーとコンロッドメタルも、手前の中古品を見事に修復。バルブのステム部への施工も当たり前で、右下はキャブのスライドバルブ。スロットルを戻した際のエンジン回転落ちをスムーズ化して、ライディング時の安心につなげる。

※本企画はHeritage&Legends 2021年9月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。