正常進化と練成で現れた第3世代隼(ハヤブサ)/The 3rd GEneration BUSA has come!

1999年に登場するとすぐさま、バイク界に揺るぎない座を築き上げたアルティメットスポーツ、スズキ・ハヤブサ。2008年からの2代目を経て、大きく期待された3代目はまったく情報を漏らさないままに開発が進められ、2021年が明けると、1月28日にまず走行シーンのみで、その姿を現した。ターボだ、大排気量化だ、最新スーパースポーツのようなシャープなボディワークを持っている……。そんな当時の巷間、普通の予想をすべて振り切り、誰もが認める姿を纏っていることを見せ、続く正式発表時には、ファンの誰もが正しくシリーズの正統継承を認める内容がともなわれていた。3代目ハヤブサ、その概要を知ろう。

時代を超えるバイクの基本を忠実に作り込む

現れた3代目ハヤブサは、まさに初代&2代目の正常進化と錬成という作りを得ていた。現代的にライドバイワイヤや、6軸IMU(慣性検知ユニット)で各種電子制御を統合するSIRS=スズキ・インテリジェント・ライド・システムといった装備は加えられた。

しかし、フレームは従来型アルミツインスパーを継承しつつ見直し。足まわりはセッティングを軸にして見直し。ボディワーク、これは最新の空気力学を得ながらも、独自の路線を継承する形となった。そしてエンジンは、基本的には初代由来で、排気量も2代目の1340㏄を継承する。ただ左右出しの排気系とFIも含めて、内容、つまり出力特性や環境対応性は大きくアップデートされている。ベースは引き継ぎつつ、今の目ですべてを見直すという手法で再構築したというわけだ。

●エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒1340cc ボア×ストローク81.0×65.0mm 圧縮比12.5:1 最高出力140kW/9700rpm 最大トルク150N・m/7000rpm 変速機6段リターン●全長×全幅×全高2180×735×1165mm ホイールベース1480mm 装備重量264kg タンク20L シート高800mm キャスター角23.00度 トレール90mm タイヤサイズ120/70ZR17・190/50ZR17 ※HAYABUSA 2021年型(GSX1300R M1)欧州仕様のデータ

目立つような、謳うような新機軸は特になくてもいい。徹底した錬成でリファインする。ハヤブサはもう20年、アルティメット=究極の世界を走り続けてきた。その間に古びることがなかったのは、スズキが「究極」に求めたことが、限りないオーソドックス、バイクらしい作りや動きを突き詰めること、だったからだ。

メガスポーツというジャンルを築きながら、メガに囚われない。誰もが楽しめるバイク。それこそが3代目が体現すべき、ハヤブサというモデルの正体であり、真髄だ。

 

パーツのひとつひとつまでに徹底した見直しを行って進化を果たした新ハヤブサ

ワンパネル全盛の中、あえて5眼配置とした集中メーター。中央のカラーTFT液晶では設定等の情報を。左右のアナログ表示は速度やエンジン回転などを直感的に捉えられるようにした。フローティングマウントのハンドルバーも継承。灯火類はフルLEDでターンシグナルはポジションランプも兼ねる。

車体は「より高い安定性と軽快性を求めること」、「空力性能と防風性を最適化すること」、「制動性能と効率を高めること」の3点を目標とした。そのため既に定評のある初代〜2代目を元に徹底リファイン。内部パーツや吸排気系の変化で変わるバランスや高まるパフォーマンス、電子制御にも対応させた。

300km/h近い速度(186mph≒299.274km/h)でも安定してバランスを保つアルミツインスパーのフレームとスイングアームは従来型を継承しつつ、ボディワークの変更に合わせてシートレールをストレート化。700gの軽量化を図った。4-2-1-2で左右出しの排気系は1-4番エキパイをつなぐパイプを新設、触媒コンバーターも集合部に加えてサイレンサー内にも置かれた上で、2kg軽くされた。

 

今の観点からメーカー自身が心臓部をリファイン

 

柔軟性と寿命を延ばし、中速域のパワー/トルクをスムーズに出すこと。最新の電子制御によってライダーに安心感を与え、ライディングの楽しみを提供する。最高速を初めとした性能を落とさずに、最新のユーロ5排出ガス規制への適合化を図ること。これらの観点からエンジンは現行をベースにスズキ自身が今の目でリファイン。ピストン(26g軽量)とコンロッド(3g軽量)、そしてカムは新作、2渦流式燃焼室のTSCCは吸気バルブ周形状などを変更(チタンバルブは継承)、ミッションベアリングは11→13mm長に拡大)、クランク/ケースのオイル通路を見直すなどしてリファイン。スズキ・クラッチ・アシストシステムを加え、ラジエーターも新作で8%冷却性を高めた。

 

ライド・バイ・ワイヤ化して現代的電子制御も標準化

FIの燃料供給はライドバイワイヤになり、S-SFI(スズキ・サイドフィードインジェクター)を新採用。1気筒2本のインジェクター本体も改良されて上流側は取り付け角を変え、新設のリフレクターに向けての噴射で燃料を適度に霧化させる。スロットルボディ内径もφ44→43mmに、また吸気系全体で12mm延長したことも合わせて、低中速域の出力を増加している。

ボッシュ製6軸IMU(赤のピッチ/緑のロール/青のヨー各軸の慣性を検知)や最新の32ビット・デュアルコアECM(集中制御ユニット)などを採用しS.I.R.S.=スズキ・インテリジェント・ライド・システムを構築。トラクション制御のモーショントラックトラクションコントロールシステム、パワーモードセレクター、双方向クイックシフトシステム、アンチリフトコントロールシステム、エンジンブレーキコントロールシステムやクルーズコントロールシステムなど16もの電子制御を司る。

 

すべての速度域での安定性と軽快なハンドリングを両立させるべく足まわりも見直し

φ43mmのDLCコーティング・インナーチューブを持つKYB製倒立フォークやフルアジャスタブルのKYB製リヤショックはすべての速度域での安定性と軽快なハンドリングを両立させ、かつ不用意な切れ込みを防ぐように再セッティング。ホイールは7本スポークの新作で3.50-17/6.00-17サイズ、タイヤはブリヂストンS22を純正装着する。ブレーキはφ310→320に大径化したフロントディスクを新作、キャリパーはブレンボStylemaを新採用。ブレーキレバーも新作された。

 

トータルで空力を意識したボディと各部形状

 

風洞実験やCEA解析を重ね、200mphに及ぶ速度域でも抵抗を減らし、快適に走れるように意識した新デザインのボディワークを採用。ヘッドライト左右のSRAD(スズキ・ラムエアダイレクト)は圧力損失を抑えるべく内部ダクトを変更、グラブバーやミラーも空力を意識した。スクリーンも新型で、さらに38mm高いオプションも設定。フローティングのハンドルは従来より12mm手前でステップ/ヒップ位置は変わらず。前後重量配分は50:50だ。

 

ボディーカラー

2022年モデルのカラーはメインとなるグラススパークルブラック×キャンディバーントゴールド(黒×金)、メタリックマットソードシルバー×キャンディダーリングレッド(マットシルバー×赤)、パールブリリアントホワイト×メタリックマットステラブルー(白×青)の3色。黒と銀の写真はシングルシートカバー装着状態、白はカバーを外している。

※本企画はHeritage&Legends 2021年4月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。