【IMPRESSION】 K-FACTORY ZEPHYR1100(2021)

【IMPRESSION】 K-FACTORY ZEPHYR1100(2021)

日進月歩の工業製品、特にパソコンやスマホの進化は著しい。ちょっと昔の機種を引きずり出してくると、遅さにびっくりするほど。でも、同じように進化をしてきたバイクは、そうでなかったりする。多少不便な部分もあるけれど、それがないと寂しいと今は思う。空冷、いいじゃん! キャブ、最高じゃん! ケイファクトリーのゼファーに乗って、そんな気持ちになった。

取材協力:ケイファクトリー TEL072-924-3967 〒581-0815大阪府八尾市宮町5-7-3 https://www.k-factory.com/
Report:丸山 浩


味わいの宝庫と言える空冷4発マシン

今回試乗するのはケイファクトリーのゼファー1100。以前に試乗したZ900RSやそのNinja ZX-25Rは水冷4気筒の現行モデルで、主に同社製マフラーの変更によって、特性やサウンドが狙ったように変わっていくことを堪能できるのをお伝えできたかと思う。今風のマフラーの作り方というものにも気づかされた。

それに対して今回は同じ4気筒だけど空冷エンジン。そして、フルカスタムだ。ゼファーも現行のような気がするけれど、ベースはもう15~30年が経っている。 何だ、古いバイクになったじゃないかと言えばそれまでだが、空冷には独特の熱さがある。2020年11月7/8日に行われたTOTでも、空冷最高峰クラスで大排気量空冷4発が、筑波サーキットで58秒071というラップを記録した。

最新リッタースーパースポーツでもそうそう出せるものじゃないタイムを、基本設計が50年も前のZの空冷エンジンで叩き出すってのはもう、胸アツ以外の何物でもない。空冷だってまだまだ進化するんだってことが証明されたわけだ。この大スペクタクルに、空冷ファンなら心躍らせずにいられるだろうか。いや、いられない。

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そこで今回のケイファクトリー・ゼファー1100。まず流れるような造形の4本のエキパイがエンジン下で1本にまとめられ、バンク角を確保するようにカチ上げられたサイレンサーまでのラインが美しい。ゼファーの曲線美にもマッチしている。 またがってステップに足を乗せると、気分は往年のAMAスーパーバイクレーサーだ。要はかなり高い位置にステップがあるのだが、ビッグネイキッドはこうでなくちゃという感じになる。

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そしてエンジンに火を入れれば吠える4-1集合サウンドと、キャタキャタ鳴るFCRキャブレター。スロットルを開ける度にズオォと唸る吸気音といい、いちいち操作するたびに味がある。 かつてのレースの定番、最大出力重視の大径Φ41mmボアを装着しているところもにくいところ。吸気流速が落ちる低回転域ではどうしたってモタつくキャブなので、内部のスライドバルブの開き具合をイメージしながらスロットルをコントロールし、上手いこと吹け上がれるきっかけを与えてやる必要があるが、それさえも味だ。

ちょうど良い混合気が入って、グアッっとタコメーターの針を上げられるだけで嬉しくなるなんて、今のインジェクションマシンじゃ味わえない。“あれ、今日はどうにも上手くいかないなあ、疲れてんのかなあ……”なんてことも、強制開閉式キャブなら当たり前で、これも味。ちょっと思い出していくと、テクだけでなく、その日の体調にも左右されるのがアナログマシンの醍醐味。この手のバイクは味の宝庫なのである。キャブが付いてきたら、あとは空冷1052㏄のゴリゴリトルクを楽しむステージ。2~3000rpmあたりからグワッと立ち上がるトルクは7000rpmまで延々と盛り上がる一方なのだが、そこまで回せるシチュエーションなど、公道ではそうそうない。必然的に、ワインディングではさほど回さずジェントルに走り抜けるスタイルとなる。

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足まわりも、初期の動きはしなやかで乗心地が良い。かつストロークの奥はしっかりと踏ん張ってタイヤを路面に押し付けられるレーシングスペック。ゼッケンを付けてサーキットでセットアップしていけば、かなりのタイムを出せそうなポテンシャル。こちらも必然、ワインディングでヒラリと駆け抜けていくスタイルが作れる。

それらを重ね合わせれば、まさに実力あるレーサースタイルの余裕。いや、この空冷マシンは相当カッコいい! そんなことにも胸が熱くなる1台となっていた。

 

K-FACTORY・ZEPHYR1100 Detailed Description【詳細説明】

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ハンドルバーはマジカルレーシングのカーボン製。フロントブレーキ&クラッチのマスターシリンダーはACTIVEのゲイルスピードを装着。レバーガードおよびフェンダーレスキットはケイファクトリーオリジナル。

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小物入れやナンバー灯・ウインカーはノーマルそのままを使える。焼け色が映えるチタン製のナンバープレートホルダーは別売だ。なお外装はアラタカデザインでオールペンされている。

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エンジン左右のクラッチ/ジェネレーター/パルシング/クランクエンドカバー、そしてスイングアームピボット付近のカバープレートはアルミ削り出しのケイファクトリーオリジナル製品。ワンポイントながらもエンジンの造形がグッとルーツのZらしくなるヘッドのカムプラグ用カバー(ノーマルの角型ヘッドカバーに丸型カバーをプラス)は、桑原社長いわく「一番売れとるんとちゃうか」とのこと。

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4-1集合部をエンジン下センターでまとめられるよう、オイルパンも専用品となるこだわり設計のケイファクトリー・チタンマフラー。オイル容量は減るが、同時にオイル流通経路と放熱性も考慮、純正オイルラインでもOKだ。

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スイングアームもケイファクトリー製で、アジャスターを一番手前にしたところでノーマル同等長となる。

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K-FACTORY製トリプルツリーはフロントフォークオフセット量がノーマル比で10mm減る設定(40→30mm。オプションのカラーで28mmまたは32mmにも調整可)。φ43㎜フロントフォークとリヤショックはハイパープロ。前後ともケイファクトリー製キャリパーサポートを介してフロントにNISSINの4ピストン、リヤにはBremboの2ピストンキャリパーをマウント。ホイールはアルミ鍛造品のLAVORANTE。サイズは3.50-17/6.00-17となっている。

※本企画はHeritage&Legends 2021年1月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

丸山 浩

国際A級ライダーとして全日本ロードレースや鈴鹿8時間耐久などの参戦経験を持つ。株式会社WITH MEの代表としてモータースポーツ文化を広めながら、雑誌、TV、YouTubeなどでモータージャーナリストとしても活躍中。