【IMPRESSION】 K-FACTORY ZX-25R(2020)

【IMPRESSION】 K-FACTORY ZX-25R(2020)

ケイファクトリーのZX-25Rデモバイクに乗るため、超特急で大阪に向かった僕・丸山浩。新型250cc直4の楽しさはすでにオートポリスでチェック済み、それがどれくらいカスタムによって底上げされたのか。早速、ケイファクトリー25Rで山に向かった丸山は……まさに度肝を抜かされた!

取材協力:ケイファクトリー TEL072-924-3967 〒581-0815大阪府八尾市宮町5-7-3 https://www.k-factory.com/
Report:丸山 浩/Photos:徳永 茂 


かつてない作り方でZX-25Rの面白さ1.5倍!

右手の断崖絶壁の先に広がる絶景を眺めながら、長い左ブラインドコーナーを抜けてしばらく後、ミラーに特徴的なシルエットが映り込んできた。ギョロッとしたヘッドライト、十中八九ポルシェだろう。こちらは急ぐ旅路でもなし。軽くブレーキレバーを触り、車体を道路の左に寄せる。コォァァァ……と、ヤツがシフトアップしつつ脇を駆け抜けていった瞬間、バカでかいリアウイングが視界に飛び込んできた。おいおい、GT3じゃねぇか! 僥倖、せっかくだからマシンを拝ませてもらおう。

『ファヴァッファヴァッ!』

ZX-25Rのギヤをふたつ落とし後ろに付く。途端、ゴァッ! ヤツの排圧が跳ねた。エキゾーストバルブを開けたのだ。どうやらシフトダウンをサインと受け取られたらしい。仕方ない、ヤル気にさせてスルーというのも悪かろう。さらにひとつギヤを下げ、コーナーに入るヤツを追う。

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2台のエキゾーストノートが木霊する。あと3つ切り返した先は長い直線だ。2速のままクォーターマルチの超高回転域キープで立ち上がると、GT3のルームミラー越しに目が合った。その目は驚いたような、それでいて嬉しそうでもある。そうだろう、とんでもなく吹けるだろうコイツは……なんてヘルメットの中で呟いてみたら、こちらもなんだか照れくさくなって、目線を逸らす代わりにマシンを少しセンターに振った。

……なんて、妄想膨らましちゃうくらいにイイ音なんだ! ケイファクトリーのマフラーを装着したZX-25Rは! ほしい! 実際には遭遇していない3000万円級のスーパーカーを彷彿させるくらい、いい音。シフトアップの瞬間、フォォォ〜ボッ! クォォォォ〜! てな具合に短い炸裂音が入るところとか、歯切れよく決まるシフトダウンとか、ブレーキング時のスロットル全閉でボロボロボロ……と唸るところとか、世界観はポルシェかランボルギーニ。これは電脳オートシフター+インジェクションでこその世界。昔の直4ニーゴーでは不可能な領域だ。

さらにスロットルを開ければF1級の超高回転。それでいてお値段は車体とマフラーで、100万円+α、GT3の30分の1ってなもの。これはほしくなるでしょう。

 

重厚なサウンドは独自サイレンサーで

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さて、このサウンドを生む鍵はサイレンサー両端のキャップにある。通常は薄い金属で作られるこの部位、ケイファクトリーのZX-25R用ヘキサゴナルサイレンサーのそれは、アルミ削り出しなのだ。それでは重くなりはしないかって? ズバリその通り。同社・桑原社長曰く、「ちょっと重たいぐらい関係ない! いい音のマフラー作ったるわ!!」がコンセプトだという。

その狙いは、高周波音のカット。仮に全てを軽く薄くまとめると、250直4の超高回転エンジンではありがちな、甲高さの中にどこか軽々しさのある排気音となる。その音を質量のあるパーツを組み合わせて使うことで、共振を抑えるということなのだろう、結果として低音が効いた、絞まりのあるサウンドが出せたというわけだ。下から上まで600㏄スーパースポーツにも引けを取らない重厚感。いや、こんなエキサイティングな音が出るならもう、大排気量SSを選ぶ理由も薄れちゃう。むしろガンガン回してシフトチェンジできる、250㏄の方が街や峠で楽しめるのは間違いなかろう。

オートポリスでのZX-25Rの初試乗時、ノーマルサウンドを評価した私のインプレ、あれは多分マボロシ。マフラーを変えないともったいないよ! このサウンドを手にしたら、ZX-25Rがノーマル比1.5倍は楽しくなるんだから。

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音量に排ガスに……と、規制がどんどん厳しくなり、並行して純正マフラーのクオリティも上がるにつれ、リプレイスのアドバンテージが少なくなった昨今、私自身もこれほど換装したいと熱が上がったマフラーは、久しぶりだ。同時に、ZX-25Rを取り巻くこの再びの盛り上がりを、私たちは意図して守っていく必要も感じる。

私たちが聞き惚れるサウンドも、バイクに興味のない人からすれば単なる騒音でしかないからだ。今の時代、4輪車はデバイスでノーマルモードの排気音を抑えるのが当たり前。それがほとんど実装されていない2輪では、ひとりひとりのライダーに状況判断と制御が委ねられている。深夜早朝は忍び、街中は静かに走り抜け、ワインディングは危なげなく爽やかに駆け奏で、全開の激攻めはサーキットで。いわゆるTPOが大事。我々もスマートにいこう!

 

 K-FACTORY・ZX-25R Detailed Description【詳細説明】

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マフラーの商品名は「フルエキゾーストマフラー ヘキサゴンサイレンサー JMCA認証サイレンサー」。集合方式は4-1だ。触媒ありのJMCA認証品で、21万7800円。

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「ライディングステップ」のポジションは、UP側30or40mm、BACK側0mm、10mm。クイックシフター有り無し両対応で、逆シフトもOK。ステップのローレット加工はギザギザ強めで先端でもしっかり踏ん張れる。チェンジシャフトの根本を支えるホルダーも追加され、シフトフィールはレーシーでカチッとしている。

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レースシーンでの素早い交換を想定したクイックリリースタイプのセパハンはタレ角を5度or10度に調整可能。カラーはチタンとステイゴールドの2種類をラインナップする。

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ブレーキレバーガードは左右兼用の汎用タイプ。ハンドル内径Φ14/16/19mmに対応。ガードアングルは5段階。いずれも同社オリジナル。

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ケイファクトリーのエンジンスライダーは、エンジンマウントを利用するタイプ。カウリングを加工しなくても装着できるのがメリットだ。素材はジュラコンで、ベースとの間に硬質ゴムを挟み込んだ機能性重視の構造。

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フロントアクスルライダーにはワンポイントのアルマイトパーツが差し込まれている。

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是非ともノーマルの写真を用意して見比べていただきたいフェンダーステー。より短く、アングルも上向きになっているのがお分かりいただけるだろうか。これだけで随分印象が変わる。

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ラジエーターコアガードはステンレス製のハニカムメッシュ。センターはタイヤからの巻き上げを考慮して細目だ。

※本企画はHeritage&Legends 2020年11月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

丸山 浩

国際A級ライダーとして全日本ロードレースや鈴鹿8時間耐久などの参戦経験を持つ。株式会社WITH MEの代表としてモータースポーツ文化を広めながら、雑誌、TV、YouTubeなどでモータージャーナリストとしても活躍中。