K-FACTORY HAYABUSAインプレッション

【IMPRESSION】 K-FACTORY HAYABUSA(2021)

今回のハヤブサに限らず、ノーマル車両のバランスを生かしながら魅力をより高めるのが、ケイファクトリーのカスタムだ。ロングツーリングを苦もなくこなす巨躯でありながら、ワインディングを軽快に駆け抜ける新型ハヤブサも、その持ち味を全体的にバランスよく引き上げられていた。

取材協力:ケイファクトリー TEL072-924-3967 〒581-0815大阪府八尾市宮町5-7-3 https://www.k-factory.com/
Report:丸山 浩/Photos:石村英治(フォトスペースRS)


ノーマルの好バランスを崩さず魅力を高める設定

新型ハヤブサは完成度が極めて高い。パフォーマンスもデザインも、隙のない仕上がりだ。カスタムの余地などなさそうなのだが、ケイファクトリーはこれを、どう料理してくれるのだろう?

Heritage&Legends Vol.24、2021年6月号のHAYABUSA特集でも紹介された、オリジナルの2本出しチタンフルエキゾーストマフラー、ライディングステップ、トップブリッジセット、ビレットレバーが組み込まれ、さらにオーリンズ製前後サスがインストールされたカスタム車両の記事を読み込んで、今回、それをじっくりと走らせる機会を得た私は、とても楽しみにしていた。

K-FACTORY HAYABUSAインプレッション02

試乗の舞台は大分県のSPA直入。全長1430mのサーキットだが、今回はタイムアタックするわけではない。より安全にテストするために、ケイファクトリーが占有走行枠を取ってくれた。そもそも、ハヤブサ・カスタムのコンセプトもあくまでストリートユースが主眼、サーキット走行とは別のところにあるとも聞いた。

走り始めてすぐに、その乗り心地のよさに気付いた。換装された前後サスペンションはオーリンズらしく初期の作動性が優れており、荒れた路面の凸凹をうまく吸収している。ケイファクトリーが施したセッティングもダンピングが弱めで快適性に振っていたから、走行ペースを上げると、ややソフト過ぎる感もある。奥で踏ん張ってくれるから不安はないが、ハードブレーキングからリリースした時などにユサユサッ…という重量車ならではの揺り返しが出る。

だが、これは狙い通りだろう。ケイファクトリー・ハヤブサは、明らかにツーリングライダーを意識している。ソフトなサスセッティングもツーリングでの快適性を重視してのこと。サーキット走行するなら、ハードに締め上げていけばいい、という考え方だ。

そう、ツーリングニーズをメインに据えながら、セッティング次第ではかなりハイペースなスポーツ走行にも対応できるという傾向は、ケイファクトリー・ハヤブサのすべてのパーツで明確だ。ライディングステップは今回、やや高めのポジション設定。これはサーキット走行を考慮してのこと。ステップ位置は4カ所から選べるので、ニーズに合わせて、好みの位置を見つければいい。

K-FACTORY HAYABUSAインプレッション03

そしてK-FACTORYのトップブリッジセットは、徹底的な肉抜きが刺激的だ。軽量化に貢献していることは間違いないが、スパルタンなルックスがカスタムマシンらしさを高めてもいる。

ノーマルのハヤブサは快適性とスポーツ性の両方を満足させるポジションだが、このトップブリッジセットはそのバランスを維持。このままツーリングに出かけても違和感はないが、ハンドルの垂れ角、絞り角は調整可能。猛烈な加速を楽しむようなハードな走りをする時は、マシンを押さえ込むためにより低く、絞ったポジションにセットできる。

ビレットレバーは非常にスムーズなデザインで、指掛かりにも違和感はなく、調整機構の節度感も気持ちいい。身体に直接触れるパートなのでちょっとした違和感も見逃せないパーツだが、満足感が高い上質な仕上がりだった。

そしてなんといっても注目は、ケイファクトリーが主力製品とするマフラーだろう。2本出しEXはルックスも走りも、こちらも上質だ。まず、デザインはノーマルの美しさを崩さないよう、2本出しサイレンサーの角度や張り出しまで徹底的に考え抜かれている。ハヤブサらしさをキープしたまま、同社らしい個性をプラスする、絶妙なルックスだ。

そのサウンドはといえば、低回転域で迫力ある低音が轟くが、高回転域はとても静粛。音量規制対応ももちろんだが、ツーリングライダーを耳疲れさせずに楽しませることも意識している。サイレンサーはストレート形状で排気の抜けがよく、パワーフィールも向上している。

K-FACTORY HAYABUSAインプレッション04

さらに圧巻は、マフラーによる軽量化の効果だ。ノーマルでも巨体の割に軽やかな倒し込みが気持ちいい新型ハヤブサだが、マフラーを交換することでさらに軽快感が増した。マス集中の効果もあるのだろう。S字カーブでもヒラッ、ヒラッと爽快に切り返していると、自分の身体の一部になったかのようだ。ハヤブサが重量車であることを忘れてしまいそうになる。先のサスセッティングも相まって、低いギヤで無理に高回転域まで引っ張るのではなく、高いギアで低〜中回転域を使い、スロットルを開けながら、リヤからの旋回力を味わう走りが似合う。ワインディングでこそ楽しめる特性だ。

スポーツ一辺倒ではないフレキシブルなカスタムが施され、ツーリングユースに応える快適さを備える。ケイファクトリー・ハヤブサは全体的にまとまりがよく、非常に上質。ノーマルの好バランスを守りながら、その魅力をさらに高めることに成功していた。

 

K-FACTORY・HAYABUSA Detailed Description【詳細説明】

K-FACTORY HAYABUSAインプレッション05

同社定番となったヘキサゴン・ゴールドサイレンサーは、車体にスキマなくピッタリと2本のサイレンサーを這わせ、リヤまわりをノーマルよりもスリムに仕上げている。

K-FACTORY HAYABUSAインプレッション06

ゴールドを基本としたド派手な色使いではあるが、実車は見た目よりもスッキリとまとめられた印象だ。マスの集中化と軽量化にも貢献。

K-FACTORY HAYABUSAインプレッション07

アルミ削り出し、レーシーな肉抜きのトップブリッジセットはハンドルバー付きだ。

K-FACTORY HAYABUSAインプレッション08

ハンドル角度の調整幅は、タレ角、開き、そして絞りと細かく調整できるが、カウル内に納めなければならないこと、もともとノーマルのハンドル角も悪くないので、大きなポジション変更の必要は少なそう。

K-FACTORY HAYABUSAインプレッション09

今回はサス設定がツーリングよりだが、さすがにステップだけは、スポーティな味付け。カッチリとしたシフトフィールが好感。サーキットでは、どうしてもステップを擦り始めてしまうので、このくらいの高さが必要となるが、ツーリングシーンであればもう少し前の位置を選ぶ感じになるだろう。

K-FACTORY HAYABUSAインプレッション10

装着されたリンクロッドの長さは-6mm〜+18mmの間で調整可能。数ミリの変更でサスペンションの動きが変わってしまうので注意が要る。今回はストリートを意識してノーマル寸法だった。

K-FACTORY HAYABUSAインプレッション11

普段はカウル下に隠れるスプロケットカバーも、ハヤブサの羽を連想させる凝ったスリットが入る。

※本企画はHeritage&Legends 2021年7月号に掲載された記事を再編集したものです。
バックナンバーの購入は、https://handlmag.official.ec/ で!

WRITER

丸山 浩

国際A級ライダーとして全日本ロードレースや鈴鹿8時間耐久などの参戦経験を持つ。株式会社WITH MEの代表としてモータースポーツ文化を広めながら、雑誌、TV、YouTubeなどでモータージャーナリストとしても活躍中。