レプリカ仕様のオーダーに乗りやすさと使いやすさを
ホンダを代表する名車と言えば、今年60周年を迎えた4気筒のCBシリーズが筆頭格だろう。1969年のホンダCB750Fourで国産直列4気筒の歴史が始まり、これを打ち倒そうとZ1が現れ、以後の日本車の時代が築かれる。CB第2世代としてDOHC4バルブのCB-Fが’79年に送り出されると、性能もスタイルも一気に現代化&スープアップしていく。
欧州の耐久選手権やアメリカのAMAスーパーバイクはそんな日本製4気筒車の活躍の場となり、速さを目指して数々の、今で言うカスタム的なトライが各メーカーファクトリーによって行われていった。ことAMAでは市販車のシルエットを残すことが前提になっていた上に、その中に超絶とも言える内容が作り込まれた。
CB-Fで言えば’82年のAMA開幕戦、デイトナでフレディ・スペンサーが駆った#19CB750Fがその頂点、そう捉える人も多いのではないだろうか。
そこでこの車両だ。「オーナーさんがスペンサーレプリカを希望されていたので、そのスタイルを追いつつ、気持ちよく乗れるという要素も入れていきました」と言うのは、TTRモータースの代表、林さんだ。TTRはCBシリーズを多く扱い、クラッチが軽く操作できるようになるレリーズを初め、CBがより身近に感じられるパーツも送り出している。
それでF16/R18インチでテールまでビッと上がったスペンサー車のアグレッシブな感じを17/18インチながら同デザインのダイマグホイールやシルバーのFBカラーで表現。ブラックメガホンやCRスペシャル(現車も各仕様があり、CRもそのひとつ)も雰囲気に花を添える。乗りやすさという点では安心して使えるTTRのリビルドエンジン搭載やCB1000SFフォーク+アラゴスタショック等でサポートされている。
そうしてできあがった車両からは、オリジナルからサイドゼッケンプレートを外して保安部品を付けたかのような雰囲気も漂ってくるのが楽しい。細部までフルにオリジナルテイストを盛り込むのも、レプリカのあり方のひとつ。だがこの車両のように、全体感でまとめ切るのも(その上で乗りやすい)、十分ありと思えるのだ。
Detailed Description詳細説明
ベースは1981年型CB750FBで、カラーリングは当然AMAスペンサー車と同じシルバーのFB純正仕様。ダブルホーンもCB-Fらしい雰囲気を醸し出す。
メーターはケースがCB-Fのノーマル(ちなみにスーパーバイクも同じ)でメーターパネルをカーボン化。ハンドルも#19車同様にバータイプに置換されている。
フューエルタンク前面に貼られたベルレイ・オイルのステッカーも、往時のAMAスーパーバイクの雰囲気を高める定番アイテムなのだ。タンク自体はFBのノーマルをそのまま使う。
前後に段差を付け、ストッパー的に使えるようにしたベース車にルックスを近づけるべく。シートはあんこ抜き加工が施された。
生産から40年近く経つCB-Fエンジンに対しT.T.Rではリビルドエンジンを供給しているが、この車両も同様。摩耗したミッションベアリングやカウンターシャフトスリーブのOリングなど消耗部品を新品とし、ミッション修正が必要な箇所や不良箇所は手を加えて使う。
キャブレターはCRφ31mmで点火はウオタニSP2。新品同等以上の質を作り込んだT.T.Rリビルドエンジンにも良く合う組み合わせ。
クイックリリースタイプのフロントフォークはCB1000SF用φ43mm。この太さもオリジナルAMAレーサーのφ41.3mm(NR500用転用)を彷彿させる部分と言っていい。フロントフェンダーは19→17インチ化に合わせて加工。前側が極力タイヤに沿うのもポイントとなる。
ホイールはダイマグ3本スポークの3.50-17/4.50-18インチで、スイングアームはアルミ角型+リブ。リヤショックはアラゴスタ製をチョイスしている。
排気系はイエローコーン・プロヘッダーを装着。ブラック塗装×メガホンエンドのルックスは、やはりAMAスーパーバイクのスペンサー車を意識したもの。
全体を支えるフレームは4カ所を補強しレイダウン、サブフレームを溶接しての一体加工等も行った。ステップはOVER製。