当時の感覚を思い起こさせるショート管も装着
1973年型として登場したカワサキ空冷Zシリーズはその後の約10年、展開を続ける。903ccのZ1はZ1A/B、Z900を経た後、排気量を1015ccに拡大して’77年にZ1000Aに。国内では’73年に746ccで登場した750RS=Z2が同様にZ2A(前期/後期)、フレーム補強されたZ750Aを経て、’77年にZ750Dとなる。
’78年にはZ1000は角タンクのZ1000Mk.Ⅱに代わり、国内では’79年に同じく角タンクのZ750FXが登場する。ただ、丸タンクのZ750Dもしばらく併売されていた。
そこでこの車両だが、大阪・伊丹空港近くで活動するダブルアップに保管されているもの。同店はメーカーや車種に関係なく、バイクの修理やカスタムにレストア、車検等を行う。「昭和の旧車から現行車まで幅広く手掛けております」という代表・三倉さんの言葉通り、Z系など絶版旧車は得意分野で、きっちりとした作業によってオーダーフルレストア車も製作、販売している。
この車両もその1台……と思えるが、前オーナーがフルレストア後に持ち込み、年に一度くらい乗りたくなった時に乗れるようにと管理を依頼し、そのまま同店に譲られたものだという。
変更されているのはノーマルで4本出しだったマフラーがショートタイプのケイファクトリーCSRフルエキゾーストになり、ブレーキラインがステンレスメッシュに換わる程度。シリーズ中、このZ750Dで新採用されたトリプルディスクもそのまま。当時、リヤのディスクブレーキがそれ以前のリヤ・ドラムブレーキのZに多く流用されたことで、車両としてなかなか姿を見かけるチャンスがなくなっていたが、同車はZ750D純正のメタリックグリーン&子持ちラインも鮮やかな状態で保持されている。
ノーマルに近いきれいな状態を眺め、当時にもカスタムにも思いを馳せるのは、今ならではの楽しみと言えるだろう。
Detailed Description詳細説明
左手前に速度警告灯(当時は純正で必須装備品だった)も備えた2眼式のメーターやセミアップのめっき仕上げハンドル、フロントマスターシリンダーやスイッチボックスに至るまでノーマル。ガジェットホルダーは本文の“年に1度乗る”ために装着されていたもの。
燃料タンクサイドの曲面に沿うように入れられた子持ちストライプパターン、メタリックグリーンのカラー等もノーマル状態をキープする。
横開きで厚みがあり、ライダー/タンデム側がフラットになったダブルタイプシートもZ750Dのオリジナルだ。こちらも良く状態が保たれている
めっき仕上げのスチールリヤフェンダーやグラブバー、一連のZシリーズで採用されていた大型ウインカーも純正そのままだ。
ケイファクトリーの現行販売品、CSRフルエキゾーストを装着てライトカスタム。3Dベンダーによるφ42.7mmエキパイ+φ70mmテールパイプ製スチール管だ。
販売名Z-750FOUR、型式Z750D。ボア×ストローク:φ64×58mm、746ccの排気量等はZ2以来変わらず、ノーマルで70psを発揮。車体はZ2からキャスターが0.5度立てられた25.5度になりトレールやホイールベースが変わっていた。そうした部分もしっかりオリジナルを保っている。
キャブレターもノーマルで採用していたVM26SSを装着。年に1度乗るためという依頼に応じてメンテナンスもされていた。
片押しキャリパーにソリッドディスクを組み合わせたダブルのフロントブレーキまわり、φ36mmフロントフォークなどもZ750Dのノーマル。
1.85-19/2.15-18サイズのワイヤスポークホイールや丸型鋼管スイングアームにツインショックなどもノーマルのまま、保持されている。
このZ750Dで兄弟車のZ1000A同様にディスク化したリヤブレーキ等もノーマルだ。当時、このトリプルディスクをそれ以前のZに流用したという歴史も思い起こさせる。