何にでも使えるゼファーの素性を伸ばし遊び尽くす
「元々は空冷仲間と遊べるバイクを探してて、見つけたのがカワサキ・ゼファー750。オークションで買ったけれど、状態はそれなりでした。その頃私はVFで草レースもしてましたが、VFのパーツも少なくなってきて。それ以降もVFにお金をかけるべきか、それともゼファーでやろうかって考えてたんです。
それで筑波サーキットのそばに腕の立つチューナーさんがいると人づてに聞いて、もし会ったら頼んでみようと思いながら行ってみたら、会えた。それでその方に“ゼファーをお願いします”って頼んだんです」とは、車両オーナーの小泉さん。そのチューナーとは、’19年秋のTOTで史上初の57秒台入りを果たした車両(最高峰のハーキュリーズクラス/GPZ900R)を手がけた、パワービルダーの針替さんだった。
「まずオーバーホールしてもらったら、これが速い(笑)。“一緒にブレーキもやった方がいいよ”って針替さんに言われてたんですけど、最初はそのままでした。ツクバで走らせてみると、1コーナーで止まれないくらい。それで車体側も手を入れていったんです。
フロントフォークは調整機構がほしかったのでZX-9R用を延長して装着。ホイールも9R用で、ブレーキも換えました。エンジンは850ccに。ちょうど針替さんがゼファー750の850cc仕様を作ろうとしていた頃で、このバイクでもいろいろ試して形になっていったんです。ほかにもエンジンはひと通り手が入って、かなり速い」
その後、小泉さん+ゼファー750は2011年11月のTOT神楽月の陣・ZERO-1クラスで優勝を飾る。その後に車両は保安部品を装着、いくつかのパートを変更してストリート仕様となった。
「元々がストリートとレースで兼用したかったんですけど、ストリートで使えば走行距離も伸びますし、すると次のオーバーホールタイミングがすぐ来たり、タイヤもすぐ使ってしまう。この車両は優勝したら“戦場を退役”させて別の車両で次のクラスに挑戦しようと思ってましたから、こっちはストリートにして、その後のレースはカタナで、モンスタークラスでやることにしました」。そう続ける小泉さん。
気になるストリート仕様でのゼファー750の乗り味は「ゴー&ストップが多い街中での発進だったりは多少神経質ですけど、それ以外はコースと変わらず速い。それも含めて、何にでも使えるゼファー750は、面白いですよ」
Detailed Description詳細説明
低めのハンドルバーはパワービルダー製でトップブリッジはテクニカルワークス。メーターまわりはメーターケースなどゼファー750ノーマルに見えるが、左ケース内にはアクティブ・マルチメーターがビルトインされて、速度などをデジタル表示する。
深みのあるメタリックオレンジをメインとして車体中央に前後に入るブラック&ホワイトのコンペティションストライプは、自家塗装という。
ダブルタイプのシートも表皮を張り替えて、ホールド感と質感を高めている。グラブバーもゼファー750ノーマルと同様に装備される。
シンプルな形状のステップキットは、バトルファクトリー製。先端がジュラコン(レース適合)でバー自体にローレットが切られている。
フレーム右前部にはTOT=テイスト・オブ・ツクバの車検認可ステッカーが貼られる。「勲章をぶら下げた退役軍人みたいだと小泉さん。
ツインプラグヘッド化やコスワースピストンでの850cc化等、エンジン仕様はパワービルダーでレーサー時代に構築した内容を継続して使っている。
TMRキャブレターもレーサー時代から引き継いだ装備。エンジン側マウントに連結するアルミスピゴットはZ用を使ってマウントしているのだ。
排気系はレーサー時代はノジマエンジニアリング製を使用していたが、現在はパワービルダー・メガホンマフラーを装着している。
フロントには調整機構を加えるべくZX-9R(初代正立タイプ)フォークを延長して使う。ブレーキまわりはブレンボ4P+サンスターディスクの組み合わせ。
スイングアームはこの車両がストリート仕様となった後にテクニカルワークス製アルミ角型を装着。リヤショックはオーリンズをチョイスする。ホイールは前後ともZX-9Rに換装して、ゼファー750の3.00-17/4.00-17から3.50-17/5.50-17サイズに。タイヤはピレリ・ディアブロロッソの120/70・180/55を履く。