コンプリート車をベースに好みの仕様で仕立てる
ACサンクチュアリーによるコンプリートカスタム、RCM(Real Complete Machine)のカワサキZ1。このRCM-507(通算507台目のRCMだ)の場合は、同店で折に触れて作られる“RCMクラフトマンシップ”車両がベースとなっている。そこにオーナーの好みで、足まわりや外装系の変更が加えられているのだ。
そのクラフトマンシップ車両には元々“ショップ側でお勧めの仕様やパーツを織り込んだ上でのリーズナブルバージョン”という側面があったが、それが時流によって変わってきた、と同店代表の中村さんは説明してくれる。
「クラフトマンシップはその通り、当初はフルオーダー車両に対して、買いやすさを意識して用意したものでした。車体とエンジンの施工内容自体はフルオーダー車と同じで、細部の仕様が吊しか、オーダーかという違いと考えてくださればいいんです。価格も、クラフトマンシップの方が100万円以上安かった。ですからこれをまず手に入れて、後で好みのパーツが出てきたとか、作りたい仕様が明確になったという時に追加でカスタム化できるという位置付けだったんです。
それが“仕上がったバイク”という捉えられ方にと変わったようです。Zのフルカスタムをイメージする時に、ベース車としてノーマルのZ1ではなく、RCMクラフトマンシップ車両を考える。その上で、さっき言ったような自分仕様を加えてカスタムしてくださる。オーダー時点でに車両として出来上がっていることも含めて、そこからの完成状態を思い浮かべやすいのでしょう。製作時間もノーマルから始めるよりかなり短くできますし。
ただ、元々のベースとなるZ系車両の高騰もあって、今までよりもクラフトマンシップの製作台数が減りそうです。そこは課題ですが、フルオーダー車も変わらず作ります」(中村さん)
このように、完成車をベースにカスタムを進めるという。つまりクラフトマンシップには市販車にも似た状況が生まれていたのだ。もちろんイメージの想起には、これまでに作られた550台超のRCMが参考になる。製作自体に対しての不安はもはや、まったくないのだ。
Detailed Description詳細説明
ヘッドライトステーはナイトロレーシング、クラッチ駆動は油圧化した上で左右マスターシリンダーはブレンボRCSをセットする。
ステアリングステムはスカルプチャーSPステムキットTYPE-1で、フォークオフセットは[純正値:60→]35mmとして17インチ化にともなうトレール量変化に対応している。ハンドルバーはPOSHスーパーローで、ブレーキラインは個々の車両に最適化したアレーグリ・ショルトシステムをセット。
タイガーカラーを元にベース色にフレークを加え、下側ライン部にグラデーションを施してカスタム感を醸し出すペイントは奥進によるもの。
外装はこのように新車同様の仕立て。ウインカーは小ぶりなものとしてカスタム感を増す。シートはデイトナ・RCMコンセプトシートだ。
エンジンはφ67mmのピスタル製鍛造ピストンによって[純正値:903→]930cc化、ドッグクリアランス精密シム調整やクランクケースへのポンピングロス低減加工、バルブガイド入れ替え/バルブシートカット加工ほか、フルメニューのチューニング。フレームは12カ所へのサンクチュアリー・ST-2補強に加え、リヤワイドタイヤに対応したインライン処理/ワイドレイダウン加工を施した上でパウダーコート仕上げされている。
キャブレターはTMR-MJNφ38mmのデュアルスタックファンネル仕様。前後17インチホイールで履く現代ハイグリップタイヤを楽しむように作られた車体、元気よく走れて心配せずに使えることを軸にしたエンジンというパッケージは、クラフトマンシップでもフルオーダーでも同じだ。
フロントフォークはオーリンズRWU(φ36→43mm)のサンクチュアリーE×Mパッケージ・ラジアルマウント(フロント天吊りフェンダーやラジアルマウントキャリパーもセット)で、フロントブレーキはブレンボGP4 RXキャリパー+RCMコンセプトφ320mmディスクを組み合わせる。
リヤショックはオーリンズ・レジェンドツイン。前後ホイールはO・Zレーシング・アルミ鍛造のGASS RS-Aで[純正値:1.85-19/2.15-18→]3.50-17/5.50-17インチへと変更する。スイングアームはスカルプチャーRCM専用ワイドスイングアーム。ドライブチェーンはナローボディタイプのEK530RCMだ。
リヤブレーキはブレンボCNC 2Pキャリパー+サンスターφ250mmディスク。4-1の排気系はナイトロレーシング・手曲げチタンエキゾースト+グレネード・チタンV-Ⅲサイレンサーで、ともにヒートポリッシュ仕上げを装着している。