カタナの可能性をTOTでもストリートでも広げる・チームカガヤマ【後編】
ツインショックの3号機、その先にも計画はあった
カガヤマカタナ1000R・1号機は、2018年春のTOT、SATSUKI STAGEでデビューした。ここで加賀山は、シェイクダウンから数カ月、未完成のマシンで並み居るハーキュリーズレギュラーを打ち負かしてみせた。そしてその勢いのまま、今度は2018年秋のKAGURADUKI STAGEにプロアームの2号機で登場。ここでも現役JSBライダーのプライドを見せて勝ち切ってみせた。
「1号機は手探り。2号機は新しいアイディアを試してみたくて、プロアームとセンターアップマフラーにしてみました。それで3号機は、もっとTOTのスピリッツの原点に迫ってみたくて、新しい方向に踏み出してみたんです」
そして出現した3号機は、まさかのキャブレター仕様、まさかのツインショック! 実は加賀山にとっても初体験の領域だった。
▲2020年11月8日、TOT・KAGURADUKI STAGEの決勝直後。#77は“刀”に見えることからのナンバー選択。
「僕がテストライダーを始めた時には、レーサーはとっくにモノサス、キャブレター車なんて20年ぶりです。どんなバイクになるのか想像もつかなかったくらい」
1号機より2号機より、セットアップに苦しんだという3号機。特に、加賀山をもってしても「経験がない」というツインショックの煮詰めには苦しんだという。
「2号機までにはなかった、モノサスならば簡単に解決する内容だった。このツインショック化は面白いと思ったし、それが難しかった。キャブ化は、セッティングと言うよりも、インジェクション車に装備されている電気系統のエラーコードの解析から始めなきゃならなかったんだから(笑)。テストライダー時代くらい勉強になりましたね。3号機にはまだまだ伸びしろがある!」
当時の加賀山の目標は、まずは3号機でのテイスト復活優勝、そして4号機の製作だった。キャブレター&ツインショックと来たら、次はいったいどんなことに挑戦してくるのか? ファンもワクワクしたに違いない。
そしてチームカガヤマは、カタナRのイメージを市販車にも、という熱烈なリクエストに応えて、現行KATANAのカスタムにも着手。もちろん、レーサーではなく、カガヤマカタナ1000Rのオーラをまとったストリート車となっている。
「市販車のKATANAにも乗ったけど、すっごい乗りやすくて楽しい! 軽いしクルクル回るし、街乗りもツーリングも快適じゃないですか。しかもカッコいいし! 僕が空冷カタナに憧れたように、若いファンに憧れられるようなKATANAを作っていきたい」
これまでレーシングライダーとストリートカスタムは、住む世界が違っていた。けれど加賀山は、その壁さえぶち破って、新しいKATANAのイメージリーダーになりつつある。
TOTデビューウインを遂げたプロジェクト初号機
Team Kagayama “KATANA1000R” TYPE-1/空冷カタナ用フレームにGSX-R1000の水冷並列4気筒を積んだカタナ1000Rの1号機。足まわりはJSBマシンから取り外したGSX-R1000のノーマルパーツを使用。リヤサスはホンダで言うユニットプロリンクで、左出しマフラーとした。走りは2018年のTOT SATSUKI STAGE。
Team Kagayama “KATANA1000R” TYPE-2/こちらは、2018年TOT KAGURADUKI STAGEでのTYPE-2の走り。プロアームとセンターアップマフラーが特徴的なマシンだった。
ストリートユーザーに向けたパーツを軸に構成
Team Kagayama KATANA/KATANAをベースにセパハン&ロングテールという、空冷時代のカタナをイメージして作った1台。ラッピングによる黒×青のTeam KAGAYAMAカラー、それに合わせたディスクローターインナー、スプロケットがとても新鮮だ。
KATANAをセパハンにすると、タンクカバーと干渉してハンドル切れ角を確保しにくいのが問題になる。そのためヨシムラ製のタンクカバー/アッパーカウル/XコントロールハンドルKITを装着。特徴的なTeam KAGAYAMAカラーはラッピングによる仕上げ。このカラーリングを、と車両を持ち込むファンも多い。
マフラーはヨシムラカタナには欠かせないイメージである、バナナサイレンサーと呼ばれるB-77スリップオン。バックステップはベビーフェイス製のチームカガヤマ別注カラー。ロングシートカウルはオオノスピード製GTテールで、ナンバープレートはKATANA純正のスイングアームマウントから、テールカウル下に移設している。
カガヤマカタナは、イメージカラーである黒×青でディテールを統一しているところがスタイリッシュ。外装ボディパーツはもちろん、バックステップやドリブンスプロケット、ディスクローターのインナーローターは別注カラーとし、キャリパーのブレンボロゴまで青にするこだわりよう。さらに前後ホイールもラッピングでこの色に仕上げている。
■取材協力・TEAM KAGAYAMA https://team-kagayama.com
※本企画はHeritage&Legends 2021年2月号に掲載されたものです。
「カタナの可能性をTOTでもストリートでも広げる・チームカガヤマ」前編はコチラから