【IMPRESSION】 K-FACTORY Z900RS(2020)

【IMPRESSION】 K-FACTORY Z900RS(2020)

Z900RSパーツの開発に積極的なK-FACTORYは、2020年に車検対応・スチール製ショートマフラーを完成させた。Z900RSに似合うスタイルのショート管は、音量・騒音規制に対応するとどういう感じに仕上がっているのか。丸山 浩が大阪へ向かった。

取材協力:ケイファクトリー TEL072-924-3967 〒581-0815大阪府八尾市宮町5-7-3 https://www.k-factory.com/
Report:丸山 浩/Photos:徳永 茂 


最新スチールショート管の音はライダーにだけ響く

キーを取り、家を出る。ガオゥと火の玉カラーのZが吠えた。ガラガラゴロゴロ唸るソイツに跨り、向かうは通い慣れた近所の山。疲れた頭でも危なくないよう、直4エンジンの爆発ひとつひとつが分かるペースでのんびりと。ガオォォッ、ガオォォォッとシフトを上げるたび、ヴァゴォ、ヴァゴォとシフトを下げるたび、頭の中の要らないものが排気音で押し流されていく。そういやもう秋か、と山の色の変化に気付けるくらい頭の中が晴れてきた頃には頂上に着いていた。ちょっと自販機のコーヒーでひと休みして、またこのサウンドに浸ろう……。この原稿に手を付けているのに、もう一度、走ってきていいかな? と言いたくなるようないい音が蘇ってくる。

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いや、ZではなくてZ900RSだった。今回はケイファクトリーの新作ショートマフラーが装着されたデモ車に乗ったのだった。このバイクはステップや左右レバーといった操作系はタッチの良い丁寧な削り出し加工品となり、他にも同社製パーツが備わる。リヤショックはナイトロンに換装される。タンクカラーはもちろん、火の玉だ。

そして冒頭のようなZの雰囲気にぴったりなオールスチールのショートフルエキは車検対応品だ。クランクケース下にあるO2センサーがその証。4-1集合で、集合部後ろパイプはφ72mmと、よく見るショートよりは大径。ここに触媒をふたつ置き、さらに角度が変わる部分には膨張室も備わる。エンドバッフルもしっかり装着されて排ガスも音量も規制値をクリア。それでいてサウンドは惚れぼれするくらい昭和だ。

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まずエンジン始動時から、直管的。若干割れ響くようなガオガオガラガラしたサウンドには、燃焼室で爆発した混合気がエキパイにぶつかる様がイメージできる。アイドリングにはキャブレター仕様のような揺れがあり、まるでエンジンが息をしているようだ。エンジンからのメカノイズも、ノーマルより鋭く聞こえてくる。

走り出してスロットルを開ければ、ガオォォと唸りを上げながら力強く吹け上がる。まさしく昔ながらのZ、鉄馬らしいサウンドだ。面白いのは回した先で、シュウゥゥゥと荒々しい音が収束していくこと。駆動音も認識できるくらい滑らかに、規制値なりの音圧になっていくのだ。「よもや排気バルブが付いているんじゃないか?」というくらい、明らかに変化する。

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また、パーシャル時も同様で、往年のスチール管然とした猛々しさは、スロットルを開けた時のみ放たれる。 だからガンガン回して飛ばすよりも、3~4000rpmで早々にシフトして、ガオガオしたサウンドを堪能しながら流すのが楽しい。シフトダウンも高回転に入れない速度域でガウガウ言わせたくなる。以前試乗した、同社製マフラー装着のケイファクトリーNinja ZX-25Rは回すほど気持ちの良い同質の昭和サウンドを奏でていたが、なるほどこちらは948cc。マシンに合わせて、公道でも楽しめる領域に楽しさが設けられているというわけだ。 そんな音のイメージだったから、外からはどう聞こえているのかも気になってはいた。それをコーナーで撮影していたカメラマンに聞いてみると、ずいぶんと静かに感じたと言う。こうした撮影の時には普通、バイクの音を聞きながらマシンが近づくのを感じ取ってカメラを構えるものだが、このケイファクトリー・ショートマフラーは、あっ! と思ったらすぐ目前に来るほどというくらいに静かで、撮影タイミングを再確認したと。

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私としては美味しいところのサウンドを奏でていたつもりだったのだが、これは驚いた。つまり、猛々しいエキゾーストノートはライダーにのみ向けて放たれている! 先に述べたようなアイドリングからの重厚感は乗ってもライダーには伝えられる一方で、外に対しては静か。なんと今の時代に適った昭和サウンドであろうか。テールパイプをかつてのショート管より太めにしている点も、Z900RSの180/55タイヤと絶妙なバランスが取れていて、今のZ、という雰囲気を作り出している。そんな作りもさすがだなと思わせてくれる。

ナイトロンR3に換わったリヤサスペンションは、ノーマルよりもしなやかに動いてコシがあるので、乗り心地良好。ディメンションはノーマル同等、急かすようなハンドリングではないので、これまたのんびり走るのにマッチする。ステップこそ高い位置で膝の曲がりが強く、ロングは少々得意ではないかもしれないが、膝を軽く開いてやればちょいワルなライディングフォーム! このマシンはもうゼット、間違いなくあの時代のZ。いっそTシャツで走らせても……という気持ちを抱くほどに当時の雰囲気に浸れる試乗となってしまったのだ。

 

K-FACTORY・Z900RS Detailed Description【詳細説明】

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カーボンハンドルバーはマジカルレーシング製。ハンドルクランプは削り出しのブリッジ形状でケイファクトリーオリジナルだ。

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リヤにはテールカウルのシルエットをロングに見せる、ケイファクトリー・アルミテールカバーを装着。

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リヤショックはナイトロンで、レースユースまでカバーする「R3」に換装。同社製ライディングステップキットと相まって、柔らかくコントロールしやすいタッチ。

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ケイファクトリーオリジナルキャリパーサポートでブレンボキャリパーを装着。

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ジェネレーターカバーはブラスト処理して往年に寄せた遊び心を作る。右側のパルサーカバーもポインタカバー風に仕上げている。

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ラジエーターはハニカムメッシュのコアガードとケイファクトリー・アルミサイドカバーをアクセントに。

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同社ラインナップに同型のクローズドコース用(CSR)は既に存在していたが、今回の車検対応型「CSR+フルエキゾーストマフラー スタンダードタイプ(JMCA認証)」はストリートユーザーに朗報。認証プレートはステッカーの裏側にひっそりと貼られている。価格は17万3800円。またステーを交換することで、マフラーのアングルをカスタム路線に合わせて3段階変更可能。クラシック路線ならダウンタイプ。レーサー志向ならアップタイプという具合だ。ステーはアップ用/ダウン用各4950円だ。

※本企画はHeritage&Legends 2020年12月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

丸山 浩

国際A級ライダーとして全日本ロードレースや鈴鹿8時間耐久などの参戦経験を持つ。株式会社WITH MEの代表としてモータースポーツ文化を広めながら、雑誌、TV、YouTubeなどでモータージャーナリストとしても活躍中。