難点を見つけ出し、良好なパーツを使って一新する
メイクス・カフェレーサーとしてスマッシュヒットとなった、カワサキZ1-R。Z1000をベースに1977年にデビューしたモデルだ。そのZ1000がZ1000Mk.IIに進化したことや、Z1-Rで不評だった部分を受けて、ベースをMk.IIとして燃料タンク容量も13→20リットルに拡大、ホイールサイズも前後18インチから、ベース車同様の19/18インチとしたのがZ1R-IIだ。この車両はそんなZ1R-IIが元になっていて、メカドックに作業依頼で持ち込まれた。
「この車両は“楽しく走れるように”と依頼を受けたのですが、元=入ってきた時点が中古カスタム車で、全体的なバランスは良くなかったんです。それでこちらで手を入れるとしても現状や仕様を知らないと、とエンジンを開けていくと、シリンダーヘッドは面研が左右でずれていたり。そうして各部をチェックしていきました。ハーネスもボロボロでしたから、そういう部分も一新しようとなりました」と、メカドックの担当・畑中メカニック。各部チェックの後は再構築となった。
「ワイセコ鍛造ピストン&ウェブカムだった1075cc仕様エンジンはオーバーホールも兼ねて同サイズでスリーブを打ち替えて、ピストンはピスタル製鍛造、カムはヨシムラST-2に換えました。バルブやハーネス類はPAMS製を使うようにしました。シリンダーヘッドも再面研しましたが、これでだいぶ薄くなってしまったので、ベースガスケット等でその分を調整しています」という内容。メカドックで手を入れる車両を見ていると、どれも選ぶパーツが新しく、かつ的確なように思える。
「その時その時でちゃんと売れているものをそう言ってくださっていると思います。そういうパーツはショップやユーザー=市場の支持があって多く使われていると思って、それで選んでるだけなんですですよ」と畑中さんは言うが、長年、メーカー問わずで多彩な車両をそれこそ多彩に仕立ててきた、メカドックらしいアンテナも利いて吟味されているはずだ。もちろん見ての通りに車両の仕上がりは外観からも上々。排気量や前後17インチホイール仕様というスペック自体は変わっていなくても、的確に選んだパーツと作業、仕立て直しによってポテンシャルは大きく高まり、きっちり楽しめる1台になっているのだ。
Detailed Description詳細説明
20リットル容量の燃料タンクやビキニカウルほか外装類はZ1R-II純正で、メーターパネルはノーマル同様のものをカーボンで置き換える。ハンドルバーはアクティブ製。左右のマスターシリンダーはブレンボ・ラジアルポンプ、カーボンボディのミラーはマジカルレーシング製だ。
シートはノーマル同様のパターンの中央に分割ラインを入れ、内ももの当たる部分の角を落とすなどリフレッシュされている。
シンプルな印象を作り出すステップキットはスピードショップイトウ製。スレーブで分かるように、クラッチは油圧駆動化されているのだ。
キャブレターはFCRφ37mm。シリンダーヘッドは左右で面研のズレ(燃焼室容積や圧縮比が変わる)があり、再面研等の作業で修正したという。
エンジンは開けてみると既にφ72mmワイセコピストンによる1075cc(ノーマルはφ70mm/1015cc)となっていたので、不良箇所を洗い出しつつオーバーホールを兼ねて作業。同サイズでスリーブを打ち替え、ピストンを同じ鍛造ながらピスタル製に変更する。カムもウエブからヨシムラST-2とした。バルブはPAMSビッグバルブ、ほか不具合の出そうな箇所は再構築、ハーネスもPAMS製で一新している。
ブレーキは前後ともブレンボキャリパー+サンスターディスクという組み合わせで、角アルミのスイングアームはPMC製をマウントしている。タンデムステップもセット。ライブチェーンはDID製530サイズ、チタンマフラーは入庫時から装着されていたメーカー不明品。
入手時で17インチ化され、オーリンズフォーク等も装着されていたが、足まわりをブラック化したいというオーナーのオーダーでフロントフォーク/リヤショックともナイトロンに置換。ホイールはMAGTAN JB2で[純正値:1.85-19/2.15-18→]3.50-17.5.50-17インチサイズを履く。