
迷わずエンジンを開けられる環境を作る! 内部パーツでカタナを支える・オオノスピード
心配や不安を除き エンジンを開けて いけるように
「今新しいというかいち推しというパーツはこれ、ガスケットです」
そう言いながらオオノスピード・大野さんが出してくれたのは、以下の写真でも紹介しているエンジンのガスケット類の数々。ヘッドガスケットにシリンダーベースガスケット、クランクケースガスケットやオイルパンガスケット。次々出てくる。もちろんカタナ、GSX1100Sに750S用で、GS1000用も含まれる。
「全部金型から作ってもらって、全部国産です。GSも入っているのは自分が乗ってるから。全部自分用です……というのはさておき、カタナに乗ってる人が安心してエンジンを開けられるようにです」
▲オオノスピードの大野康広さん。かつてカタナで参戦した草レースを改めて走ってみようとも考える一方、今回のパーツのようなカタナ環境を支えるものを次々開発・販売する。まだ20年やりたい、とも。
いつものようににこやかに話してくれる大野さん。ヘッドガスケットは最新のブラック、現行車も使うタイプと、いわゆるメタルガスケットの2種類を用意して、好みや用途で選べるようになっている。前者は金属の芯材にフォーム材を合わせて密着性を高めていて、純正より柔らかい。今、紙製を用意している分もゆくゆくはメタルに移行するそうだ。
サイズも、使うエンジンのボアに合わせて3タイプが用意される。750に1100、そして1100で社外ピストンを使う時用だ。どんどん出てくるパーツというかガスケットは、シリンダーまわりでは背面のカムチェーンテンショナーアジャスター部用にミッションカバー、カウンターシャフト(出力軸)部用が続く。
▲クランクケースとシリンダーの間にはシリンダーベースガスケット(写真ではベースガスケット表示)、シリンダーとシリンダーヘッドの間にはヘッドガスケットと、高温・高圧のガスやオイルが内包されるエンジンの各接続部にはガスケットが挟まり、その気密を保つ。消耗品で、エンジンを開けるごとに換えたいパーツでもある。
クランクケースに移ると、クラッチカバーやジェネレーターカバーに、オイルパン用。形が非常に似ているけれど1100と750で異なるというものはそれぞれがきちんと用意されている。金型を作ると言っても採寸や最適な厚み等の検討、素材選び等が必要だ。金型にしてもここに挙げただけで軽く20くらいがある。その費用もかなりのものになるはずだ。
「費用は今までのパーツが売れた分から出してて、つい次のパーツを作ってしまうんですよ(笑)。こうした内部パーツは最初に言ったように、ないことにはエンジンが開けられないからそれを解消する。海外製リプロもあるにはありますが、それでエンジンを組んでしばらくしたらオイル漏れしたというケースも意外に見ます。組み直す手間もかかるし、その時に何を使うか。せっかく新品にしたはずが、次のやる気も削いでしまう。
海外調達は、コロナ禍で考えが変わりました。品物が入ってこないとお客さんに発送も返事も出来なくて困る。国内なら何とか対応できますよね。パーツを作るにも細かいニュアンスが伝わるし、確認もしやすい。そんなところでも国産。こうして作ると、純正の質が高いのも分かるんです。ですからそのレベルで作って、使ってもらえればカタナを走らせやすくなる。いつでも整備できるぞって」
大野さんはこうした内部パーツの動向で、どのくらいの数のカタナのエンジンが開けられ、整備されたかもだいたい分かるとも言う。その数を増やしたい。言い換えれば、こうした安心出来る消耗品を純正並みに用意することで、もっと気軽にカタナエンジンの整備や点検に使い、走ってもらいたいのだ。
金属製消耗品も含めてパーツの増強を続けたい
750と1100で酷似したパーツの使い分けも大事だという。
「クラッチカバーガスケットなんかは両車ですごく似ているから、ある方でつい流用しちゃいそうになるけど、穴位置が0.1mm程度、ほんの少しだけど違うので、組んだらやっぱりオイル漏れする。結構シビアなんです。それも避けたいから、1100と750、専用を使ってくださいと両方をリリースしてます。それなら車両に合わせるから間違わないでしょう。
ブリーザーカバーもそうで、形は似てるけど750の方が熱に厳しくてその熱を逃がしたいから穴が大きい。これを付くからって750に1100のを付けると、走っているうちにオイルフィラーキャップからオイルが出てくるんです。そんなことも避けたいですから」
自分の車両の排気量に合うように。そこも純正並みということ。細部までガスケットがあって、どのカタナも不安なく、作業を止めずにオーバーホールできるように。その考えは小物パーツにも及んでいる。クラッチワッシャにクラッチレリーズピン、カウンターシャフトのグロメットを抑えるためのリテーナー等々……。これらは金属製だが、それも素材選びにプレス等の加工にと、手間は大物パーツ同様にかかる。
▲オオノスピードからは上のように純正廃番となった車体系パーツも多く洗練復刻製作されるが、このメーターリング(写真は試作品)も外観仕上げ方を含めて開発進行中。もちろん他パーツの多く同様に国産。前側両端のねじれを抑えるようにアルミ製で、ガラスなしの単品販売として価格も含めて気軽に交換できる設定を目指している。
「これらも国産です。工場を回って出来るか尋ねて、OKなら打ち合わせして試作して……というように。意気に感じてくれて、そのうち燃料タンクも作るかなんて話に及んだこともあります。
ほかのも含めてパーツや作業については、今だとSNSでいろいろ言われますけど、まあシロートは黙ってろと(笑)。ひとつふたつの例を見ただけ、聞いただけでそれを振りかざして発信してはいけないかなと思います。SNSなら逆に、私とつながってお互い知り合って、それでパーツも理解して使ってもらった方がいいと思います。これまでのいろんな実例からの説明も出来るわけですし」
確かにそうだ。これらのパーツは多くのエンジンを開け、作業し、その経過を見続けてきたからこそ出したいし、出せるもの。だから信頼して使いたいし、使える。次の視野には、これも換えないとオーバーホールしたと言えないというカムチェーンガイドが入っている。これも期待したいものだ。
もはや車体全体にわたるパーツをカタナに送り出し、現行KATANAではテールを延長し内部に小物も入る人気のGTテールカウルキットやサスペンションなども展開しているオオノスピード&大野さん。あと20年はカタナに力を入れたいという心意気、これには安心の同店エンジンーツを使い、カタナを走らせることで応えたい。
排気量ごとの形状もトレースし仕様も変えるガスケットの数々
上左は復刻メタルヘッドカバーガスケット[GSX1000SZ・GSX1100SZ前期専用] 5500円。SZの最初の1年のみ用で形状/ネジ数が2年目以降(中左)と異なる。中左がそのGSX1100Sの2年目以降とGSX750S1-S2用で4950円。上右はGSX1000・1100SZ前期専用のブリーザーカバーガスケットで3850円。中右と下はメタルブリーザーカバーガスケット。中右はGSX1100S用で1650円、下ははGSX750S1・SS・S2用で1870円。
左はテンショナーアジャスターガスケット・メタル 1650円。右上はオイルギャラリーキャップガスケット 1320円。右下はドライブシャフトプレートガスケット・メタル 1650円。
上写真左上と下写真左はクラッチカバーガスケット・メタルで、上写真左上はGSX1100S/1000S用 4400円、下写真左はGSX750S1・SS・S2用 4950円。上写真左下はジェネレーターカバーガスケット・メタルでGSX1100S、GSX1000S、GSX750S1〜S2用。3300円。上写真右上はオイルパンガスケット・メタルでGSX1100S・GSX1000S用。3300円。下写真右はGSX750S・SS・S2用で純正同一の復刻オイルパンガスケット、4400円。上写真右下はシグナルジェネレーターカバーガスケット・メタルで1980円。
■メタル・ヘッドガスケット: GSX1100Sのボアφ74/75/78㎜用(左上)、GSX750S~S2のφ68/71㎜用(右上)があり、各1万9800円。どちらもボアや厚みを0.1㎜単位で特注することができる(特注の場合は10枚単位で、価格は要相談)。GS1000用もセンターOリング不要、同価格で用意される ■メタルリブ・シリンダーベースガスケット:GSX110 0S純正スリーブ限界のφ83.5㎜まで対応する最先端のレーシング対応品(中左)、中右はGSX750S1/SS/S2用。ともに1万1000円 ■複層メタル・シリンダーベースガスケット(下左):上下にカーボン素材、中心にSPCCの複層として柔軟性も持つガスケット。GSX1100S用、9900円 ■シリンダーベースガスケット(下右):純正同一のリプロダクト品。GSX750S1/SS/S2用で4950円。
■ステンレス・クラッチロックワッシャ(左):鉄より柔らかく振動や曲げに有効なステンレス製。1650円 ■復刻・リテーナー(中) 廃番品をステンレスで製造。2640円 ■ステンレス・リヤマスターシリンダーピン(右上):消耗品のピンをステンレスで製造。1980円 ■ステンレス・クラッチレリーズピン(右下):クラッチレリーズアームに入るピン。ステンレス製、1650円。
■エレクトリックパーツホルダー(上):ステンレス製ボルトオンの電装品マウントを金型で製造。純正ハーネスの場合はGSX1100S/1000SはSZ以外、750SはS2以降が適合する。2万2000円 ■復刻・ステンレスシートホック(純正タイプ)(下左):ステンレス母材を表面加工から見直し純正同様のDEPカバーも最先端加工した。5610円 ■復刻・ステンレスシートストライカー(下右):破損品が多く廃番のシートホック受けをステンレスで復刻。1万6500円。
極薄クリアやめっき調も可能な粉体塗装で保護性も向上
オオノスピードではフレームやホイールの保護性を高めるとともにルックスも引き締める塗装も検討中。作業はBPナカヤマによるもので、最適な粉体塗装用塗料を選択・輸入して作業。フレームはメタリックの上にクリアも載るがこの膜が極薄で、シャープなイメージも作り出す。めっき調塗装も可能で、ホイールはその参考。実際のクロームほど光り過ぎないのもいいし、文字類もきちんと出る。
他のカタナ用パーツにも注目!
GSX-Sマニアックエキゾーストは左右出しの純正をリスペクトしエンドのレンコンタイプ形状までも再現、排気音も純正をトレースしながらパーツ分割を工夫し整備性を向上、超軽量。「菊砲 チタンEX」はGSX1100S/1000S用、GSX750S1/SS/S2用とも39万6000円。ステンレス黒めっきの「桜砲」は同じく30万8000円。
データロガーや昇圧回路も内蔵し、点火カーブの制御範囲を広げたり3Dマップも使えるキャブ車用制御/点火ユニット「PE3」。OHNO-SPEEDバージョンは始動性のアップデートを行うなど、内部機能もカタナ用に進化させている。詳細は問い合わせを。
カタナ用にメーカー設定のないオーリンズショックも用意。GSX1100S専用ブラック・ラインとグランド・ツインを用意している。いずれもオオノスピード直販での受注生産のみとなっているから価格と合わせて問い合わせを。
現行KATANAはGTテールキットが高人気を維持
現行KATANA用パーツもラインナップ。うち、「GTテールカウル・ベースキット」は高い人気を続ける。テール部の外装パーツ4点に換えて、テールライトハーネスを延長することですっとした外観を作るとともに、シート後ろと両脇に小物入れスペースが作れる。写真のカーボンは11万円、FRP黒ゲル仕上げは7万7000円、延長ハーネスは3300円だ。
【協力】オオノスピード TEL043-227-9568 〒260-0006千葉県千葉市中央区道場北1-8-2 http://ohno-speed.com
※本企画はHeritage&Legends 2025年5月号に掲載された記事を再編集したものです。
バックナンバーの購入は、https://handlmag.official.ec/ で!