
【CUSTOM MACHINE IMPRESSION】フレキシブルな特性を得て適応範囲を大幅に拡大したXSR900 GP・SP TADAO x NITRON
SP忠男、ナイトロンともGP専用品を新規開発
最近のSP忠男とナイトロンは、両社によるコラボレーションに積極的で、Z900RSやGB350、Ninja ZX-25R、CT125など、テスト車兼デモ車を共有する事例が多い。そしてその最新作となるのが、ここで紹介するXSR900GP(以下GP)だ。
本題に入る前に大前提の話をしておくと、この車両が装着するSP忠男のパワーボックスフルRSとナイトロンのレースプロは、いずれも新規開発。基本設計を共有する既存の兄弟車からの転用品ではない。その理由を両社に尋ねてみると、以下の答えが返って来た。
▲試乗に立ち会い、前後サスのセッティングの変更を行ってくれたナイトロンジャパンの中木亮輔さん(写真左)は、ロードレース経験が超豊富でありながら、サーキットに特化しないフレキシブルな乗り味を構築できるサスペンションのエキスパート。XSR900GPはリヤの車高を安易に上げたり下げたりすると、フロントまわりに妙な切れ込みが発生するから注意すべき、とも教えてくれた。
「ヤマハCP3シリーズの純正マフラーは基本的に全車共通ではありますがECUや吸気系、シャシー、ライディングポジションなどが異なりますから、我々の基準では1本作ったら以後はそのまま転用でOK……とはならないんです。GP用の最大の特徴は、低中速トルクの増強を念頭に置いて膨張室の前後長を拡大したこと。既存のMT-09やXSR900用とは異なるキャラクターを構築しました」(SP忠男・大泉さん/小川さん)
「XSR900と比較すると、GPの純正リヤショックは豪華で高性能なフルアジャスタブルですから、それを確実に凌駕することを意識して、本来はスーパースポーツ用として開発したハイエンドボディのレースプロを採用しています。バネレートとダンパー特性は当初、XSR900用として販売する弊社のR3やR1シリーズに近い設定からスタートしましたが、最終的には完全な別物になりました」(ナイトロン・中木さん)
ノーマルとは趣が異なる抜群の快適性と柔軟性
まずはSP忠男のパワーボックスフルRSの印象を記そう。実は近年のCP3シリーズのマフラーに好感を抱いていたのだが、今回の試乗でノーマルのGPに感じた漠然とした違和感が、意外な形で明確になったのである。
と言うのも、パワーボックスフルRSを装着したGPは、低回転域からムッチリしたトルクを発揮してくれるので、常用域が快適で楽しいのだ。逆にノーマルのGPのパワーユニットは、ちょっと往年の2スト的なところがあって、常用域の抑揚がいまひとつでも、これはこれでアリと僕は思っていたのだ。けれどやっぱりストリートでは、低回転域のトルクが充実しているに越したことはない。
さらに言うなら、回転上昇が全域で鋭く、中高回転域で3つの気筒の爆発力が結集して官能的な排気音を聞かせてくれることも、パワーボックスフルRSの魅力である。そのあたりを認識した僕は、“気持ちイー!”という同社のモットーを改めて実感したのだ。
続いてはリヤショックの話である。そもそもノーマルのGPの前後サスは高荷重域重視の印象が強く、マフラーと同様にこちらもこれはこれでアリと感じていたが、一方でXSR900が備えていた常用域の楽しさが希薄になったことが気になってはいた。
ところがなんと、ナイトロンはそうした懸念を見事に解消してくれていたのである。いや、それだけでは言葉足らずか。レースプロを装着したGPは、常用域から車体姿勢の変化が明確に感じられるだけではなく(その印象には、パワーボックスフルRSによる低中速トルク増強も貢献しているはずだ)、路面の凹凸の吸収性がすこぶる良好で、高荷重域では絶大な安心感が得られるのだ。しかも、わずかに後ろ下がりになった車体姿勢のおかげで、XSR900の美点だった’80年代テイストが復活しているし、それでいてここぞ! という場面での旋回性の引き出しやすさときたらノーマルを完全に上回っているのだ。
なお今回の試乗では、ノーマルのフロントフォークを前提とする標準仕様に加えて、ナイトロンジャパンが設定した、2種のセッティングもテストさせてもらった。コンフォートでもブワブワせず、スポーツワインディグでも妙な硬さが見当たらない乗り味には、レースプロの潜在能力の高さが表れているように思えた。
試乗を終えた後、SP忠男とナイトロンのパーツに共通する美点と僕が感じたのは、それらの装着で適応範囲が大幅に広がること。スポーツ性を重視した結果として、ややピンポイントな乗り味になって見えるノーマルのGPとは異なり、この特性なら市街地走行やツーリングも十分に楽しめるだろう。
いずれにしてもXSR900GPの乗り味はカスタム次第で大きく変わる。その事実が確認できたことは、ひとりのカスタム好きとして何だか嬉しくなってしまった。
ノーマルとは一線を画する、柔軟性を獲得
開発ベースとなったXSR900と比較するとGPはスポーツ性重視で、誤解を恐れずに表現するなら、ピンポイントな味付けに感じる。一方でSP忠男のパワーボックスフルRSとナイトロンのレースプロを装着したデモバイクは、乗り手の技量や走る場面を問わない柔軟性を獲得していた。
SP TADAO・グッドポジションキット
本文では触れられなかったけれど、今回の試乗車で感じた柔軟性やフレンドリーさには、ハンドルグリップ位置が14.5mm高くなる、SP忠男のグッドポジションキット(写真はその試作品)も大いに貢献している。取り付け時にハーネスやケーブルの交換は不要で、価格は4980円だ。
SP TADAO・POWERBOX FULL RS ブラックエディション
ノーマルに通じるショートタイプのデザインでありながら、パワーボックスフルRSの構造はノーマルとは別物で膨張室は独立式、排気口はひとつ。ユーロ5規制に対応するため、O2センサーの取り出しは触媒前後の2カ所に設置する。素材はオールステンレスで、ポリッシュ仕上げは19万6900円、ブラックエディションは20万7900円。
NITRON RACE PRO MONO SHOCK
ナイトロンのハイエンドモデルとなるレースプロの特徴は、通常ラインのR1/2/3シリーズより外径が6mm大きいΦ46mmのボディチューブと、トップアウトスプリングを採用すること。調整機能は車高/プリロード/伸び側ダンパー/2系統の圧側ダンパーの5種でXSR900GP用の価格は25万6300円。
【協力】
SP忠男 〒111-0033東京都台東区花川戸2-17-10 TEL03-3845-2009 https://www.sptadao.co.jp
ナイトロンジャパン 〒344-0122埼玉県春日部市下柳43-1 TEL048-884-9500 https://nitron.jp/
※本企画はHeritage&Legends 2025年3月号に掲載された記事を再編集したものです。
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