普段からのちょっとした気遣いとひと手間でニンジャの好調と楽しみを維持する・ブルドッカータゴス

普段使いにもロングツーリングにも、サーキットにも。いろいろな使い方が出来る上にそれらに応じた作り込みが出来て、その変わり方も楽しめる。ニンジャのそんな素性や楽しさをきちんと引き出して、それをもっと知ってもらいたいとブルドッカータゴスの田子さんは言う。ニンジャで出がちなクセを抑え、より快調にする同店がかける「ひと手間」に注目したい。

不安を減らし楽しく走るパッケージも提案する

40周年だから昔を知っている、あるいはデビュー当時に憧れたなどという人が乗っている。そう思いがちなニンジャ。開店から26年(取材時)、「専門というわけではないんですけど、ニンジャはよく来ますし、扱います」と言うブルドッカータゴス・田子さんに聞いてみた。

▲昨年開店26年となったブルドッカータゴス。代表・田子敏幸さんはアドベンチャーなど他ジャンルのバイクに乗り、新しいニンジャ用パーツの開発をするべく走り回っている。

「ニンジャは若い人も乗っているようです。ただ、車両のことは分からない。それで調子がいまひとつで、でも買ったところから“古いのでこんなもの”など言われることも多い。または調子がいいのかどうかも分からない。そんな方が来店されることも多いですね」

来店する車両の仕様も調子もさまざま。ただ今、手に入れてどんな風に仕立てるといいのか、不安を減らせるのか。紹介してくれた車両は、そんな見本になる。

▲BULL DOCKER TAGOSのGPZ900R。ポジション重視で製作したデモ用フルカウルニンジャを整備しながら乗り続けるという好例だ。各部の詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

「元々ニンジャに乗るお客さんとカスタムの相談をしていたのですが、転勤でしばらく遠方に行かれると。でしたらと、当店のデモ車と入れ替えという形で少し前に販売したものです。今回は車検で入庫しています。“走るニンジャ”をテーマに、製作当時はあまりなかったノーマルフルカウルの外観を持たせて、東京モーターサイクルショーにも展示しました。

ホイールはラヴォランテ・レジェンダで17インチにして、後期型純正フォークにYSSのPDバルブ(適度な減衰力を加えるバルブ)とこれに合わせたハイパープロスプリングを組んで。リヤには17インチに合わせたハイパープロショックを使います(※編註:タゴスはハイパープロサービスショップで、ショック/スプリング選定や仕様変更等にもノウハウが豊富)。

ポジションも重視していて当店のクルーズステムキットTYPE-1とニンジャバーZ、ライディングシートとケイファクトリーステップの仕様。エンジンはヴォスナーφ74mmピストンを組んで945cc。大がかりでないけどしっかりパワー感もトルクも高まる仕様になっています。納車後もだいぶ走られて、途中1度エンジンオーバーホールを受けています」

今ニンジャが現役なら、こんな感じがいい──。そう多くの人が思うような要素が取り込まれたような仕上がり。これは確かに、見本にしたくなる。

▲BULL DOCKER TAGOSの田子さん自身のGPZ900R。ニンジャ=オールマイティという捉え方を地で行く気楽さと疲れなさを盛り込んだ見本車だ。各部の詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

紹介するもう1台は田子さん自身のニンジャだが、同様の考えで作られ、疲れないし、何にでも使えてしまう仕様。以前にも紹介しているが、この車両には田子さんのニンジャへの考えも凝縮される。

その考えとは、「ニンジャは乗ってみると面白みがある。その上で、手を入れると“こんなに変わるのか!”というくらいに分かり、それが面白いということ。そして、幅広く楽しめること。そんな楽しいところをもっと楽しくして、みんなに知ってもらいたい」。

オリジナルパーツや田子さんの選んだ社外パーツ、車両の全体感は、そこが元になっているのだ。

 

ちょっとした気づきから調子も感触も良くなる

そんな楽しいバイク=ニンジャの調子を維持するために、田子さんは“ひと手間”をかけることを勧めてくれる。バイクが見せる症状から、陥りがちなマイナスを避けるためのちょっとした工夫。今回もいくつか教えてもらおう。

▲指を刺しているのはバランサーシャフトの調整部で、手前のボルトを緩めてギヤのせり音がしない位置(マーキングあり)で締める。

「例えば、エンジンを始動してキュルキュル……という音がする。これが回すと消えるという場合、バランサーシャフトのギヤがずれています。エンジン下右前のシフトシャフトのようなシャフト、ここを調整すれば消える音です。

スターターワンウェイクラッチも注意したいですね。使ううちに滑ってきます。対策前のA7までの車両は多め、あと摩擦が減る系のエンジン添加剤を入れている場合はより出やすいようです。

エンジンを開けないと換えられませんから、機会があれば調子が悪くなくても交換したいパーツです。何かの時、バラした時に交換必須なパーツは最低限ストックしておくのがいいと思います。

純正パーツも減ってますから、気にしておきたい。最近もインテーク側カムがなくなりましたが、TGナカガワさんのラッピング処理があります。あるもので、信頼できるものは買って使うでいいと思いますよ」

バランサーはこの近くのオイルシールからオイルが漏れやすいのでその交換に合わせて調整すればいいとのこと。パーツについては田子さんもショップでストックし、必要に応じて使っている。これなら作業も止めずに済むし、交換することで機能の回復と次の劣化も予想できるという点で、安心感が高まる。

こうした作業/交換以外にも、普段から気を遣えることもある。

▲タゴスではエンジンオイルにモチュール300Vを推奨している。

「エンジンオイルと冷却系はそのひとつです。高速を使うとオイルを食うという話で、バルブステムシールが古くなっててそこからオイルが排気と一緒に出てしまう。見えないけど減る。オイル交換時に車体をまっすぐ立てて、出てくる量でも確認しましょう。

そのオイルもいろいろ試してきて、いいものを3000km目安で交換することを勧めます。ロングツーリング主体なら4000km、むしろちょこちょこ走っては止めるような使い方なら2000kmごととか、早めの方がいい。

いいオイルだとエンジンも汚れないんです。当店ではずっと使ってきた結果、モチュール300Vに落ち着いていますが、これが8~9万㎞走行後にバラしてみても、オイルパンやミッションなど他の内部パーツもきれい。ひどいのだとスラッジがこびりついて真っ黒というのも見ますが、それもない。各パーツを洗う手間が省けて、交換パーツも少なくて済む。バルブも磨いて摺り合わせで済むほどです。結果的に安く済むというメリットも出てくるんです」

安いオイルでもまめに交換すればと思う向きもあるだろうが、オイルの役割=潤滑や保護、清浄……を考えれば、それが高い水準で行われる方がいい。田子さんは300Vの10-40Wか10-50Wを基本とし、TOTなど環境が厳しくなったときにオフロードコンペ用10-60Wでミッションの入り方を改善するなども試し、結果を得ている。冷却水の方はどうだろう。

「最近は暑いこともあって、より重要視しています。ラジエーターキャップの圧力の高いものへの交換やサーモスタットを純正82度Cから60度Cで開くものにして水をよく回す。ラジエーター本体も容量を増したりします。当店だと3層コアタイプにして純正カウルに収める方法もありますから、この辺は相談で」

ほかにもサイドカバーとテールカウルのがたつきを抑えたり、シートと外装、センターカウルとアッパーカウルのチリ合わせ(隙間合わせ)に外装割れ防止抑制と、田子さんがニンジャにかける“ひと手間”は多数。しかも、聞いてみればなるほどやってみようと思えるものばかり。そんなひと手間からも、ニンジャはもっと身近で楽しくなるし、そうなればもっと大事にしたくなる。豊富なパーツ群にも興味がある、作業を依頼したいなら、タゴスへ連絡するのを勧めたい。

 

ニンジャで大事な“ひと手間”で復調&より快調へ

ただ古いから衰えるのではない。エンジンオイルを始め、どんな手を入れるか、弱点を補佐してやるか。そんな“ひと手間”でニンジャはしっかりする。田子さんの手法を見てみよう。

■エンジンまわり:オイル選択や交換タイミング、量にも配慮する


エンジン左側にあるオイル点検窓で、車両を垂直に立ててこの窓の中央くらいに来るのがエンジンオイルの適量だ。


エンジンオイルはいいものを3000㎞ごとに交換すればいい状態を保てるし、内部パーツのダメージや汚れも少なくできライフも伸びる。タゴスではモチュール300Vを推奨する。基本は10-40Wだが、TOTなど条件が厳しい時に15-60Wを使うとミッションの入りが改善できた。

■補機類&冷却系:電気まわりと水まわりの確認は必須項目


電気系はエンジン復調に効く。写真で指の先にある円筒状パーツ=点火に必要な電圧を作る昇圧部となるイグニッションコイルはだめになりやすく、新品交換で調子が出ることもしばしば。配線類も硬化や折れに注意し、そうなる前に交換を。


キャブレター前後のゴム=インシュレーターやエンジン側の締結バンドは硬化やひび割れなど劣化に注意して交換。


プラグキャップも古いとキャップのゴムが固くなりシール性も落ちる。左側気筒は水たまりにも注意だ。


ラジエーターの圧力を保つラジエーターキャップも折りを見て交換を。

■ボディまわり❶:センターカウルのガタ防止で見た目も良化


カウル(フェアリング)間の隙間を減らせばがたつきも抑えられ、見た目も良くなる。


田子さんの工夫はアッパーカウル取付ボルトにジュラコンスペーサーを偏芯して取り付ける。一枚目の写真のようにセンターカウルをアッパーカウルに合わせ、ジュラコンスペーサーのボルトを締め(L字の先を短くした6角レンチを使う)偏芯スペーサーを回してセンターカウルを上に密着するようする。


ラジエーター下両側にボスを追加し、センターカウル下を差してβピンで留める。


左から回したオイルクーラーで、カウルを外せばこうしてすぐ洗える状態になる。

■ボディまわり❷:シートの反りやサイドカバーの割れ、ガタつきも予防できる


サイドカバー裏にはETC車載器を立てて収めているが、これはリヤブレーキリザーバーを少し小さいものに換えればできる工夫。


サイドカバーボルトは裏側にフリーになるジュラコンスペーサーを入れ、脱落を防ぐ。


サイドカバー後端に薄いラバーシートを貼ればテールカウル前縁との当たりを緩和、かつ密着できて音も傷も心配なし。サイドカバー裏側の純正スポンジもちゃんと貼れば割れ防止に有効。


フレームにシートベースの突起が当たる部分にラバーを貼ればシートの反りも気にせずシートとカウルもきれいに収まる。

 

【協力】ブルドッカータゴス TEL0270-75-4772 〒372-0825群馬県伊勢崎市戸谷塚町42-1 https://www.bd-tagos.net/

※本企画はHeritage&Legends 2024年2月号に掲載された記事を再編集したものです。
バックナンバーの購入は、https://handlmag.official.ec/ で!

WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。