ゼファーに乗って楽しむことを軸にした、お勧めパッケージやパーツ作りに注目・バグースモーターサイクル

現代性とシンプルさを合わせ持つゼファーシリーズに着目し、750にはより元気さも加え、1100には取り回しを軽くするなど、多くの車両&パーツを手がけてきたバグースモーターサイクル。2023年4月1日に新店舗に移転し、ゼファーのサポート体制も深みを増している。エンジン内部を含めて同店が提案するパーツ群やコンプリート車への提案に迫ろう。

持って走って楽しめるコンプリートの提案

堂々としたスタイルやビッグバイクらしいトルク感、さまざまなシチュエーションに合った走りが楽しめるゼファー1100。手を入れる幅も広く持っていて、軽量化やフロント17インチ化など、多くのメニューが楽しめる。

紹介する車両はそんなゼファー1100にもう10年以上、パートごとに手を入れていき、それぞれの段階での変化も楽しみながら、このほど完成に至ったというものだ。

▲Bagus!のZEPHYR1100で、エンジン&フレームからスタートして経過を楽しみつつ完成に至った現代的1台。各部の詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

「オーナーさんは元々ゼファー(400)に乗っていて、それも空冷Zで言ういわゆる“研二君仕様”のイメージでした。それから1100に乗り換えて、フレームも外装もそれを引き継ぐカラーになりました。基本路線は現代的に手を入れていこうということで、エンジンも早い段階で1135ccにしています。足まわりは17インチで、当初純正流用ホイールを履いていた物がエア漏れしていたので、アルミ鍛造に履き替えています。

何か変更してはその効果を確かめて、じゃあ次はここやりますという感じで作業を進めました。メーターもエンジン回転計をスタックにしていたんですが、速度計もスタックで揃えました。そして待ちに待ったウイリースイングアームも装着できて、完成ですね」

▲バグースモーターサイクルの土屋雅史さん。自らもゼファーに乗りつつ、パーツや車両に多彩なアイディアを形にしてきた。右は2024年4月1日に同じ横浜市内で移転したバグースモーターサイクルの新社屋。国道246号や東名・川崎ICからも近く、広い敷地内に今まで分かれていた機能を集約。

バグースモーターサイクル(以下バグース)の土屋さんは言う。使用パーツや作業の進め方に違いはあっても、軽くすることでとっつきやすさや取り回しを良くする。同時に走りの質も上がる。もちろんルックスも良くしていく。その上で1100ならではの余力も楽しめるようにというのは、同店でゼファー1100に手を入れる際のひとつの指標とも言える。

この車両では段階的にその変化も楽しんだ、つまり変化ごとの内容をオーナーも気に入り、また次の要望を依頼するサイクルが続いて完成形となったということで、その指標も、作業内容も信頼できてのことだと理解できる。

そこでこんなゼファーカスタムを作りたい、楽しみたいとなった時にどう考えるといいのだろう。そこに用意された回答とでも言うべきだろうか、土屋さんは“ゼファー・コンプリートカスタム”を提案してくれた。今までにも近しい構想やその実例はあったが、ゼファーを取り巻く背景も変わって、さらに具体的になっている。

「全バラにしてフレームからやり直す(確認/修正、仕上げ)ことをベースにしています。前後オーリンズサスでブレーキ強化に鍛造ホイール、エンジンはオーバーホール必須で積むという感じです」

▲ホイール付きの製作進行中車両。この状態から見ても、完成時の姿が楽しみな1台だ。

ちょうどオーダー進行中の車両を見せてもらえたが、仕上がったフレームと足まわりが仮組みされ、エンジンはクランクケースが仕上がったところ。外装ペイントも済んだ状態で、当然ながらどこも良好だ。しかも複数台が進行中だ。今改めてという理由も聞いておこう。

「持って、乗って楽しいバイクを提供する。そこに今、ゼファーがはまるかなという考えと、タイミング的なものです。カスタムを楽しむということではZなどほかのバイクでもいいんですけど、ベース車の価格も高くて、価値も高騰している。気軽に乗りにくい。そう考えた時、ゼファーならもう少し気軽で、価格も落ち着いています。

Zに乗っている当店のお客さんからも『気軽に乗れるもう1台』としてのゼファー、手を入れた感も走りも楽しめるカスタムでという増車の要望もあるんですね。それでZにコンプリートカスタムが出てきた当初と似た位置に今のゼファーがあると捉えて、コンプリート車両を提案しました。

20~30年ぶりにバイクに乗る人にも普通に乗れる仕様をベースにして、純正キャブレター+エアクリーナーボックス基本。エンジンチューンや経験との組み合わせでもここは柔軟に変えていけます」

フルメニューの新車的な状態が手に入れられるわけで、1100、750ともに対応し、ノーマル仕様398万円、フルカスタムで600万円(ともに税込み)を想定しているという。これは現実として手の届く範囲(土屋さん)という設定で、弱点対策のこと、入手後に手を入れる手間や費用のことを考えれば、確かにその通りで、期待感も高まってくる。

 

ゼファーの世界を広げるオリジナルパーツ強化

ゼファー・コンプリートカスタムの提供。バグースでは並行してゼファー用オリジナルパーツの充実化にも力を入れている。最新の話題はまずオリジナルコンロッドだ。イギリスのアロー製で、ロッドはX字断面を持っている。土屋さんによればH断面(ロッドの狭い面を肉抜き)とI断面(同じく広い面を抜く)のいいとこ取りで、均等に強く、かつ軽いなどの利点がある。先行したオメガ製鍛造ピストンもラインナップが増えた。

▲H断面とI断面のいいとこ取りのX字断面を持つイギリス・アロー製オリジナルコンロッド。

「750用に、φ71.12mmを追加しました。今までは1mmオーバーのφ67mm、810ccのφ69mm、850ccのφ70.5mm。750をO/Hしたいとか元気よくしたいという向きを幅広くカバーしてきました。それで850ccの人たちが5、6年、8万km走った人もいて次は? にスリーブも対応できるφ71.12mmの860ccを加えました。その上はビッグブロックかもしれませんけど(笑)。

▲ラインナップの拡充を図るオメガ製鍛造ピストン。写真は750用で850ccになるφ70.50mmサイズピストンだ。

1100にも1135ccのφ76mmの上、みんなが憧れるφ80mm(1260cc)を加えています。かつてモリワキさんで出していましたが、今はないのでその分です。

ほかにも1100で一部でないクランクメタルや、もうないミッションは手を付けたいですね。ミッションは純正代替でギヤそれぞれ、それからシャフトの順」

▲純正にないオーバーサイズ品を0.5mmオーバーサイズで製作した汎用バルブガイドセット。12.50で1100/750適合する。

中古を使うにしてもいずれなくなるからと考える土屋さん。1100/750用バルブガイドや750用吸排気バルブも用意し、車両維持への気遣いも怠らない。

そうして維持される車両に楽しみをプラスするパーツ群も充実化される。「OHLINSボルトオンフルキット ゼファー750」もそのひとつで、これがあればゼファー750ノーマルが一気にオーリンズφ43mmフォーク化でき、ステムやブレーキも揃う。ホイールもそのまま使えるキットだ。

1100のクラッチレリーズを外した際に割れが見つかるスペーサーもアルミで用意した。既に展開している商品でも、例えば750用リヤブレーキキャリパーサポートは純正ホイール用と、後々のホイール変更に適合するカラーを同梱し、トルクロッドは180タイヤにも干渉の心配がない。探せば探すほどに、これは面白そうだという感覚も湧いてくる。

今まではパーツ製作部門(プレス、溶接ほか)や車両扱い部門(ソイルマジック。ゼファーに特化して中古車両を仕入れ、整備して販売する。車両展示も行った)はバグースの各部門として別々の場所にあった。それが今年4月1日に同じ横浜市に移転・統合された。

この新店舗は、前述したようなバグースの各部門=整備&各種作業、パーツ製作にデリバリー、車両/パーツショールーム、シャシーダイナモなどを1カ所にまとめる広さを持っていて、各部門の連携を深めた。それぞれの作業のために動きやすいスペースが取られ、作業内容や進捗に車両現状、必要なパーツなどの情報がすぐに伝えられ、素材やパーツそのものもすぐ渡せる。扱い車両も個々でなく、全体を把握しやすくなった。

また店舗スペースの一部をカフェとして使う案も進行中で、バイクを眺めながら車両やカスタムに思いを馳せる楽しみも増えそうだ。その対象がゼファーなら、バグースを介することでもっと可能性が引き出せそう、そう思える。

 

気兼ねなく乗って楽しめる作りのコンプリート・パッケージも用意

バグースモーターサイクルが考える、ゼファー1100/750への提案をまとめたコンプリートパッケージ。フレームから全バラして各部点検・修正/再組み立てし、エンジンは対策含めてフルオーバーホール。足まわりも前後オーリンズ、ブレーキもブレンボ+サンスター、ホイールも鍛造品をベースと考え、「ライダーに少しブランクがあっても普通に扱える」新品ライクな車両になる。詳細は問い合わせを。


ホイール付き、下のフレーム単体とも製作進行中の車両だ。


イエローボール外装、クランクケース(面研/塗装終了)はホイール付きの車両に積まれるもので、まさに現在進行中。キャブレターなどの仕様も相談可能で、注目したい車両だ。

 

アロー・X断面コンロッドを加えてエンジンパーツの可能性もより広げる


車両維持に欠かせないエンジンパーツにも注目し、オリジナル品を用意するバグース。新たに導入したイギリス・アロー製コンロッドはI断面とH断面の長所を合わせ持つX断面。土屋さんがTOT・ZERO-1クラスで走らせる写真のゼファー750にもオメガピストンなどと一緒に組まれて仕様などの研究も進められる。


Bagus!とアロー(裏面)のダブルネームのコンロッド。写真は750用。スラスト面から肉抜きするI断面とラジアル面(細い方)を抜くH断面を合わせたX断面が特徴で、小端はブッシュ仕様として打ち替え可能。大端ボルトは締め角でトルク管理するAARボルトを採用と、現代の作りだ。

 

ショールームに作業スペース加工やパーツ製作セクションも集約して機能を強化した新店舗


20023年4月1日から新店舗で稼働しているバグースモーターサイクル。ショールームやシャシーダイナモ室などいろいろな作業スペースも統合しながらそれぞれに十分なスペースが取られ、従来同等以上の効率の良さを得るとともに、各作業どうしの連携性は大きく高められた。


フラットで広いスペースを持つショールームには販売車両やTOTレーサー、各種オリジナルパーツなども置かれ、間近に見ることも出来る。


車両組み立てや整備を行う作業スペースは車両2台が入れられ、スムーズな動線で作業可能。シャシーダイナモ室もすぐ車両が入れられる位置関係にある。


店舗の奥にも広いスペースが取られ、加工やパーツ製作作業が行える。上は旋盤などのスペース。中は溶接でオリジナルオイルキャッチタンクを製作中。下はパンチ・レーザー複合マシンで、プレスやカットなどの加工を行う。バグースでは2/4輪用ほかパーツ製作も請け負うという。


▲新しい店舗を表通り側から見た様子で、ここからもその広さが分かる。将来的にカフェ用のバイクスペースになることも想定する。

 

今注目したいゼファー用パーツ群

「こうなっているとありがたい」「これは便利かも」という発想を形にしていくバグースオリジナルのゼファー用パーツ群。その新しいものや注目製品を見ていこう。


「ZEPHYR750 リヤキャリパーサポート ブレンボ84mm用」は純正リヤφ230mmディスクにブレンボ84mmピッチキャリパーを組み合わせるサポート&トルクロッド。純正ホイール用カラー付属、将来的にゲイルスピードホイールでワイド化する際のカラーも付属し180幅タイヤもOK。


「Bagus! OHLINSボルトオンフルキット ゼファー750」はゼファー750用ホイール(適合社外品含む)にオーリンズフォークが付けられる。オーリンズ正立フロントフォーク/Bagus! オフセットステムキットΦ43/Φ300対応キャリパーサポート/ブレンボ 4P 40mmピッチキャリパー/専用フロントブレーキホース(純正基準。ハンドル/マスター変更時は相談可能)/Bagus! クロモリフロントアクスルシャフトのオールインワンパッケージだ。ブラック、ゴールドあり。


「Bagus! オリジナルワークスエキスパンドフロントディスクローターΦ320」はラジアル適合ディスクをアキシャルキャリパーの有効幅に合わせた便利なオリジナル品。


「Bagus! シフトシャフトサポート」(ピンク矢印)は750で長いシフトロッドを支え、オイル漏れを予防する。これを使うために純正カバーに換えて使う「Bagus! フロントスプロケットカバーセット」はセルモーターカバーもセット。


ゼファー1100純正のクラッチレリーズは樹脂製で外すとスペーサー(ピンク矢印部)が割れていることが多い。その防止を兼ねてアルミで製作したクラッチレリーズプレート。純正ではスプロケットカバーで隠れるが、安心のためにも使える。


「Bagus! OMEGAピストンキット」はイギリス製鍛造品で、バグースでゼファーに必要なスペックでデザインされている。写真は1100用φ76mm(1135cc/ボーリングで組み込み可能)でほかにφ80mm(1260cc)あり。


「Bagus! サイドスタンドプレート」は柔らかい路面でスタンドが潜らない、ガレージでも便利なステンレス製プレート。

 

【協力】バグースモーターサイクル TEL045-532-9198 〒225-0001神奈川県横浜市青葉区美しが丘西3-2-7 http://bagus-mc.jp/

※本企画はHeritage&Legends 2023年9月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。