手堅いベースとしても認知されるコンプリート車RCMニンジャで分かる仕様の変化・ACサンクチュアリー

RCM(Radical Construction Manufacture)と呼ばれる前後17インチのコンプリートカスタム車をもう20年以上展開するACサンクチュアリー。ニンジャにも“スポーツパッケージニューTYPE-R”をメニュー設定し、コンスタントなオーダーがある。その内容は元になる車両の経年にともなってアップデートされる一方、作り込みには担当メカニックの練度アップでの質の向上、そしてカスタムとしての仕様に市場からの変化があるという。その最新の様子を聞いた。

嗜好の二極化はあるが走るユーザーの多い車両

「ファイナルエディションから20年経って、フルオリジナルにこだわる人も増えた。一方で、手を入れるならフルカスタムと、二極化している感じ。Zシリーズの時に似た感じで、ニンジャは旧車になったなというのが正直な感想です」。こう言うのはACサンクチュアリーの中村さん。同店のコンプリートカスタム、RCMはそのうちのフルカスタム。それでもかつてのようなエンジン載せ替えなどは落ち着いたという。

▲ACサンクチュアリーの代表、中村博行さん。GPZ900RはRCMの製作だけでなく多くの17インチカスタムパーツも送り出している。

「大径ピストンやポート加工、ロングストローク化などでモアパワーもできますし、RCMにもZRXエンジンを積むフォーミュラパッケージがあります。でも今はニンジャヘッドでアップデートメニューを施したスポーツパッケージ・ニューTYPE-Rがほとんど。

このニューTYPE-Rは純正対策パーツや後継機パーツを使ってフルオーバーホールしたエンジンを使うことが基本です。もちろんトルクや上のパンチはほしいから、少し排気量を上げるというオーダーが多い。現代的な17インチタイヤを履くためのシャシーを楽しめるエンジンが重要で、それで安心して走るという使い方。今の事情に合っているんでしょう。

ですからRCMニンジャで距離が出てオーバーホールに再入庫する時も、同じ仕様でのことが多いです。これが同じRCMでもZだと、一緒にボア拡大などのスープアップが必ず入りますが、ニンジャでは8割はこれです」

▲2000年頃のRCM登場当時以降はA10以降の良好なエンジンを使って作られたRCMニンジャ。2015年にはそのメニューを見直してエンジンのフルオーバーホールを基本メニューに加えた「スポーツパッケージ・ニューTYPE-R」を設定。今の主流となった。

ニンジャは1回の走行距離が長い、走る回数が多いなどでオドメーターの距離も増える車両が多数だというのは複数のショップで聞かれた傾向。そのために安心して走れるパッケージがほしい。そこにニューTYPE-Rは適合できているということだ。

RCMニンジャが確立した2000年にはまだニンジャは現役。だから手を入れるならこの17インチメニュー。そういう背景もあって、早くにこの仕様=17インチ適合ディメンションの取り込みやドライブチェーンオフセット軌道確保などフレーム加工は確立した。その後車両生産終了や、エンジンや電装パーツの純正廃番が進んだこと、良好な中古個体が減ったことを受けて、’15年にニューTYPE-Rが設定された。

 

ばらつきのない車両に現れる好みの移り変わり

RCMニンジャ・ニューTYPE-Rにはここまでに説明した基本メニューを施した“スタートエディション”が基準として用意される。当然それで十分に17インチニンジャを楽しむことができる。ただこの車両オーダー時に、好みで各部パーツや仕様を変えて個性化を図るパターンがほとんどだ。

ベース車両やパーツ調達価格の変動もあるため、スタートエディションの価格は見直されてきて、2023年版では428万円。ぱっと見には大きな額にも思えるが、ちょっと考えてみたい。

▲エンジンオーバーホールや17インチ最適化を行ったベースに各部アップグレードが図られたAC SANCTUARYのGPZ900R。RCM-542というシリアルナンバーが付けられたコンプリート。“スタートエディション”からは前後ブレーキキャリパー/マスター変更、スイングアームスタビ追加、メーター変更などを行ったアップグレードバージョンの見本(デモ車)でもある。車両の詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

100万円台なら安い、下手をすれば300万円台という価格が付く今のGPZ900Rの中古車市場。しかもその内容ははっきり言って分からない。手に入れてそのまま乗れるならいいけれど、点検や整備、場合によっては大がかりな手を入れないといけないものもあるだろう。型式での仕様違いも気になる。

そこを考えればRCMは明朗会計な上に、内容も明快。しかもそのまま乗り出せる。これも何度か伝えてきたが、車両をいい状態にし、必要なパーツを確保して装着する。作業工賃を除いて単純に計算してみても、ニューTYPE-Rはお得だと分かる。

「オーダーしてくださる方も、ニンジャが旧車として車両価格が上がった分、確かで安心できるものをという気持ちも強まって選んでくださる。そこには応えたいんです」とも中村さんは続ける。

▲ニューTYPE-RのRCMニンジャで今増えているのが倒立フロントフォーク。写真はノーブレストの「ニュー倒立E×Mパッケージ」装着見本で、ラボ・カロッツェリア扱いのオーリンズ・ユニバーサル倒立フォークを専用のスカルプチャーTYPE-1or2(オフセットは純正40から37mmに)とセットする。

ところでニューTYPE-Rの構成は安定していると記したが、カスタムの部分での変化などは何かあるのだろうか。

「足まわりパーツの選択ですね。倒立ExMパッケージが増えました。以前が正立9:倒立1なら今は7:3。剛性のマッチングでは正立がいいかなと思いますが、個性化を図るという意味で選ばれているようです。ニンジャはZよりもステム軸のベアリング容量が大きいですし、E×Mパッケージだと専用設計のステムもセットで、ステアリングストッパーもしっかりしている、ロックも効かせられるという点で支持されたのでしょう。

▲ノーブレストの「ニュー倒立E×Mパッケージ」は写真のようにハンドルストッパーも有効にでき、ハンドルロックも効かせられる。

ラジアルマウントキャリパーも増えました。新しいブリッジ規格のブレンボCNCが当然のように使われます。あとはマスター。スタートエディションのニッシンから、多くの方がブレンボRCSにする。エンジンまわりは先に行ったとおりで、電装もウオタニ標準ですから、そこはOKという判断です」

 ▲こちらはRCMニンジャでのラジアルキャリパーの採用例。ブレンボCNCの人気が高いという。

車体系や足まわりは大丈夫。ただエンジン系純正部品の廃番は、今後の車両製作や維持に影響してくるとも中村さん。ニンジャではまだZほどに充実していないリプロパーツへの展望もあるようだ。

「コンロッドやクラッチハウジング、それからアップデート仕様のピストンは手を付けたいですね。ミッションもかな。それでニューTYPE-Rが成り立って、エンジンのオーバーホールやレストアにも使えると、なおいいでしょう」

車両の全体像としてはニューTYPE-Rが基準になるからひと安心。これから出てくるだろうパーツ問題にも、対応の目がある。今後のニンジャでどんな仕様やパーツの人気が高まるかも含め、続けて注目しておきたい。

 

17インチのニンジャとして認識されるRCMスポーツパッケージ・ニューTYPE-R

ACサンクチュアリーのコンプリートカスタム、RCM。うち、GPZ900Rに設定される「RCMスポーツパッケージ・ニューTYPE-R」。そのフレームはドライブチェーンの軌道確保のためピボット下フレームを外に延長、朽ちたフロントカウルマウントステーボス復活+再仕上げ。ステッププレートと一体化したダウンチューブの装着などを行い、17インチニンジャとしての認識もされている。


この車両もニュー倒立E×Mパッケージを選択する。


左右マスターはブレンボRCSにアップグレードされる。


電装は後継機用新品ハーネスからGPZ900Rに必要な分に改修、点火はウオタニSPIIで行う。


ネック後部とピボット(ステップ)をつなぐダウンチューブを装着し、ピボット下左フレームは外に延長。


17インチ用リヤショック/O・Z鍛造ホイールもニューTYPE-R標準の仕様だ。

【協力】

ACサンクチュアリー(SANCTUARY本店) TEL04-7199-9712 〒277-0902千葉県柏市大井554-1 http://www.ac-sanctuary.co.jp

※本企画はHeritage&Legends 2023年4月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。