【SPECIAL MODEL IMPRESSION】AELLA Z900RS
自分のセンサーや感性を信じて愛車との一体感を得る喜び!

今回紹介するのは、カスノモーターサイクル・AELLAブランドのZ900RSデモバイク。2輪ジャーナリスト・小川 勤が実際に走らせると、自分に合ったポジションが大切なことと、小さな効能の積み重ねでマシンの完成度を上げていることを実感。装着される数多くのパーツは丁寧に調律され、その完成度はとても高かったという。そんな同車の詳細を、試乗を通してお届けしよう。

老舗カスノが生み出すZ900RSの新たな顔

1974年に京都で創業したカスノモーターサイクルは、2024年に50周年を迎える。日本だけでなく世界でレース活動をしていた主宰・糟野雅治さんは、欧州で感じた文化やショップの在り方を積極的に取り入れてきた。そして’91年には「AELLA(以下、アエラ)」ブランドを立ち上げる。
糟野さんのほしい物=思い通りにバイクを走らせるためのパーツを作ろうと、同社ではバイク業界としては早い時期からマシニングを導入。高品位、高精度なパーツを生み出して、アエラも唯一無二のブランドへと成長した。
カスノでは長くドゥカティ京都とBMWディーラーのモトラッドカスノを手掛け、アエラもブランド創立当初から輸入バイク向け製品を主力として展開してきたが、最近では国産車向けパーツも展開。中でもZ900RSは人気で、独自のアプローチやアイデアで生まれた「体感できる性能」が評判を呼んでいる。ちなみにブランド名は、開発時に糟野さんが呟いた「あー、えら(京都弁で『あー、しんどい』)」が由来とか。追求心と物作りの深度ゆえの苦楽がブランド名に表れてもいるのだ。

 

走り出した瞬間に分かる、身体にフィットする快感

僕はこれまで、多くのアエラのデモバイクに試乗してきた。市販化されたパーツ装着車はもちろん、プロトタイプにも乗せていただき、その度にカスノモーターサイクルの青木さんとたくさんの話をしてきた。中でもポジションパーツはカスタマーのターゲットで大きく変わるが、アエラが目指すのは日常での操作感。これまでのポジションパーツは、コンパクトかつフィット感が向上するように作られ、今回のZ900RSも同様だった。

「アエラは常に、アジア人の体型に合ったポジション作りを心がけています。それを数値化するのは難しいのですが、レースでなく日常的なスポーツライディングを考えているんです」というのは同社・青木さん。

僕は身長165cmと小柄だが、アエラZ900RSはそんな僕が跨ってもどこにも違和感を感じない。そして走り出した瞬間からまるでもっと小排気量のバイクに乗っている感覚になるのだ。バイクからのプレッシャーがなく、速度に限らず操作感がとても軽い。ステップもハンドルも純正比で数㎝、数度の差だが、ポジションでバイクの印象が大きく変わることの楽しさを教えてくれる。身体が自然とリラックスでき、まるでバイクがライダーに歩み寄ってくるような感覚が気持ちいいのだ。

「今は多くのパーツメーカーがマシニングでパーツを作っています。だからこそ、アエラにしかできない製品は何か? ということを常に意識しています。今回のアルミ削り出しの可変ハンドルはそのひとつ。ステップも全車種共通のデザインにすれば製作は簡単になりますが、アエラはそのバイクに似合うよう、すべてを専用のデザインにしています」と、青木さん。

▲今回の試乗はカスノモーターサイクルの青木伸正さんと長野・清里をツーリングする中で行った。青木さんはオンもオフも走りまくってパーツを開発。同店ではお客さんとバイクの楽しさを共感するためのイベントも多く開催している。

ポジションにとどまらない小さな効能の積み重ね

アエラのパーツというと高価な削り出しパーツに目が行きがちだが、実は手に入れやすい、それでいて走りを変えられる製品も多数ある。それらはアエラのスタッフが走り込む中で製品化した物で、ライダーの違和感を解消する様々な製品として具現化されている。

さて、そんなアエラZ900RSで気持ちよくワインディングを流しながら、ひとつひとつの操作を確認していこう。

ブレーキのタッチ、スロットル開け始めのエンジンの着き……。その感触は極めて自然だ。パーツとしての派手さはないが、例えばアドバンススロットルパイプはスロットル開け始めのエンジンの反応を少しマイルドにしている。

フロントキャリパーを固定するチタンボルトも高い精度で製作されたものだ。座面がボルト本体に対して直角かつ広いため、純正と同じ締結力でもキャリパーを確実に固定。それがブレーキタッチを向上させるという。また、ハンドルバーエンドのチタンカラーはハンドルの微振動を軽減する。こうした効能の積み重ねがバイクの仕上げを左右するのである。


 

セットアップツールの新たなる可能性を知る

スイングアーム後端に装着されたオーバーサスペンションも面白かった。これはカスノモーターサイクルが扱うイタリアのシュプリームテクノロジー製で、筒の中にタングステン(ウエイト)が入っていて、赤いノブを回してプリロードを変えるとタングステンの作動領域が変わるというもの。
調整するとリヤまわりが安定したり軽快になったりする不思議な感覚。その変化は意外にも分かりやすい。実際、MotoGPやMoto2マシンにも使われて、タイヤの摩耗にも影響するのだという。このZ900RSでも色々なセッティングを試したが、僕はプリロード弱めの軽い動きが好みだった。
そんなアエラZ900RSは様々な効能を積み重ね、楽しさと安全を追求して見えるのが印象的だった。同車オーナーにも、自分だけの1台を仕立てるための、必要なパーツ探しを楽しんでほしい。

アルミ削り出し可変ハンドルは7万9750円。STDよりも高さを約20㎜低く、幅も最大40㎜狭くできる。絞り角も変更でき、別売りのスペーサーを使えば高さも細かく設定可能だ。

ハンドルの微振動を軽減する、3㎜厚のハンドルバーエンドチタンカラー2枚セットは4620円〜6820円だ。ブレーキレバーガード&バーエンドスライダーセットは2万6400円。

右がノーマルで、左がアドバンススロットルパイプ(9460円)。独自のワイヤの巻き取り形状に注目。スムーズなエンジンの“着き”に貢献するのだ。

4つのポジションから好みの位置が選べる、Z900RS専用デザインのライディングステップキットは7万6890円~8万300円だ。

シフトシャフトのぐらつきをなくし、ギヤチェンジのタッチを激変させるシフトホルダーは9460円。ノーマルステップにも使用できるものだ。

国内正規代理店のAELLAが販売するオーバーサスペンションは5万1150円。車種専用ステーで、スイングアーム後端に装着する。アルミ製の筒の中(下写真)は、タングステンとスプリングのシンプルな作り。サスセッティングが好きな方には特にお勧めしたい。

内圧コントロールバルブは2万1670円。走行時のクランクケース内の内圧を適正に保ち、エンジンのドン着きやエンブレを軽減するアイテムなのだ。

奥に見える車高調整リンクロッド(1万9360円)は±20㎜の間で調整可。足着き性を向上させ、リンクプレートで下げるよりハンドリングへの影響が出にくい。

エンジンカバーガード3点セットは4万9720円。AELLAブランドでは定番アイテムのフレームスライダーは2万8380円だ。

アールズ・ギアとコラボしたチタンフルエキ(23万4300円〜)。サイレンサーエンド部にはアエラ独自デザインのアルミ削り出しパーツが奢られ、高質感を演出する。

 

【協力】カスノモーターサイクル・AELLA事業部  TEL075-622-0225 〒612-8473京都市伏見区下鳥羽広長町218 https://shop.aella.jp

※本企画はHeritage&Legends 2023年9月号に掲載された記事を再編集したものです。
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