車両やカスタムを知る世代ゆえのノウハウを生かし伝えてニンジャを楽しんでもらう・ブルドッカータゴス
ひとつひとつに裏付けのある手の入れ方に注目
“旅するニンジャ”をテーマのひとつとして、多くのオリジナルパーツを送り出すブルドッカータゴス。この車両にもその主となるもの、具体的には近作のタゴス・ニンジャクルーズスイングアームや同ステム、タゴスニンジャバーZやタゴス・ライディングシートなどが装着されている。自身の愛車もニンジャ(とスポーツスター)で、ショップの25年近い履歴と、自身の愛車歴の中で、じつにいろいろなニンジャを見てきた田子さんにその内容を軸にして聞いてみよう。
▲2022年に開店25周年を迎えたブルドッカータゴス。代表の田子敏幸さんはニンジャ乗りで、多くの流行や手法の中から長く楽しく走れる車両やパーツの製作、整備を行う。
「スイングアームは日の字断面の角アルミで、ノーマルより20%くらい軽くなります。オリジナルで用意したのは、私の好みで、リヤキャリパーをダイレクトマウントにしたかったからです。
このスイングアームでは、ホイールは社外のZZR1100D用6.00-17インチ適合にしています。それに合わせて、フロントはゼファー1100用の社外3.50-17インチを装着するようにしています。このパッケージはお勧めで、当店では多いんです」
▲BULL DOCKER TAGOS GPZ900R。純正A6パターンをベースにしたニンジャ。タゴス・ニンジャクルーズステムや同スイングアームにシートで17インチでタイヤが選べて楽しく走れる仕様。詳細はこちらのグドルキページをチェック!
そのために前後ホイールはアルミ鍛造のゲイルスピードTYPE-Eを選択。ただ、リヤタイヤは180/55サイズを履いている。6インチ幅だと190や200を選びそうなところだが……。
「200幅も入りますし、太いのが好きという方はお好みで。ですがニンジャの場合、190以上だとリヤフェンダーとの干渉が出るんです。それと180なら軽快感もキープできるので、6インチ幅でも180がいいと勧めてます。
ニンジャノーマルだと初期で130、入っても150くらいまでで、この車両のようにニンジャらしい雰囲気を持った車両ならバランスの意味でも180です」
元々のバランスにも配慮してアップデート
なるほどと頷ける選択。こんな選択はフロントまわりなど、他のパートの構成にも込められる。
▲上で紹介したBULL DOCKER TAGOS GPZ900Rの逆側。ホイールはアルミ鍛造で3.50-17/6.00-17サイズ、リヤタイヤはあえて180幅を選んで軽快性も高めつつ干渉を抑えるなど、よく練り込まれたパッケージとなっている点にも注目したい。
「ゼファー1100用フロントホイールにするのは、アクスルシャフト径がφ17mmと2mmですが大径化できて、ベアリングも大きくなるので、剛性が上がる。ハイグリップタイヤからの入力を安定して受け止めてくれるようになります。ステムも削り出しで同じような効果が得られます
このステムはA7~ノーマルのφ41mmフロントフォーク適合で作っています。それでJB-KYBフォークやノーマルのリセッティングで行ったりしています。ここは好みで、φ43mmでもいいし、そんなオーダーもあります。当店のステムだとフォークピッチは純正に同じ200mmで、フェンダーなどもそのまま使えるという具合に、比較的簡単に換装できる。ゼファーホイールを使う時もメーターギヤなどが使えます。オフセットは前後17インチに適した35mm(純正40mm)にしています」
さらにハンドルバーはA7~のφ41mmフォーク適合の純正ライクなセパレートアップ。ラジアルマウントマスターシリンダーを付けてもカウルに干渉せず、かつ車両を扱いやすい絶妙な手前ポジション。
この車両について言えば、こうしたパーツ群は、現オーナーが入手してから換装されたものだという。車両自体はタゴスのお客さんから譲り受けたもののため、同店で継続してサポートを行い、このように必要な箇所を換え、今ならではのスタイルを作り込んでいる。現オーナーはほかにもZX-14やハヤブサ、ニンジャH2などの車両も所有する中で、ニンジャの使い切れる感を楽しめているという。この感覚にも注目したい。
もう1台の車両は、純正フルカウル仕様で純正に準じた2本出しマフラーなどを持っていて、今の純正回帰的なトレンドとも言える。その中にタゴス流がブレンドされたような作り込みが見える。
▲もう一台のBULL DOCKER TAGOS GPZ900R。純正フルカウルやリペイントでノーマルの雰囲気を生かしながら、足まわりをはじめとして性能や昨日の底上げを図り、これからも長く楽しめるように作り込まれたニンジャ。鍛造ホイールやステム/ハンドルなどの仕様はまさにこれからのためで、安心感も大きく高められているのも特徴と言える。詳細はこちらのグドルキページでチェック!
「この車両は新車から乗ってられるのですが、大破したのをきっかけにフレームをA13から規制前のA12にして、外装は10年くらい前に純正パターンでリペイント。エンジンもそれと同じ頃に、“ノーマル908ccでどこまで行けるか”をテーマに中川さん(TGN)で組んだもの。その後のメンテナンスは当店でやっています」
こちらもステム/ハンドル/シートは先の車両と同じく、タゴスオリジナル。リヤホイールに関しては4.50幅を選んでいる。
「オーナーさんは17/18インチのダイマグ3本スポークホイールを持っているということで履き替えを検討されましたが、さすがに時が経っているので、今のアルミ鍛造を勧めました。前後17インチにすることでタイヤが選べますし、ノーマルスイングアームで160サイズが履ける。このオーナーさんも大型バイクを複数台持っているのですが、軽快で楽しめるとよく乗ってもらってます」
2本出しマフラーはヨーロッパで純正リプレイス的に使われたものを装着。この車両ではフルエキで、スリップオンもある。これは心強い。また純正センターカウルの後ろにはケイファクトリー製スライダーが付くが、装着用型紙もタゴスで作ったと言うから、今後同様の仕様もできる。ラジエーターも前後に厚い3層構造品を用意しているから、対応もたやすい。
▲装着が当然のようになったスライダーはケイファクトリー製を使い、センターカウルに最小限のカット加工を加える型紙も使い、きれいに処理している。冷却系についてはオリジナルの3層ラジエーターを用意し、純正カウルに収めつつ不安をなくす。
純正に同じφ300mm径のフロントブレーキディスクをタゴスオリジナルで用意するのも、ニンジャに合うルックスバランスを作りたいという気持ちから。
「φ320mmも、今の標準的なφ310mmもサンスターさんのラインナップにあって、当店でもφ320mmでピンをオリジナルにしたものを販売しています。
その上で、ニンジャにはφ300mmがいいという方のために、純正径で作ったものを販売しているんです。今ならキャリパーもパッドも、もちろんディスク側も進化していますから、この径でも制動力も十分確保できています」
ほかにも、今回の2台で異なるように、純正ミラーと社外ミラーのサイズ違いでフロントのルックスバランスが変わるからと、社外ミラー装着時にバランスが取れるようなスモールウインカーも販売。2本出しマフラーにも干渉せずに済む、少し長めのセンタースタンドなどの構想もある。
長く見てきたからこそ分かる内容を伝えていく
田子さんはこうして柔軟かつスマートに車両への提案を行ってくれる。ただニンジャでは、やはりベースコンディションを良くすることを前提にしてほしいと言う。
「オイル漏れがある車両や、水回り、ウォーターパイプやOリングが悪くなって漏れることで煙を噴くような車両も多く見られます。イグナイターやプラグコード/キャップの劣化から不調になることもあるので、その辺はちゃんと交換したい。
エンジンも、まだそんなに距離が行っていないのに“もうオーバーホールしないといけません”ということを言われたという話も聞きますが、タペット調整をちゃんとする、いいオイルを定期的に交換する。それで10万kmは乗れます。
▲最近ニンジャ用で人気というK&Pオイルフィルター(左。右は純正)。ステンレスメッシュで流路抵抗を大幅に減らし、交換不要。メンテ時にタゴスで清掃してくれる点も安心だ。
中には“ニンジャだからこんなものです”でそのままという販売店もあったりするようですが、販売当時はれっきとした新車、新型車として販売されていたものです。車種なりの癖や味はあっても、おかしいのではなくて、その車両が整備されていないということだと思います。今きちんと仕立ててやれば、長く楽しめるんですよ。
最近では親子で来られて息子さんがニンジャとか、現役時代を知らない世代だけど格好いいからとかいう理由で乗られる方も増えています。そんな若い人には、自分の年齢よりも年上のバイクだけど、楽しんでほしいなと思います」
もう40年近いニンジャの歴史を現役時代から見てきた田子さん。どんな組み合わせや進化があったかも知った上で、今の内容も取り込んでくれる。今回の車両はその例だが、ニンジャというバイクに新たな魅力を感じ取れるはずだ。ブルドッカータゴスは、その鍵となるショップなのだ。
使い勝手の良さやバランスにも配慮したタゴス・ニンジャパーツ群
タゴスのGPZ900R用パーツはまず走ること、そのために使い勝手のよいことを前提とした上で、ルックスにも、細かい使い勝手にも配慮した仕様が盛り込まれる。最新作はクルーズ・スイングアーム。ほかにも注目したい仕様や製品があるから紹介しておこう。
TAGOSニンジャ・クルーズステムキットフルセット18万2600円(TAGOSバー付き)、16万2800円(ハンドルバーなし)/GPZ900Rニンジャの前後17インチホイール仕様対応のステムキット。タゴス・ニンジャバーZとのセットが標準で、ハンドルバーなし仕様は既に同ハンドルを持っている人用。A7~適合でφ41mmフロントフォーク/200mmピッチで純正フォーク/フェンダー/アクスルシャフト、ロック可。剛性が高まり路面の感触が分かりやすくなる。トップブリッジ左のタゴスボールマーク部は外すとRAMマウントボール用8mmネジが切られ、利便性も高める。
TAGOSニンジャ・クルーズスイングアーム/70×35mm日の字断面材によるスイングアームで、リジッドマウント仕様のリヤキャリパーサポート付属。本体重量は約3.5kgでノーマルから約20%軽量。ノーマルホイールは不可、推奨ホイールはゲイルスピードまたはラヴォランテのZZR1100D用6.00-17サイズ。バフ仕上げ。
※編注:TAGOSニンジャ・クルーズスイングアームは2023年7月6日現在、販売を休止中。TAGOSでは代替製品として“ケイファクトリー製スイングアームType4(各部は同寸・同形状だがキャリパーマウント固定はトルクロッド仕様となる。23万1000円)”を勧めている。
GPZ900R用サイドスタンドTAGOS+K/経年で緩みがちなサイドスタンドにもひと工夫。マウント部にスペーサーを入れ、スタンドの削れ→緩み→締まらないを防ぐ。長さも30mm伸ばし、バーも最適位置にしている。
※編注:GPZ900R用サイドスタンドTAGOS+Kは2023年7月6日現在、販売を休止中。TAGOSでは代替製品として“ケイファクトリー製GPZ900R用スチール製サイドスタンド(1万7050円)”を勧めている。ロゴプレートのみ、ケイファクトリー・ブランドのそれに代わる以外はすべて同仕様の製品だ。
純正のφ300mmでサンスターに依頼したオリジナルのフロントブレーキディスクも用意。「SUNSTAR×TAGOS プレミアムレーシングディスクローター φ300」がそれで、キャリパーやパッドの進化もあり、純正径でも必要な制動力やタッチを持つ。現在はインナーローターがブラックの「SUNSTAR×TAGOS プレミアムレーシングディスクローター φ300ブラック」が9万2400円で販売中だ。
【協力】ブルドッカータゴス TEL0270-75-4772 〒372-0825群馬県伊勢崎市戸谷塚町42-1 https://www.bd-tagos.net/
※本企画はHeritage&Legends 2022年5月号に掲載された記事を再編集したものです。
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