独自の表面処理R-Shot#Mをチューニングとも組み合わせてニンジャ各車の状態を維持する・トレーディングガレージ ナカガワ

もう30年近くニンジャ系チューニングを手がけ、多くのメニューやパーツを作り上げてきたTGナカガワ。少し前から手がけてきたオリジナルの表面処理、R-Shotは特許技術のR-Shot#Mという仕様を加えることでパーツの寿命を飛躍的に伸ばし、同時にチューニングの効果はより生きるものとなった。車両の最新例や、耐久性の実証実験から、今後に注目してみたい。

信頼するショップと長い付き合いで進化

GPZ900Rニンジャは1984年発売のモデル。だが、カワサキ自身が歴代フラッグシップにその発展型エンジンを積んだこと、スポーツツアラーやネイキッド用にリファインして使ったこと、さらにFIとの組み合わせによって排出ガス規制にも適合させ、2016年のZRX1200DAEGにまで現役で使われたこと。

これらによって排気量の拡大はもとより、バルブ駆動(2バルブ1ロッカー/1バルブ1ロッカー)やミッションにまで、さまざまな互換性を生かしたチューニングが現れた。エンジンそのものも換装できるといった具合にそれは寛容で、時代ごとに現れた純正仕様の弱点対策パーツも使える。

それらを駆使しながら、このニンジャ系エンジンのスープアップを行い、さらに先を目指すというショップも多くある。トレーディングガレージナカガワ(以下TGN)はその筆頭とも言える存在。そして下の車両は、TGNによる最新仕様のニンジャ系エンジンチューニングを受け続けているものだ。

▲トレーディングガレージナカガワの代表、中川和彦さん。ニンジャを軸にエンジンチューニングは熱効率や気筒均質化、寸法の統一などさまざまな実績を積んできた。R-Shotを加えてニンジャエンジンの可能性も広げている。

「オーナーの尾野さんは関東の方ですが、もう17~18年前、まだそんなに当社のチューニングが知られていない頃に静岡の当店に来店なさって、そこからずっと付き合っていただいているんです。もちろん車両はニンジャです。

972cc仕様に始まって、TGNステージメニューが確立してからの1108cc。7年ほど前に現在のZRX1100エンジンベース+フルメニューの1137ccパッケージにしていただきました。オイルバイパスやダイレクトイグニッション、HIRなど当社で開発してきたニンジャ系パーツも全部取り入れてくださってます」

▲20年近いTGナカガワとの付き合いの中で同店のチューニングメニューをきっちりと取り込みつつアップデートしてきたニンジャ。シャシーは17インチ最適化、外装も何度かのフルペイントで印象を変えるが、速くスムーズで軽いという使い勝手は変わらない。今後さらにR-shotなどで進化を続ける予定もある。車両の詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページもチェック!

こう説明してくれるTGN・中川さん。まだ続きがある。

「そのエンジン、今積まれているものは、そんなフルメニュー仕様ということもあって、TOT用ハーキュリーズ用に1度お借りしているんです。それで59秒台を出しまして、当社としては内部パーツにかかった負担を確認できたんですね。加工や、表面処理の耐久性など。

もちろん、その時にオーバーホールして同時に外観リメイクもしてお返ししています。その後も好調とのことで、年間で優に1万kmはツーリングだ何だと、走っておられます。

車体の方は前後17インチの完成形としてほぼ仕上がっている状態。シートも20年前に開発して定番になった当社オリジナルをずっと使ってくださってますし、オールインワンパネルのメーターなどインターフェイスも同様で、私としてもお勧め。尾野さんも気に入っていただいてますし、目標にしてもらえる仕様と思います」

TGNメニューを次々と使いつつ、その都度気に入るから、長く乗れる。確かに目標のひとつとなるニンジャだと言えそうだ。

 

オリジナル表面処理でさらに先を狙える

この車両はここで完成形と言えるはずだが、中川さんは続ける。

「エンジンに関して、この後の計画ももう決まっていて、スペック変更を行うんです。また、内部パーツのほぼすべてに当社のR-Shot処理を施す予定です」

▲R-ShotはTGNオリジナルの表面処理。さまざまな樹脂を配合したメディア(粒子)を対象物(アルミやチタン、鉄など)に高圧照射することで、対象物の表面を滑らかにする処理だ。対象物表面には超微細な凹凸(くぼみ)ができ、表面に生まれる抵抗が減るし、オイル保持性も高まる。対象物の表面に残留応力を付与でき、表面硬度も高められる。さらに寸法を維持したままでキズを消せるなどのメリットがある。

このR-Shotは、TGNオリジナルの表面処理。これまでにもH&Lでは何度か説明してきたが、さまざまな樹脂を配合したメディア(粒子。TGNでは滑走剤と表現する)を対象物(金属)に高圧照射することで、対象物の表面を滑らかにする処理だ。

これによって、対象物表面に超微細な凹凸(くぼみ)ができ、表面に生まれる抵抗が減る。ピストンスカートのようにオイル溜まりとなる条痕が刻んであれば、その形を維持したままにオイル保持性を高めることができるのも特徴だ。

さらに照射時に対象物の表面に残留応力を付与できるため、表面硬度も高められるし、寸法を維持したままでキズを消せるというメリットもある。

▲R-Shotは新品はもちろん、中古品(写真はその例で、同じエンジンから取り出したピストンの片方に施工)にも施工し、劣化を極度に抑え、延命化できる。

中川さんが長らく手作業やツールによって行ってきた鏡面加工などで得ていた効果を、より短時間で多くのパーツに施せるようになるメリットがあった。また、使用可能な寸法であればピストンなどパーツの再使用も可能(しかも従来より飛躍的に安心して、長寿命で)にできた。

後継機種も含めた純正パーツの廃番化に対応するための手法がひとつ増え、延命化に貢献できる。ピストンもミッションもカムも。サーキットもツーリングも街乗りも、多くのテストも経て実用化できたから、ユーザーに勧めていける。

「手前味噌のように聞こえるでしょうけど、R-Shotはやるとやらないで全く違います。同じスペックだったとしても、長く乗っているオーナーさんも“違うエンジンにした?”と思うようなスムーズな仕上がりになるんです。ニンジャだけでなく、空冷4発にも使っていただいてます。耐久レースや4輪のハイエンドクラスレースでも結果が出ています。

それも知っていただいて尾野さんのエンジンに新たに施すのですが、この先10年以上は楽しんでいけると思います」

 

ニンジャの可能性をさらに広げるパーツも

R-Shotの多くのメリットは具体的にエンジンパーツ群を見れば一目瞭然だ。ピストンは、’21年5月のTOTハーキュリーズクラスを走り、59秒台でラップした#11堀江選手の車両で使われたものでここでは、モリブデンをメディアに融合させることで潤滑性をより高めたR-Shot#Mが施された。下で紹介する他のパーツも同じだ。

▲TOTハーキュリーズクラスで59秒台ラップを2レースこなしたピストンのダメージはほぼなし。そこにはR-Shot#Mが施されタイム短縮に貢献するとともに、このように保護性能も実証した。トップ周囲にもリセス部にも当たりや欠け、その予兆もまったく見られず、ピストンスカートの条痕もそのまま残っている。リング(非施工)もするする動く。

ピストンでは、スカートの条痕もそのまま、上に施されたR-Shot#Mのグレー(モリブデン層)も残される。短時間ではあっても超高負荷が繰り返しかけられるから多少の減りも考えられそうだが、それはない。

ピストンピンもシフトフォークも、バルブやバルブガイド、カムホルダーも同様だ。ミッションも手で回して違いが明確に分かるほどになる。実際の運転時は大きな力がかかるから印象は違うだろうが、多くのエンジンを見てきた中川さんもこの結果には安心したとのことだ。

この結果を踏まえて、TGNではGPZ900R/系列エンジン用に、R-Shot#M処理済みのメタルセットを製作、販売することにした。クランクとコンロッドに使う分で、これを使うことでエンジンのスムーズ化が図れる。クランクのジャーナルラッピングと併用すれば、さらに効果は高まる。

ヨシムラジャパンからGPZ900R用カムシャフトがリリースされた、TGナカガワは販売窓口になった。

パーツに関してはもうひとつトピックがある。総削り出しで中空、DLC(ダイヤモンドライクコーティング)を施したヨシムラST-1Mカムシャフト。TGNがその販売窓口になったのだ。

開発・製造にあたってはTGNも協力し、これもニンジャエンジンに組み込んだ上でさまざまなシチュエーションで走行し、任意のタイミングで開けてカムの状態を確認。1万km以上を走る中でも大丈夫というデータも取り、販売に至ったものだ。これも注目したい。

これらのニンジャ用新パーツ、そしてR-Shotは今までTGNで展開してきたエンジンメニューとも、当然のように組み合わせて使える。920や972、バランスがいいと定評だった1050に、ハイパワーの1108や1137といった排気量。4気筒の燃焼室やピストン、コンロッドほかの均質化でスムーズかつトルクフル、長寿化や効率化を目指してきたチューニングに加えれば、ニンジャエンジンに先が見える。冒頭の車両は、その好例になりそうだ。

 

金属表面を高精度で均質&平滑化し硬度も高めるR-Shot#M加工は耐久性を実証し応用範囲も拡大

ツクバサーキットで行われるカスタムバイクのレース、TOT=テイスト・オブ・ツクバ。その中で改造無制限とも言えるハーキュリーズクラスで走り、59秒のラップタイムをマークしたTGNエンジンにはR-Shot#Mが施され、タイム短縮に貢献するとともに、このように保護性能も実証した。トップ周囲にもリセス部にも当たりや欠け、その予兆もまったく見られず、ピストンスカートの条痕もそのまま残っている。リング(非施工)もするする動く。

 

バルブはフェイスもステムも問題なく使える

R-Shot(元になる#Dも、モリブデン系の#Mも)はアルミやチタン、鉄など多くの金属やめっき表面に施工できる。バルブも使用後でこの通りで、フェイスも裏面も、ステムも軸上にも、摩耗や擦れ傷は見られない。寸法も維持され、きちんと潤滑もされた。

 

クランクメタル&カムホルダーもダメージ少


R-Shot#Mが施された、クランクケースとクランクジャーナルの間に入り微細油膜を挟んで軸受けとなるクランクメタル


カムシャフトの軸受けとなるカムホルダーもR-Shot#Mを施工され油膜は保持され、ダメージはほぼない


クランクはジャーナルを平滑化するラッピングが先行していたが、R-Shotと併用すれば効果はさらに上がる。

 

シフトフォーク&シフトドラムは操作スムーズでダメージ極小


シフトドラムは純正新品の黒ずんだ色よりも滑らかで明るくなっているのが分かる。シフトフォークはシャフトを横に動き、ドラムの溝の上を動くが、大変スムーズ。シフトフォーク爪には当たりが見られるが、これは使った証拠。ダメージは極小だ。

 

ミッション&シャフトにも施工してスムーズ化、傷もなし


ミッションは各ギヤとシャフトにすべてR-Shot#Mを施す。ギヤはシャフトをスライドして噛み合うがこれが非常にスムーズ化し、回転も同様にスムーズ化して、シフトフィールも良好に。開けてもこのように、ギヤの各歯面にもドッグにもまったくダメージは見られない。

 

新作パーツもまだまだ登場

総削り出し+DLC処理仕様のヨシムラST-1Mカムの販売窓口に


ヨシムラジャパンからGPZ900R用カムシャフトがリリースされた。TGNは新たにその販売窓口となる。製品は「ヨシムラ GPZ900R ST-1M DLCカムシャフト」(24万2000円)。プロフィールはいわゆるヨシムラ ST-1同等のスペックで、素材と製法を一新。中空タイプで、耐摩耗性や耐熱・焼き付き性に優れたDLC(ダイヤモンドライクコーティング)処理もされる。

 

R-Shot#M処理済みのクランクメタルもGPZ-R系に用意しリリース開始!


R-shotはTGNでの作業依頼ができるが、TGNでは広くその利点を使ってもらえるように、重要パートのクランクメタルにR-Shot#Mを施した「R-Shot#M 処理済みクランクメタルSET」(4万7300円)を発売。全18枚のセットで写真下の左はコンロッド(大端)用、右はクランクジャーナル用

 

定評のコンプリートエンジンにもR-Shotは追加できる


TGNで展開するエンジンコンプリートメニューfor GPZ900R。920ccでオーバーホールよりひとつ上を目指したSTAGE-1、高出力と耐久性を両立した972ccのSTAGE-2、純正55mmストロークをベースにTGN#1050キットを組み合わせて1050ccとした定評のSTAGE-3。さらにZRX1100クランク/コンロッド+DAEG6速ミッションの1108cc=STAGE-4があるが、これらにもR-Shotを追加オーダーすればさらにスムーズ、ロングライフが楽しめる。

【協力】トレーディングガレージ ナカガワ TEL0545-71-3032 〒419-0205静岡県富士市天間1928-7 http://www.tg-nakagawa.co.jp

※本企画はHeritage&Legends 2022年5月号に掲載された記事を再編集したものです。
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