各部チェックから磨き上げまで! 愛車整備の10のポイント【前編】

バイクの季節がやってきても、長い間、お休みしていた愛車で快適に走り出すには、やはり整備が大切。そこで今回と次回の2回に分けて、愛車整備に大切な10のポイントをご紹介。前編では1.タイヤ、2.ブレーキまわり、3.サスペンション、4.ドライブチェーン、5.電気系&バッテリーを整備するので、ぜひ参考に!

長く動かさずに積もる汚れや疲れを除こう(1.タイヤ、2.ブレーキまわり)

「ちょっと長い間動かしていなかったバイクを動かすのって、じつは中古車両を整備するのと同じなんですよ」。レッドモーターの中村さんは言う。同店では年式もメーカーも機種も、もう少し加えるならば、履歴や動かしていない時間も異なるような、多くの中古車両を仕入れ、整備して送り出してきた。

▶︎右側がレッドモーター代表の中村圭志さん、左がメカニックの鹿島さん。中古バイクの整備ノウハウが豊富な中村さんは、ドラッグレースシリーズ・JD-STERの主催者として年間数戦のレースも開催している。

だから今回用意してくれたGPZ900Rを整備例にするのは、そのまま、冬の間休ませていたバイクを動かそうとする例になる。

先に手を付けたのは、外から見える部分の確認と清掃、調整だ。洗車してしまうと何があったか分かりにくい箇所もあるから、現状を見ることを優先した形だ。

▶︎対象にしたのはGPZ900Rニンジャ。レッドモーターのお客さんが所有し、各部カスタム化を行った後に乗り換えで同店の中古在庫車両となったもの。しばらく動かしていなかった車両を起こすという当企画の趣旨に合ったので作業を進めた。

まずはタイヤまわり。トレッド面、サイドウォールを一周ぐるっと見て、裂けや傷がないか確認。ウエアインジケーター(スリップサイン)を確認し、摩耗が進んでいたらタイヤは交換しよう。そうでない場合もタイヤ溝の残り、そして製造日も確認して、空気圧を見て、適正値に補充しておく。

タイヤに続くのは、ブレーキまわりだ。ディスクに変な傷がないか見て、キャリパーを外す。自信がないなら、無理に外さずできるチェックをしておいて、プロショップに依頼するのが確実だ。

中村さんは手際よくキャリパーを外し、パッドの減りを確認して、キャリパーやパッドピンにこびりついたダストを落とす。普段からきれいにしているなら水洗いでOK。ここは程度によって方法を変えて清掃する。

 

1.タイヤ/トレッドの減りやサイドウォールのヒビ、空気圧は最重要項目


走らないでいると劣化が進みやすいタイヤ。フロント/リヤともトレッド面を一周ぐるっと見て、裂けや傷がないか確認する。


その次は、サイドウォールを同じように前後タイヤ、各左右で見ていく。写真のように明らかなひびがあるようなら即交換だ。


トレッドのグルーブ(溝)の中にある突起=ウエアインジケーター(スリップサイン)を確認する。トレッド摩耗が進むと溝との差がなくなるので、差が少なければ交換時期。


一緒にタイヤ製造日も確認。4桁の数字でここでは「2720」。2020年の27週に生産されたと分かる。消費目安は製造から2年。


確認が済んだあとは空気圧を測って補充だ。

 

2.ブレーキまわり/前後とも汚れを落としてパッド残量を確認しパッドピンやピストンをきれいにしていく

2-1.ブレーキキャリパーを外して内側を確認


キャリパーボルトを緩めてブレーキキャリパーを外す。


以後の作業ではブレーキホースやフィッティングに曲げなどの無理な力がかからないように気をつける。


外したらキャリパー内側を見よう。

 

2-2.ブレーキパッドの残量を確認する


ブレーキパッドの残量を確認。写真右側のパッドはギリギリ溝があり、左側はほぼない。


これは要交換。次いでバックプレートを外す。


パッドピンやピストンにはブレーキダストがこびりついている。


パッドを保持するパッドピンも外す。

 

2-3.ピストンに溜まった汚れはブラシで落とす


キャリパー内側やピストンまわりの汚れもこのレベルで溜まっていたら真鍮ブラシで落とす。この時にブレーキレバーは絶対握らないように。ピストンが出て大けがをするからだ。パーツクリーナーも併用する。


ここでの作業に使った道具。左から真鍮ブラシ、シリコングリス(ブレーキグリス)、プライヤ(パッドピンの割ピンと、本体を掴んだ)。ダストの程度が軽ければ樹脂ブラシ水洗いでも十分だ。

 

2-4.パッドピンを外して清掃する


パッドピンはパッドがスライドする箇所でブレーキダストがこびりつきやすく、そうなるとキャリパーピストンの動きが悪くなるので、真鍮ブラシでこすって汚れを落とす。


このくらいきれいならウエス拭きでいい。


シリコングリス(ブレーキグリス)を塗布する。


薄く延ばして余ったら拭き取ろう。

 

2-5.ブレーキフルードも確認、リヤも同様に


リザーバータンクのブレーキフルード残量も確認。パッドが減っている場合は減りに合わせてリザーバー内のフルードがブレーキライン内に移動する。今回は限界まで減っていたから、ロアレベルを割っている。パッドを換えた上で補充する。濁っていないかも確認しよう。リヤも同様にやる。

 

ちょっと動かすその前に確認事項の多い部分(3.サスペンション、4.ドライブチェーン、5.電気系&バッテリー)

中村さんは次々と作業を続けていく。サスペンションまわりだ。

「フロントフォークにオイル漏れがあったり、フォークシールにひびがあったり。冬の時期はインナーチューブに点サビが出やすいですから、しっかり見つけて対処するのがいいです。その辺を見た上で、押したりするといいでしょう。リヤサスもリンクやショックマウントの油切れなどがありますから、確認して軽く注油します」

これも普段動かしている車両ならあまり気にならず、押して手応えを確認して……という部分だろう。しばらく動かしていないのなら、まず静止での確認ということだ。

作業はドライブチェーンに続く。「ここは摩耗の確認もですが、注油ですよね。エンジンはかけず静止でチェーンを拭いて、Oリング、そしてローラーを狙って注油。まわりに付いたらすぐクリーナーで拭きます」

ここまでで足まわりの作業はひと通りとなる。続いて本体。シートを外して、バッテリーを見てみる。

中村さんは電圧計も取り出して端子に付け、エンジンをかける。

「かけてない状態ではバッテリーの状態が分かります。13Vはほしいところ。足りなければ充電を。エンジンをかけて分かるのは、充電系の良否なんです。アイドリングから3000rpmで変化が出るかも見ます。12.5~13Vならいいでしょう。変化がないときはレギュレーターか発電機に異常ありですから、そっちを見ましょう」

 

3.サスペンション/フロント/リヤとも作動を確認しオイル漏れに注意して注油を


普段から動かしている車両なら極薄の油膜もあってあまり心配ない。


動かさない期間が長い場合はフォークシールまわりをよく見よう。明らかに油が垂れて付いている場合はオイル漏れしているから修理になる。

 

冬と梅雨時期はインナーチューブの点サビが出やすいシーズン。フォークシールの劣化もチェックポイント


梅雨時期は想像がつくけれど、冬などは乾燥しているので大丈夫と思いがちだが、気温が低く結露しやすいのだ。だからフロントフォークのインナーチューブにも点サビが出やすい時期ということは忘れずに。極小なら拭き取っておく。大きくなるとシールにも影響が出るので注意。そのフォークブーツやシールもヒビに注意。もちろんオイル漏れの遠因になる。


サスペンションは内部と言うよりも先に外部で分かることを静止状態で確認したい。フロントフォークはインナーチューブの表面やこれがアウターチューブに入る部分のシールの状態。リヤサスはリンク式ならばリンク、ツインショックもショックマウント部の、清掃と注油をしよう。

 

4.ドライブチェーン/たるみや張り過ぎがなくても清掃と注油は定期必須

4-1.スプレーはシール部分やローラーを狙う


ドライブチェーンにチェーンクリーナーを吹きかけて汚れを浮かし、拭き取る。


チェーンルーブで注油。スプレータイプの場合はノズルをローラーに向けて吹く。


サイドプレートの内側にも向けて吹く。


チェーン両側に入っている黒い部分=Oリングを狙って吹く。余りやはみ出た分は拭き取る。この作業は必ずバイクを静止させ、エンジンはかけないで行う。

 

4-2.滴下タイプもシール部分とプレートに少量


滴下タイプでも狙いは同じ。中村さんが事務局となるJD-STERの会場でも実演を行うレッドサービスが扱うチェーンメンテナンスキットの場合。A液(円陣屋至高C.P.O[R])をシール部にわずかずつ垂らす。


次いでB液(SP1GA3)を、ローラーとサイドプレート内側の極小隙間に滴下し、1周させて浸透を待つ。余りは軽く拭き取る。

 

5.電気系&バッテリー/鉛タイプバッテリーは液量を見て補充、電圧計で充電系の作動も確認しておく

5-1.テスターにつないでエンジンをかければ充電系の良否も分かる


電圧テスターを用意し、赤をプラス端子、黒をマイナス端子に当てて電圧を測定。12.12Vはギリギリ合格。12.5~13Vはほしいところで、充電等で対処する。


中村さんはテスターをバッテリーに当てたままエンジンをかけ、電圧の変化を見る。アイドリングから3000rpmで電圧の変化があれば正常、なければレギュレーターや発電機の異常が疑われる。

 

5-2.比較的アクセスしやすいバッテリー


GPZ900Rではシートを外すと前方、燃料タンク直後にバッテリーがある。純正は6セル12V、Pb(鉛)タイプ。端子の緩みも確認しておこう。内部の液は衣服や皮膚に付かないように注意。

 

5-3.鉛タイプは各セルの液量を揃えておく


バッテリーの端子をドライバーで緩めて黒(マイナス)から外す。赤(プラス)も外しバッテリーを取り出す。


6つのセルのどれも液量がロアレベルを切り、左端はかなり減っている。補水して適正レベルにする。

 

5-4.補水は比重計兼スポイトで


セルキャップをプライヤで掴んで外す。バッテリー補充液を用意し、各セルに足す。


比重計がスポイト形状なのでこれを使うとやりやすい。指定レベルになったら充電しキャップを付ける。MFバッテリーの場合は補水不要だから充電すればいい。

 

5-5.点火コイルや点火ユニットも合わせて確認


点火コイル(上。GPZ900Rではフレーム前側、燃料タンク下)や点火ユニット(下)も端子/コネクタの外れや汚れを合わせてチェック。拭いておくのもいい。


バッテリーケースも拭いておこう。液だれがある場合は注意。

 

【協力】レッドモーター TEL03-3915-0953 〒114-0024東京都北区西ケ原4-6-2 http://redmotor.com

※本企画はHeritage&Legends 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。
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