2ストロークエンジン。軽量&シンプル&高効率な特性を今後も楽しむために4つの基本形式を振り返る

部品点数が少なくて済むことから来るコンパクトさと軽さ、シンプルさ。4ストロークのクランクシャフト2回転ごとの半分、1回転ごとに燃焼行程があることから来る高効率。一部競技車用を除き、21世紀の今では新型が手に入らなくなった2ストロークエンジン搭載車だが、多くの再生・延命手法が現れ、さらに新たな考えによって、エンジン=内燃機関の行く先にも次の展開が起こるきっかけを作りそうだ。そのためには、現存する2ストロークエンジンを今どう扱っていくかが、カギになる。まずは2ストロークエンジンの4つの基本形式を確認してみよう。

2ストロークエンジン、4つの形式

クランク毎回転ごとに燃焼(爆発)行程がある2ストロークエンジンは2回転ごとの燃焼行程(吸入→圧縮で1回転、続く爆発→排気で1回転)となる4ストロークのような吸排気バルブやカムシャフト等を持たず、シリンダーヘッドはふたの役目のみを持つ。吸気や排気のタイミングはシリンダーに開けられた穴=ポートとピストン(に設けた穴等の場合もある)に因る。基本の形式は以下の4タイプだ。

 

【ピストンバルブ】


最も簡素な形式。キャブレターからの混合気はシリンダーに設けられた吸気ポートからエンジンに入り、クランクケース内が負圧時にピストンスカート下、もしくはピストン後ろの穴を通じてピストン下からケースへ入る。吸気タイミングをピストンが制御する。

 

【ピストンリードバルブ】


吸気抵抗は少ないが低回転時の吹き返しが多いというピストンバルブ式の短所を改良するため、吸気ポートが負圧になると開くワンウェイの弁(穴の空いた山型ベースの両側に薄い板を取り付ける)=リードバルブを加えた形式だ。

 

【ロータリーディスクバルブ】

クランクシャフト端にクランクと等速回転するディスクを加え、キャブレターはクランクケース横に置き、吸気ポートはケース横。ここから負圧で流入しようとする混合気を、ディスクに設けた吸気穴で制御する。抵抗は少ないがレイアウトに制限がある。

 

【クランクケースリードバルブ】


クランクケース内に起きる負圧によって、混合気をシリンダーではなくクランクケースに直接導入する形式。ピストンの位置にかかわらずケース内が負圧であれば混合気が引き込めるため、ピストンは主に2次圧縮を受け持つ。

 

RG250Γ(III/1985)のエンジン


この図は1985年(昭和60年)に3代目として発表されたスズキRG250Γ(並列2気筒)のもの。吸入側は略されているが、スズキ独自のパワーリードバルブ(高回転時の吸入に長けたピストンリードバルブと低中速トルクに利点を持つクランクケースリードバルブを組み合わせた形式。キャブレターからの混合気をシリンダーとクランクケースに振り分け、それぞれの吸入口にリードバルブがある)形式。クランクで1次圧縮された混合気が掃気ポートからシリンダー内に入りピストンで2次圧縮されて燃焼、排気される流れは矢印の通り。ここで新装着された排気デバイスSAEC(Suzuki Automatic Exhaust Control)はエンジン回転に応じて排気バルブが回転し低回転ではサブチャンバーへの通路が開いてトルクを増し、高回転では閉じて排気をストレート化してパワーを稼いだ。

 

※本企画はHeritage&Legends 2021年10月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。