人気絶版車購入ガイド・ブルドックZシリーズ編
コンプリート車を作るにもノーマルが第1の選択肢
GT-M(Genuine Tuning Machine)という17インチ・コンプリートカスタムZを手がけるブルドック。生産から40年以上が経つZシリーズの弱点を洗い出し、フレームは修正やリフレッシュ、17インチタイヤに合わせた加工/補強を行う。
エンジンも同様に、劣化した部分や今の目で見て不足した部分を対策し、これからを長く安心して乗れるように再構築。その際には内燃機加工も自社で行うほどだ。新車のような状態で、かつ現代化したZになるわけで、Zを手に入れるならまずGT-Mを選択肢とすべき、とすら言える。
そんなブルドックの代表・和久井さんには今回、GT-Mのベースとなる車両を今から買って用意するならという想定で、中古車両の手に入れ方を聞いてみた。
▲ブルドックの代表、和久井維彦さん。Zを現代的に走らせるGT-Mの製作を行い、Zの弱点を補うパーツ群を開発・製作する経験からのアドバイスをいただいた。
「その場合、ノーマルに近い車両を選ぶことです。それは、ノーマルなら消耗や劣化した部分をまず直せばいいから。カスタムする際も、そこからなら普通に進む。
これがカスタム車の場合には、先に変更された箇所を元に戻さないといけなくて、そこからスタートになる。カスタムパーツが付いていたりすれば一見、お得に見えるんですけど、付いているものが機能していないことが多いし、その手前の段階としてちゃんと付いていないことも多い。そうしたものを正しく戻さないと次に進めません。
エンジンも同様です。何がされているか分からない。しかも開けてみないと分からないですから。やたら大きいバルブが入っていたり、バルブガイドが斜めに入っていたり。カムホルダーもネジ部全部にヘリサートが入っていることもありました。クランクもピンがずれているのにわざわざ溶接してあったり。フレームも、修正もされてないままに補強がガチガチに入ってるようなものも見かけます。カスタム車はベースにするには難しいものが多いんです。
▲ブルドックで豊富に用意する、Zのための対策&各種スペシャルパーツ群(写真はその一部を並べたもの)は、Zを現代的にし、かつ今後を安心して楽しむためのもの。GT-Mに標準的に使われるパーツでもある。
Zは手が入れられるから……ということもあって、そんな車両が多いのかもしれません。そうしたことも含めて、ベースの前提というならノーマルに近い車両がいいと思います。ショート管になっていたりキャブレターが換わっていたりという程度ならいいですが、それ以上は対象にしない。何がされているか分からないということは、最初に言ったように、まず戻すのに手間もお金もかかります。
▲エンジンはボーリングなど内燃機加工も自社で作業しフルオーバーホールする。
ノーマル車として機能するならとりあえず乗って、その後、ゆっくりカスタム化できますし、場合によってはその車両を売って一気にコンプリートを作る資金にもできます。当社ではお任せいただければ車両探しもお手伝いできます。Zはノーマル車両にも価値を求める層が厚いのが特徴でしょう。中古価格も依然、下がらないようですし。
とりあえず中古でカスタム車を買った。調子悪いなあ……と直す、でも直らない……。そんなパターンは一番高く付いてしまいます。それに、そんな車両だとすぐ気に入らなくなって売ってしまうでしょうし、すると次に買って困る人が出てしまう。そんな堂々巡りをなくしたいんです。ですから、GT-Mを作るんです」
▲フレームの加工や補強も自社に備えた定盤と治具を使い、きっちり行われる。電装も一新……と、GT-Mはすべてに管理が行き届いた体制で作られている。
カスタムの中古はあっても、GT-Mの中古を見かけないのには、それぞれのオーナーがGT-Mをしっかり気に入り、手放さないからという理由があった。ただ、今は資金が少し足りないなどの理由で、先に車両を手に入れておきたいなら、和久井さんの説明のようにノーマル車を買う。
どうせ買った後で手を入れるのだからいい、ではなかった。手を入れるにしても、素性が分かって後の作業に無理がないものの方が手間も費用も圧倒的に有利だ。その意味でのノーマル。その上ですべてがリフレッシュされて新車のように楽しめるGT-Mに進める、と考えれば、Zという車両を手に入れる楽しみが、より増してくる。
※本企画はHeritage&Legends 2020年11月号に掲載された記事を再編集したものです。
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