人気絶版車購入ガイド・ACサンクチュアリーZ編
エンジンの圧縮を確認し車両の履歴を知る
「エンジンの圧縮があるかどうか知ること。そうは言っても普通の人には難しいでしょうから、それを教えてもらえるかどうか。それから、電気系統です」と切り出してくれる中村さん。エンジン圧縮圧力(Z2の場合、ノーマル標準値は10・5㎏/cm2で使用限度70%以上、ばらつき1㎏/cm2以内)がきちんとあるかどうかで分かることも多いのだという。
▲ACサンクチュアリー代表の中村博行さん。中村さん自身はもう35年以上Zに関わってきた。今回の話はその経験からのものだ。
「圧縮が低ければ、ピストンクリアランスが大き過ぎるとかピストンリングの膠着、バルブシート面のシール不良等があると分かります。まあ、走りっぱなしの車両だなと判断。これがきちんとあるならば、走行距離が少ないか、近い時期のオーバーホール歴がある。つまり、そう遠くない過去にリフレッシュされていると判断できます。
お店で聞いてみるのもいいでしょう。『#1から#4まで、こんな感じですよ』と教えてくれるところもあるでしょうし、コンプレッションゲージの数字を見せてくれるようなら、きちんとメンテナンスできるお店だと思います。そうした対応をしてくれるお店だから、車両に対してもそんなひと手間をかけているだろうという判断材料になりますよね。
▲エンジンの圧縮圧力測定の様子。暖機運転をした後に点火プラグを外してコンプレッションゲージのホース先端をプラグホールにセットし、スロットルグリップを全開にした上でスターターを回してゲージ(メーター部)の最高圧を読む。ここでは11㎏/cm2を記録。これを気筒ごとに行う。
Zだとオドメーターの距離は当てにならないので、現在の車両の状態がどうなのかを知ることが大事です。それで今言ったような方法で距離感を知る。リプロパーツも使われてるでしょうが消耗パーツがきちんと交換されているものはいいと思います。パーツ交換については、当時モノがいいという人には換えてない方がいいんでしょうが、もう45年も前のバイクなので、ここは換える方をお勧めします。そんな長い間に修理歴がないような車両もないでしょうから」
確かに、半世紀級のビンテージ。状態や距離を知るにはこうした方法を使うのも手と言える。
「その意味では、ちゃんと走っている車両がベターです。ツーリングでもチョイ乗りでも。修理については必要に駆られてやったものならいいですが、やっつけ仕事でやってるようなものは避ける。とは言ってもこれは見抜くのは難しいですから、元気に走ることを条件にしましょうか。逆に“床の間仕様”みたいに置きっぱなしみたいな車両も避けたいですね。動くかどうかが分からないし、動かすまでの手間が要るでしょう。
▲サンクチュアリー本店のファクトリー。このように各車両にひとりの専任メカニックが付いてRCMの製作が行われる。奥に見えるのはエンジン作業室。ほかにフレーム作業室等も備える。
1980年代モデル、たとえばNinjaだと、A1からA16まで型式が進むうちに純正で対策パーツが使われたり、それが部品で出ますよね。そうしたデータが比較的出てきますから、車両も高年式車を選んでいくなどの判断が出来る。 でも1970年代生まれのZだと、そんな風にならないんです。データ自体もあまりないですし、しかも2オーナー、3オーナーなんて車両は当たり前にある。だから履歴も分かりにくくなりますよね。なので前述のような状況判断をしなければいけないんですね。
▲Zレーサーのエンジンを組む中村さん。
余談かもしれませんけど、後期型ZのGPz1100だと、タンクレールの曲がった車両が多いんです。当然元々はまっすぐなんですが、タンクを外すと目で分かるくらい。そういう車両には転倒歴あり。まあ今の手法ならきちんと直せるものですが、そういう機種ごとの特徴もあります」 20年に渡るRCM製作歴にともなって見えるベース車のコンディション判断。もちろんゆくゆくのRCMという選択肢もあっていい。ともあれ、良好なZ選びにはいいお店を選びたいということだ。
▲製作中のフルオーダーコンプリート車・RCM。新車コンディションを望むなら選択肢のひとつになる。
※本企画はHeritage&Legends 2020年11月号に掲載された記事を再編集したものです。
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