カスタム見直しメソッド！ GPZ-Rシリーズ　TG-RUN編

2021年 11月 19日

スズキの正規代理店として新車・中古車販売を行い、市販車の進化を知る。そしてユーザーに合わせて上質な作り込みを行うバージョンアップ･コンプリートを製作する。そんなテクニカルガレージRUNの代表･杉本さんは最近、自身の愛車である20年超もののGPZ900Rをリメイクした。そこから引き出されるポイントは。

20年物カスタム車をリメイク！注力ポイントは?

この1994年型GPZ900Rは手に入れてもう25年超、10万km以上乗り続けられている。そしてこのほど、リメイクの手が入った。

「距離も進んだのでエンジンをリニューアルしたんです。ZX-11用クランクを新品に交換、コンロッドをキャリロにしました。ピストンやシリンダーヘッドまわりは点検の結果問題なしなので必要な作業だけ行って組んでます。

エンジンが降りたので車体もコンディションをチェック。同時に消耗品を全交換、ブレーキやサスペンションはすべてオーバーホールに出し、外装のリペイントもしました。もう1台の愛車にしてウチのデモバイクでもあるGSX1100S〝ハガネ〞の黒バージョン的な意味合いで〝クロガネ〞とネーミングしています。

とにかく気に入っているバイクなんです。パワー感も動き方も私自身の理想と言っても良いくらいの作り。φ79×58mmで1136cc仕様のエンジンはカリカリの尖ったものとかドッカンパワーに思われるんですが、全然違う。誰が乗っても乗りやすい。ポジションも、タッチも、最高速をやっても街乗りでも。二人乗りも問題なしな作りだと思います。事実、娘とタンデムツーリングしたり、サーキット走行や夏の北海道へロングツーリングと、1年中タフに走らせてますからね（笑）。自分でも興味のある最新パーツや性能評価したいパーツがあれば、まずこのバイクでテストするんです」そう言う杉本さん。

▲TG-RUNの代表、杉本卓弥さん（左）と同店アドバイザーの高橋浩平さん。ノーマル車の良さを上質に高めるバージョンアップコンプリートは随時受付、GPZ900Rは今後もカスタムを進めるという。

リメイクを加えながらも本筋がぶれない作りとは、何に支えられるのだろう。

「まず安全快適であることでしょう」

杉本さんも同店スタッフの高橋さんも口を揃える。だからこのニンジャも、RUNで作られるバージョンアップコンプリートも、安全を担保する手法を施す。

キャブや足まわりのセッティングはデータを記録していつでも見られるように残す。走行距離に日付、オーナー名、作業者名、テスター。データは迷った時の基準点にもなる。同じパーツを同じように付けても同じ結果、同じセットになるわけではない。個体差が出ることがあるし、セッティング幅が異なることがある。それを引き出しておくための複数人でのチェックでもある。

そしてオーナーの使い方を把握する。街乗りか、スポーツ走行かなど。独りよがりにならず、ふたり以上で乗り込み、そのデータを持ち寄ることで挙動に対しての意見交換、オーナーに合う方向性=タッチやパワーの出方、ハンドリング等の摺り合わせも出来る。

そうしたセッティングに加えて、パーツも重要だ。大物パーツが高質になっていればそれで終わりではない。使っていなかったり、数年寝かせた後の再始動等なら、まず走る状態に戻さないといけない。シールやゴム、パイプにベアリング。場合によりハーネスやワイヤ類といった消耗品は交換だ。

▲今回リニューアルを決めた〝クロガネ〞。1999年のものでリニューアル前の姿。

杉本ニンジャもこのリメイクにあたってはマルケジーニ扱い元のホイールテクノロジーでベアリング交換、サスは同じくラボ・カロッツェリアに。ブレーキ系はブレンボジャパンで点検とO/Hを行っている。作業は自店でも出来るものではあるが、正規輸入元でのフラットな目と技術によるチェックで安心を高めるという理由からだ。

大物が付いているからいいではなく、大物パーツも消耗品は代えて維持する必要があることを意識する。「何のために乗るのかを考えてバイクに向き合うこと。快適なバイクライフを楽しみたいのならそうすべきです」と杉本さん。リメイクでもここをまず押さえれば、高質な楽しみはキープできるのだ。

TG-RUN GPZ900R “KUROGANE”Ver. 2020詳細

「自分仕様だけど自分しか満足できない車両ではダメ」（杉本さん）というコンセプトで仕立てられ、それを崩さずにリメイクを続けるGPZ900R A8。エンジンはφ79mmのJEピストン×58mmストロークのZX-11クランクで1136cc仕様、FCRφ41mmキャブやKファクトリー･ディアブロチタンEX等で後軸実測165ps以上の仕様。それでいて18km /Lの高燃費も記録する。