カスタム見直しメソッド! サスペンション OHLINS編
2年、2万kmの最適O/Hで良好な状態をキープ
路面からの衝撃を緩衝し、ライダーには良好な乗り心地を提供しつつ、車体には適切な路面グリップを確保するサスペンション。当たり前のようにバイクに装備されるパーツだが、意外に付いているままの場合も多い。
▲オーリンズ・フルアジャスタブルツインショック、S36PR1CL1。左はスプリングを外したもので右は減衰を担う部分の分解状態。ロッドやピストン、シム類等、精密部品の集合体と分かる。これ以外に多くのOリングやシールが組み合わさってくる。
他方、オーリンズなどのスポーツサスペンションはその域、悪い言い方をすれば、サスが付いていればいいという域で満足できない層、より高度な動きがほしいというライダーに向けた製品。モータースポーツユースでもストリートでも、細かいセッティング幅と精緻で細やかな動きが求められる。
そのためにサスを構成する各部品への精度要求も高くなり、摺動部パーツや各シール類もしなやかな動きを確保する素材が必要となる。同時にその性能を維持するために、定期的なオーバーホールが必要となるわけだ。
▲作業を行うのはラボ・カロッツェリア技術部・第一サービス課の伊藤明雄さん。同社での2輪用製品のメンテやO/H、セッティングアドバイスも行う統括役だ。
オーバーオールはオイル=サスペンションフルードが漏れたりロッドが曲がったりというような破損を修理することではない。先述のような各部パーツ、特にシールやスライドメタルなど、劣化しつつある摺動パーツを交換し、合わせてサスフルードも交換して、新品の性能を維持すること。ここは間違えたくない部分だ。
オーリンズの場合はストリート使用でのオーバーホールサイクルの目安を2年/2万kmと設定している。外観上の損傷がないから……ではなく、ないからこそ内部の変化に敏感でありたい。ちなみにオーバーホール時に行われる作業は具体的にはフルードの交換に窒素ガスの充填。オイルシール/ピストンリング/スライドメタルの交換。これらを含んでの費用は3万円(税別)。そしてこのオーバーホールを定期的に行えば、ショックは一生もので使えるという。
▲ショックシリンダー(下側。本体は逆さに置かれる)からピストンを引き抜いたところ。赤いパーツの周部に泡が見えるが、これは本体内に外気が侵入している証拠。外気と内部の遮断はOリングが担うが、使用にともないエアは入ってくるのでそれを除去する。
▲スイングアームからの大きな入力を受けるエンドアイブッシュの破れや偏芯は性能低下を招く。
▲使用済みフルードもこのように汚れてしまう。
気をつけておきたいのは、こうしたパーツはひとつひとつが精密部品で、サスはその精密部品の集合体だということ。オーリンズの場合なら同社の思想と技術の下で各パーツもフルードも素材から吟味され、各機種用が送り出されている。だから各パーツのどれかが欠けた場合、それはオーリンズでなくなる。その点も踏まえて、日本輸入元のラボ・カロッツェリアではオーリンズ車の技術講習を履修したスタッフを揃えて作業を行う。それゆえ、オーバーホール作業はラボ・カロッツェリアに依頼する。それがオーリンズサスを使う最適解につながるはずだ。
※本企画はHeritage&Legends 2020年5月号に掲載されたものです。
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