スズキGSX-R750(1985~2019)の歴史
大排気量車にGPマシンと同等の軽さとパワーを
良い物は作っていたが市場的に押されていた1980年代初頭のスズキが「3年連続で250/400/750㏄のヒットモデルを作る」と1983年のRG250Γ、1984年のGSX-R(400)に続いて送り出したのがGSX-R750(F)だ。GPマシンの性能をこのクラスにと、当時の750ccの70ps×220kgという常識を大幅に破る100ps(チューニングで130ps目標)×176kgを目標とした。
油冷方式やクラス初のアルミフレームなど軽量コンパクト・ハイパワー思想はそのまま大排気量クラスでのレプリカの概念として標準化、進化を続けていく。
1985 GSX-R750(F)
1984年IFMAに姿を現した初代GSX-R750。当時同社開発主任技師の横内悦夫さんは第2次大戦中の米軍機P51マスタングの「液冷」にヒントを得てシリンダーヘッド裏に最大20L /分のオイルを噴射する「油冷」を発案。フレームもアルミ、フロントフォークは大径φ41mmでリヤはフルフローターサス、前後18インチホイール、フラットスライドVM29キャブ、4-1EXやフルカウル等、今でも通用する装備を持ち、TTF-1でも活躍した。
1986 GSX-R750(G)
1985年にはR750でヨシムラ/辻本聡がTTF-1王座を獲得し、欧州でもR750がル・マン24時間も制した。これを受けて1986年には記念限定車のGSX-R750Rを販売。乾式クラッチやステアリングダンパー、電気作動式アンチノーズダイブNEAS、フローティングマウントのφ310mmディスクやFRPシングルシートカウルを装備した。
1986 GSX-R750(G)
上記の記念限定車に採用された軸距25mm延長等は市販車初のラジアルタイヤ標準装着車となった1986年型R750(G)に継承。
1987 GSX-R750(H)
1987年型(H)はホイールを2.50/3.50→2.75-18/4.00-18にワイド化、リヤタイヤも140→150幅に。また1986R750Rに同じNEAS&ステダンを加える。
1988 GSX-R750(J)
1988年型(J)は初のフルチェンジでφ70×48.7→φ73×44.7mmにショートストローク化、キャブも強制開閉から負圧サーボのBST36に。フレームは部材の形状を変えてピボット部を鍛造にして剛性を60%高め、ホイールは3.50/4.50の前後17インチ、フロントフォークもφ43mmに大径化した。
1989 GSX-R750(K)
1989年のR750(K)はボア×ストロークの値をφ70×48.7mmに戻した。
1989 GSX-R750R(K)
限定車GSX-R750R(K、通称RK)はKにバフ仕上げのクロモリ鋼クランク、ファクトリー譲りのバルブ/シリンダー/ケース、6速クロスミッションを使用。吸排気はBST40キャブ+4-1EX、外装はFRPでタンクもアルミ別形状品。車体はリヤアームがスタビ付きになり、リヤホイールがRKのみ5.50-17に。
1990 GSX-R750(L)
1990年型LはホイールなどがRKの仕様となり、750㏄市販車初の倒立フロントフォーク(φ41mm)化も果たす。
1991 GSX-R750(M)
1991年(M)は2→1バルブ1ロッカー/1990ワークス車同型ポート等とシリンダーヘッドまわりを変更、ピストンも軽量化した。外装ではスラントカウルも新採用。
1992 GSX-R750(N)
1992年型Nではついにエンジンを水冷化。シリンダーピッチを10mm短縮し全幅を57mm狭め、クランクも27mm低く置く。バルブ挟み角狭小化や動弁系軽量化、燃焼室小型化も行い、フレームは5角断面材化で24%剛性向上、リヤアームも押し出し材+モノコックに変更した。
1993 GSX-R750(P)
1993年型はカラーリング変更のみが行われた。
1994 GSX-R750SP(R)
1994年は750 ㏄ のレースがスーパーバイクになり車名もSPに。フレームは5角断面材/鍛造材/砂型鋳造製ヘッド部混成とし、ねじり剛性を30%向上。[41→]43mmフロントフォーク装備、ホイールは青仕上げ、キャブはTMR40としてSCAIをセット。ミッションもクロス化、フロントキャリパーもTOKICO対向6ポットに。
1996 GSX-R750(T)
1996年型Tはアルミツインスパーフレームを初採用、ピボットも別体・位置可変式に。フロントフォークはφ43mm、前後ホイールアクスルもFφ25/Rφ28mmに大径化、リヤRホイールは6.00-17となった。エンジンは25度前傾の新設計でSCEMめっきシリンダーや上下3分割ケース、BDST39キャブ+走行風過給のSRADを採用した。
1997 GSX-R750(V)
1997年型Vはカラーリングのみ変更した。
1998 GSX-R750(W)
1998年のWで新たにFIを採用し、低回転/15度までの低開度時は回転数と吸気圧、高負荷時は回転数と開度で1気筒1インジェクターを制御した。エンジンは内部ロス低減、ハイカム/ダイレクトイグニッション/クロスミッション採用。車体も細部を詰めた。
1999 GSX-R750(X)
1999年型Xはカラーリングのみ変更。
2000 GSX-R750(Y)
2000年型Yはフルチェンジで外装を2000RGV-Γ形状にリフレッシュ。φ42mm FIのバタフライバルブ上流に電子制御サブバルブを追加して、流速を上げつつ唐突感を解消するSDTVを採用、3分割ケース/前傾23度のエンジンは小型軽量化。フレームは1999年型比18%軽量化し、スイングアームは20mm延長の540mmに。
2001~2003 GSX-R750(K1~K3)
1:2001 GSX-R750(K1)、2:2002 GSX-R750(K2)、3:2003 GSX-R750(K3)はカラーリングのみ変更。
2004 GSX-R750(K4)
2003年以降はレースベースの役目がR1000に移り、R750はR600と共通化される。K4でフレームは日の字断面押し出し材、フロントブレーキはラジアル4Pキャリパーになり、ホイールも軽量化を果たした。
2005 GSX-R750(K5)
K5はカラーリングのみ変更。
2006 GSX-R750(K6)
K6ではクランクケースを再度2分割とし、3軸三角形配置も小型化。排気デバイスSETを追加。
2008 GSX-R750(K8)
2008年型K8はR600(K8)と同様の変更。ラムエアダクトを中央寄りにし、タンクはホールド性を向上。R1000譲りの電制ステダンとS-DMSを新装備した。アルミ鋳造材主体のツインスパーフレーム、またサブフレームも形状変更、3.50-17/5.50-17ホイールもさらに軽量化された。
2011 GSX-R750(L1)
2011年型L1ではR750/R600ともホイールベースの15㎜短縮。アクスルから前/後とも35㎜ずつオーバーハングを短縮して旋回性を向上した。
2012~2019 GSX-R750(L2~L9)
1:2012 GSX-R750(L2)、2:2013 GSX-R750(L3)、3:2014 GSX-R750、4:2015 GSX-R750(L5)、5:2016 GSX-R750(L6)、6:2017 GSX-R750(L7)、7:2018 GSX-R750(L8)、8:2019 GSX-R750(L9)。L2~L9に至るまカラーリング色変更で推移するが、日本製750㏄クラス唯一のスーパースポーツという立ち位置も維持していた。
※本企画はHeritage&Legends 2020年3月号に掲載された記事を再編集したものです。
バックナンバーの購入は、https://handlmag.official.ec/ で!
WRITER