カタナの可能性をTOTでもストリートでも広げる・チームカガヤマ【前編】
カタナへの憧れとTOTへの興味が生んだ1台
カタナを彩るヒストリーの中に、特別なカタナというものがある。AMAスーパーバイクを走ったヨシムラカタナ、ある現役レーシングライダーの愛車だったホワイトパイロット、ヨシムラ1135RにTG-RUNのハガネ。ブライトロジックが「バイク芸人」福田充徳さんのために作ったスーパーカタナ……。
その中にまた1台、特別なカタナが加わった。それがカガヤマカタナR。加賀山就臣選手率いるチームカガヤマが、テイスト・オブ・ツクバ=TOTのハーキュリーズクラス出場のために、2018年に作り上げたカタナだ。
「皆さん知っての通り、僕はレーシングライダーとしてのキャリアをずっとスズキで過ごしてきた。それどころか僕、スズキファンなんです。カタナは、ずっと憧れのモデルでした」と言う加賀山。
▲2018年当時、現役の全日本ロードレースのトップライダーでありながらTaste of Tsukubaにも参戦した加賀山就臣。全日本ロードレースとTOTの橋渡しをした鉄人は、カガヤマ・カタナ1000Rを常勝マシンとすべく挑戦した。その加賀山、もちろんTOTの存在を以前から知っていて、空冷エンジンにパイプフレーム、2本サスのマシンが筑波サーキットを1分00秒レベルで走るシーンにド肝を抜かれていた。
「うわぁ、あのマシンでこのタイムで走るか! って、現役のライダーみんな驚いていましたよ! これ、いつか出てみたいなあって、ずっと思っていたんです」
カタナへの憧れ、TOTへの興味が合わさってできたのが、カガヤマカタナ1000Rだった。
「スズキのマシンでTOTに出るとなると、なかなか選択肢がないんです。でも、まずはカタナで出たかったし、僕が出られるのはハーキュリーズクラスなので、これはカタナの鉄パイプフレームにGSX-R1000のエンジンを積むしかないな、と。フレームのメインパートはカタナのフレームを使って、エンジンマウントとスイングアームピボットをオリジナルで作って、完成させたんです」
走るだけならば、エンジンとフレームを合体させれば形にはなる。けれど、そこからセットアップを詰め、ハーキュリーズクラスの常連たちを打ち負かすマシンを作らなければならない。
「僕はレーシングライダー以前に、スズキのテストライダー出身です。だからプロデビュー前はずっとマシン開発の勉強をしてきたと言っていいくらい。TOT用のマシンをゼロから作るのには、実はその経験が生きたんです」
TOTスピリッツに則ったキャブ&ツインショックの3号機
Team Kagayama “KATANA1000R” TYPE-3/3号機=Team KAGAYAMAカタナType3は、なんとインジェクションをキャブレターに換装、リヤ・ツインショックとして’20年秋に登場した! 加賀山のTOT参戦3レース目は、ハーキュリーズの強豪・パワービルダー・ニンジャ&山根とスーパーチャージドのNinja H2R&光元に先行されての3位だった。
キャブレターはミクニTMRのダウンドラフト版、TDMR。もちろんインジェクションからすんなり換装できるわけはなく、まずは電気系統のエラーコード解明からの戦いだったという。ツインのリヤショックはアラゴスタ、メインフレームのトップパイプはカタナ用で、スイングアームピボットやエンジンマウント部はオリジナル製作してGSX-Rエンジンを積んでいる。アルミスイングアームは国産他モデルの流用で、こういったパーツの選定から手配まで、Team KAGAYAMAが行っている。
■取材協力・TEAM KAGAYAMA https://team-kagayama.com
→後編へ続く
※本企画はHeritage&Legends 2021年2月号に掲載されたものです。
「カタナの可能性をTOTでもストリートでも広げる・チームカガヤマ」後編はコチラから
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