時間をかけることの承諾が依頼側と作る側双方の利点に
確立から25年。この’25年後半現在でシリアルナンバー(通算製作番号)600番台後半が次々と完成し、700番に届こうという車両も納車されているというACサンクチュアリーのコンプリートカスタム、RCM(Radical Construction Manufacture)。製作番号が進むということはその分世代も進み、新しいパーツや加工精度等が取り込まれていくことでもある。近作のこの車両もその進んだ番号かと思いきや、少し手前の584が振られている。
「オーナーさんとの打ち合わせ(この時点で番号が決まっていくことが多い)の時に、費用を用意する時間のこともあって、2年ごしで進めてくださいというリクエストをいただきました。通常だと3〜4カ月かかる車両製作なんですが、時間に余裕を持てるのはこちらとしてはありがたかったんです。作業進行中にも定期的に入金していただき、こうして完成に至りました」
サンクチュアリー・中村さんは言う。作る側には時間、オーダーした側にはコストと、お互いが利点を見いだせるオーダーだった。
「結果として出来た車両には、さらにふたつの利点ができました。ひとつはパーツの調達コスト。皆さんもご存じの通り、ここしばらくはパーツの値上がりが続いています。その波に遭う直前にパーツ、これは製作が決まった時点で次々オーダーするんですが、それが早い時点、オーダー時の価格で揃えられました。
もうひとつは、逆に時間がかかったことで得られたようなものです。製作精度や技術に、より進んだものが適用できたこと。とくにエンジンですね。当社の内燃機加工部門のDiNx(ディンクス)では日々精度追求という感じで作業を進めていて、その最新が反映されています。精度が高いとより静かでスムーズなエンジンになる。そんな利点のおかげで、結果として“オーソドックスルックスなMk.Ⅱの高質チューニング仕様”という仕立てになったんです」
市販車でも同名称モデルが新型になれば技術はじめとしたアップデートが取り込まれるから、そこは難しく考えるところではない。むしろ、同じZやMk.Ⅱという車両がベースとなるRCMはエンジンならオーバーホールの時に。足まわり含む車体も最初に17インチ化が済んでいるから、整備を兼ねて次を考えた時に、無理なく新しいことが取り込める。そう考えれば、早いオーダーは有利に働いた。この車両はその例と言えるだろう。
Detailed Description詳細説明
フォークオフセットを純正60から35mmとして17インチに合わせたトレール量を得たスカルプチャーφ43フォーク用SPステムKIT Type1にはデイトナ・RCM concept LOWハンドルをセット。左右マスターはブレンボRCS。メーターは純正ベース、ウインカーも小型でスタイリッシュなものに変更した。
外装類はMk.Ⅱ純正カラーのルミナスネイビーブルーで再仕立てしている。
シートはデイトナR.C.MコンセプトCOZYシート。破損した場合にも同じものがすぐ調達できる利点もあるのだ。
油圧駆動化したクラッチのクラッチレリーズプレートKITとバックステップはナイトロレーシング。フレームには12カ所の補強や17インチ/ワイドタイヤに適した加工が行われる。
エンジンはDiNxでボーリングと精密ホーニング、バルブガイド打ち替えやバルブシートカット加工等の内燃機加工を行い、鍛造ピストンを組んだ1045cc仕様。クランクバランス等も取られ、今のRCM・Z系の標準的な精度と仕上がりを得ている。オイルクーラーもナイトロレーシングだ。
キャブレターはヨシムラTMR-MJNφ38mmをヨシムラ・デュアルスタックファンネル仕様で使う。
排気系はナイトロレーシング4in1“ウエルド”クラフトチタン3D EXマフラーに同グレネードチタンサイレンサーV-Ⅲを装着。
ノーブレストE×Mパッケージ・ラジアルマウントでオーリンズRWUフォークやブレンボGP4-RXキャリパーをセットするフロント。ブレーキディスクはサンスター・プレミアムレーシングディスク“RCM”コンセプトモデルだ。
リヤブレーキはブレンボGP2-SS CNC 2Pリアキャリパー+サンスターディスク。前後ホイールはO・Zレーシングのアルミ鍛造、GASS RS-Aで3.50-17/5.50-17サイズを履いている。
リヤサスはオーリンズ・レジェンド・ツイン(KA446)とスカルプチャー・R.C.M専用ワイドスイングアームの組み合わせ。ドライブチェーンは構成プレートの強度を確保しながら薄く仕立てることで、530サイズの強さという利点を残しつつリヤタイヤなどへの干渉も抑えるEK530RCMを装着。








