道具として操る面白さを作り込むためのホイール大径化
前後17インチホイールを履く現代車のスペックを持つ、カワサキZ900RS。だが、その東京モーターショーデビューと同時に現れたビトーR&Dの車両は、前後に18インチタイヤを履いていた。そのホイールは同社製のマグネシウム鍛造モデル、マグタン(MAGTAN)。最新の技術に、あえての大径ホイール。MAGTANで17インチもラインナップしているのに、だ。
同社社長、美藤 定さんは言う。
「MAGTANのZ900RS用は、17インチと18インチで半々くらいの割合で出ています。とくに最近(’21年前半)では18インチが増えているようです。
私がRSで前後18インチを履かせたのは、Z900RSというバイクに、道具としての面白さを加えるためです。RSノーマルは前後17インチで、今のバイクらしく旋回性も良くてよく走ってくれます。サーキットなどではそれでもいいんです。ただ、一般道を普通に走るには、もう少し操る感覚、ライダーが意思を伝えてバイクの能力を引き出していくという感触、手応えがあった方が面白い。
ネイキッドというジャンルも、それに見合っている。日本では、多目的に気軽に使えるモデルが人気があって、それこそちょっとお茶を飲みに行ったり、荷物を積んで遠くに行ったりと楽しむわけです。その上で今の交通事情を考えれば、無理なく楽しめる速度も限られます。そこにZ900RSはいいベースとして現れました。現代モデルですからパーツの心配もないし、ブレーキもサスも基本的には問題ない。むしろすいすいと走り過ぎるくらい(笑)。
昔は、バイクが“乗ってみろ”という感じで、車格もあるしブレーキは効きにくい、サスもゴツゴツという感じ。それを、カスタムすることで改良してきたわけです。でも今ではそれを代表する空冷Zなどの車両はコストもかかるようになりました。
そこに、Z900RSが出てきた。旧車のような問題もなく、いじらなくても乗れる車両が150万円あれば買える。ただ、道具としての楽しみが少ない。そこをもっと強めるようにしたかったんですね」
ここで美藤さんが言う操作感、面白さは、楽な部分を削るということではない。ともすれば自動運転やスイッチ操作のような無味乾燥になりそうな部分を抑え、自分が操作しているという、ライダー主体という感覚でライディングを楽しんでほしいというものだ。
18インチに大径化しつつも純正鋳造ホイールより軽く、鍛造での強さで路面のインフォメーションをしっかり伝えてくれるMAGTANは、そこにもプラスに働く。ステップなど他に装着されたビトー製パーツ群も、そんな意味を持っている。
「メーカーの作る完成品というレベルで、道具としてのバイクを作っていきたい。今後また、この車両に皆さんが試乗できる機会も作れるかと思いますが、そこで乗っていただくといいですね」とも美藤さん。機会があれば操る面白さ、ぜひ試してほしい。
Detailed Description詳細説明
ビトーR&DのZ900RS最大の特徴となるのは、前後ホイールだ。純正の3.50-17/5.50-17に換えてマグネシウム鍛造のMAGTAN、3.00-18/4.50-18サイズを履く。Z900RS用の18インチは、7本スポークデザインのJB4のみの設定。アクスルシャフトもJB-POWERクロモリ中空に換装済みだ。
写真の18インチ以外にも、MAGTANのZ900RS用は17インチも用意(フロント3.50-17、3.625-17。リヤは5.50-17、6.00-17)されている。
フォークブリッジ(ステム)はビトーR&DオリジナルのJB-POWERアルミ削り出しで、フロントフォークオフセットは35/40mm可変式(Z900RS純正は34mm)だ。ここでは18インチに合わせて40mmでセット。ハンドルバーもJB-POWERオリジナルパイプハンドルに変更している。
シートは内部素材および形状、表皮とも変更。リヤキャリアはちょっと荷物を積む時などの実用性も考慮した上で製作したワンオフ品だ。
排気系は4-2-1のJB-POWERチタン手曲げ集合マフラー(メガホンサイレンサー仕様+キャタライザー付)に変更し、大幅な軽量化を達成。吸気系やエンジン本体はZ900RSノーマルのまま。ステップはJB-POWERアルミ削り出しライディングステップキットで最適なポジションを作り出す。