よく走るをテーマにしたパーツ選択や構成が光る1台
1972年に’73年型として登場したカワサキSuper4、モデルZ1。登場半世紀に迫ろうとする今もその存在感や認知度、人気といったものは衰えていない。ベース車両の高騰が目立つ昨今ではあるが、カスタム化への熱も冷めず、これもまた多くの車両が作り出されている。そんな中でこの車両は、兵庫県尼崎市の老舗ショップ、寺田モータースで専務を務める吉岡さんの愛車だ。元から無類のZ好きだったという吉岡さんは1990年に同社に入社して半年後にこの車両を手に入れ、以来30年強、手を入れながら維持している。
基本のテーマは“よく走る”。全体の印象としては’70~’80年代のアメリカ、AMAスーパーバイクや同じ頃の日本、MCFAJのスーパープロダクションクラスを走るレーサーのイメージ。AMAスーパーバイクはストックシルエット(市販車状態の外形)を保つことというレギュレーションがあり、ヘッドライトやメーターもケースはそのまま使われた(中身は外していい)から、ストリート車にもなじみのいいテーマにもなっている。この車両で言うならば、ヨシムラZ1が集合マフラー化した頃の印象。
MCFAJスーパープロダクションクラスは、カスタムがブームになった’80年代末期頃に、市販レーサーではない車両、例えば空冷Z系などが手頃なベースとして参戦。レーサー用18インチホイールを履いたりレーシングキャブレターを付けたりして、保安部品を付ければストリートスタイルという印象があった。
この車両で装着されているCRスペシャルキャブレターやNGCマフラー、ダイマグ3本スポークホイールにモリワキ・アルミスイングアームはまさにそんな雰囲気を醸し出し、かつそれぞれがきちんと機能するパーツ。そこは30年の車歴、そしてノーマルからフルカスタムまで、多くのZシリーズを手がけてきた(中古車両の販売も行うというから、なおさらだ)寺田モータースと吉岡さんならではの選択眼とまとめ方だろう。
リプレイスパーツもアフターパーツもじつに多くがあるZ。時には何を選んだらいいか迷うこともあるかも知れないが、このZ1のようにしっかりしたテーマを持っていれば、それも防げそうだ。よく走る、長く走るというZの好例として注目しておきたい。
Detailed Description詳細説明
シンプルな構成もこの車両の特徴と言っていい。メーターはノーマルでヨシムラ・プログレスメーターを追加、ETC車載器のインジケーターも見える。ステムは前後18インチ化に合わせて変更。フロントマスターシリンダーはAPでハンドルバーも適度な高さのものに変更する。
エンジンはZ1000H純正のφ70mmピストンを使った1015cc仕様。ラバーバンドで留めるオイルクーラー(万一の落下予防も行う)は撮影時は春先で冷え過ぎを抑えるためセンター部をカバーしている点などにも、かつてのプロダクションレーサー感が感じられる。燃料コックはピンゲル製に換装して流量を確保、キャブレターはCRスペシャルのφ38mm、マフラーはNGCの4-1ストレートエンドだ。
ボトムケースサイドにKawasakiとKYBのコーションラベルが見えるフロントフォークは、Z1000R2純正のφ38(Z1ノーマルはφ36)mmを流用。フロントブレーキはZ系永遠の定番とも言えるAP・CP2696キャリパーをセット、ブレーキラインもステンレスメッシュ化される。
スイングアームはモリワキ製角型アルミ、リヤショックはオーリンズ。前後ホイールもダイマグ3本スポークで19/18から前後18インチ化し、コンチネンタル・コンチロードアタック2CRの110/80R18・150/65R18を履く。ドライブチェーンはRKの50X(530サイズに同じ)だ。