ショップの持つ素性や考えが確実に車両に反映される
スズキの正規代理店として新車を販売する。カスタムショップとして、車両に手を入れる。ショップとしての素性=このふたつの背景を最大限活用してテクニカルガレージRUNが送り出すコンプリートカスタム車が、“バージョンアップコンプリート”だ。
ハヤブサに関しては初代、第2世代通じて数百台を販売してきた同店だが、正規で新車販売(国内仕様が登場する’14年以前もモトマップによる正規輸入車を扱っている)をしてきたということは、メーカーによる講習を受けてきたということ。つまり、ノーマル車で起こりうる事象への対応も問題なくこなせる。定期点検や整備については、もはや言わずもがなだ。
車両に手を入れるという部分では、ノーマル車両をきっちり知っているから、多くのユーザーの使い方や走らせた方に合わせた手の入れ方が出来ることがまず挙がる。それから、オープン以来25年になるショップ履歴の中で、サーキット走行会やGSX-R1000Rによる鈴鹿8耐参戦、油冷モデルなどによるTOT参戦という実戦で、必要な機能を見抜いてきた。
加えて、そうした機能を引き出すパーツを吟味し、そのパーツを組み付けていく際にも精度良くまとめる。ここに関しては「現代バイクなら特に欠かせない部分」(TG-RUN・杉本さん)という。最終的には前述のような各オーナーの使い方も勘案したセッティングを行っていくから、バージョンアップコンプリートはそれぞれのオーナーへのオーダーメイドカスタム、ぴったりと合った1台として仕上がっていく。ハヤブサに関して言うなら、初代、第2世代のそれぞれの登場時だけでなく、20年を超える歴史の中でアフターパーツも次々と現れ、洗練されてきたわけで、それらも時流に合わせて吟味し、その都度採り入れて発展させている。
この車両はそんなTG-RUNのバージョンアップコンプリート・ハヤブサの例で、第2世代がベース。ルックスにピンと来る人もいるだろうか。そう、映画“キリン”(’12年。DVDも販売)の劇中使用車とほぼ同じ仕様の、レプリカ車だ。
モチーフとなった劇中車は、ただ映画の撮影対象となるだけでなく、スタント実走にもしっかりした走りで応えるという機能にも配慮していた。その上で、もうひとつの側面、つまり普段こうしたバイクに触れる機会の少ない、慣れていない役者さんが演技中に触れても自然に振る舞えるような作りを持っていて、安心・安全にいられるようにという部分にも配慮している。このふたつの要素は、バージョンアップ・コンプリートの要素そのものだ。触れた際の各部の作動が上質なら、触れる側も自然に振る舞える。軽量化や前後足まわりの動き、ブレーキやスロットルのタッチ、座り心地といった部分にもそれは及ぶ。
レプリカとして作られたこの車両の場合でも、オーナーが異なればそこに合わせたセッティングが加わるから、レプリカだからと我慢して乗るようなこともない。ハヤブサというバイクをより身近に、上質に楽しむための近道にもなるわけだ。
Detailed Description詳細説明
カーボントリム&スーパーコートスクリーン、メーターカバー。またカーボンモノコックボディのNK-1ミラーにフロントフェンダー/リヤインナーフェンダーにフェンダーレスキットなど、カーボンパーツはすべてマジカルレーシング製パーツ。車体を引き締めてくれる。
トップブリッジはケイファクトリーで左右マスターシリンダーはブレンボ・ラジアル。レバーもケイファクトリー製削り出しに置換。
シートはこの車両ではノーマルだが、今、バージョンアップコンプリートを作るならTG-RUNスポーツ&コンフォートシートが用意されている。
各部仕様はキリン劇中車に準じ1340ccのエンジン/アルミフレーム、外装もノーマルで程度極上。エンジンスライダーはアグラス製を使う。
ライディングステップはケイファクトリー製。カウルインナーパネルやフレームカバーはマジカルレーシング製綾織りカーボン品だ。
マフラーはケイファクトリー・フルチタンで大幅に軽量化される。軽さは取り回しの時点からはっきり分かり、車両がぐっと身近になる部分でもある。
フロントブレーキはブレンボCNCラジアルマウントキャリパーにブレンボディスクの組み合わせ。倒立のフロントフォークはオーリンズ製。
前後ホイールは大幅な軽量化や精度の高さで車両の扱いやすさを高めるマルケジーニ製のアルミ鍛造品。10本スポークのM10S Kompe-Evoメタルで、ノーマルに同じ3.50-17/6.00-17サイズを履く。スイングアームはノーマルでリヤショックもオーリンズをチョイス。
リヤブレーキはTG-RUNオリジナルのサポートでブレンボ・カニ・ビレットキャリパーをマウントし、サンスター・ワークスエキスパンドディスクを合わせる。