コンプリートカスタム車をベースと捉えて進化させる
半世紀前の旧車となったカワサキZ1を現代化する。その際に、ベースをZそのものと言うよりも、コンプリートカスタム化中のカスタムバイクと考える。そんな考えは、ACサンクチュアリーが作るコンプリートカスタム、RCMにおいては浸透しつつあるようだ。それは同店で作り置きされる“RCMクラフトマンシップ”を元にアップグレード化すること、通常のRCMを製作する際での細かな仕様変更でも分かる。さらに、この車両=近作でありつつ、早い製作番号の付いたRCM-101という車両を見ることでより分かりやすくなる。
「この車両は、101というナンバーで分かるように、元は10年以上前に製作したものです。今回はアクシデントに遭ったためその修復と、同時にリメイク作業を行ったんです。ですから単に製作当時の状態を再現するのでなく、各部は10年分の要素を進化させているんですね。
RCMとしてのベース(17インチ最適化やエンジン仕様の基本)はそのままですが、[5→]6速化やエンジンオイルの吐出量の増すトロコイドオイルポンプ、ドライブシャフトを外からも支持するEVOシステムの組み込み、ツインプラグヘッド化とそれにともなう電装変更も行いました。結果的に60~70%はリメイク、修復分もあったので費用ももう1台作れるくらいになりました。
でも、改めての新車同様になり、EVOシステムのおかげでかつての定番だったオフセットスプロケットを使わなくて済むようになったり、ミッションまわりの振動が減らせてクランクケースへの影響も減るなど、進化を取り込んだことでさらに質を高くした上で長く楽しめるようになっています。このようなリメイクのための入庫も最近はだんだん増えて、年何台かのペースで作業するようになっています」とACサンクチュアリー・中村さん。
つまりお客さんたちは、カスタム化の際にもいったんZノーマルに戻って考えるのではなく、フルカスタム化されたRCMをベース車と考えて、そこから手を入れる=カスタム化、結果としてアップグレード化を考えているということになる。だから製作当時にはなかったパーツや作業が新しく取り込まれていくのは、自然なことのようだ。この手法を意識していれば今作るRCMも後々のリメイクも視野に入れられる。そんな同店とユーザーたちの意識の変化も、これからZを楽しむための参考になるはずだ。
Detailed Description詳細説明
メーターはホワイトパネル+めっきリングという構成で、デイトナ製のセパレートハンドルはクランプ部をブルーとして車体カラーとの統一感を出す。左右マスターシリンダーはブレンボRCSで、ステムはスカルプチャーSPステムキットTYPE-3、そのオフセット値は35mmだ。
シートはポジションもしっかり煮詰めたデイトナRCMコンセプトで、タイガーカラーをベースにしたペイントはエンゼルが担当した。
フレームは元々サンクチュアリーST-2仕様(12カ所補強)で、本文にあるアクシデント後の入庫でも、引っ張り後に補強部を剥がして修正・補強入れ直しという段階を踏んで無理なく再生した。その際に下ろされたエンジンもこの機会をチャンスと捉えて開け、TW製6速クロスミッションを組みチェーンラインをEVOシステムに。ドライブスプロケットが両支持/フラット化されて交換や調達も容易になり、振動も軽減という、当時なかった進化を導入する。
キャブレターはFCRφ37mm。エンジンの基本仕様はSOHCエンジニアリング製φ73mmピストン/ライナーによる1105cc仕様+WEB ST-1カムで、クランクケースへのポンピングロス加工やHFバルブ組み込みなどのメニューも加え、同じRCMゆえのリメイク進化が達成できたのだ。
フロントフォークはオーリンズRWUで、前後ホイールはO・Zレーシングのマグネシウム鍛造品・カッティーバの3.50-17/5.50-17サイズ。フロントブレーキはブレンボGP4 RXキャリパー+サンスター プレミアムレーシングMタイプφ320mmと、ここでも大きな進化が図られた。
スイングアームはスカルプチャーR.C.M.専用ワイドスイングアームのポリッシュでリヤショックはオーリンズ。リヤブレーキはブレンボCNCキャリパー+サンスターφ250mmディスクで前後ブレーキラインはアレーグリ・ショルトシステムラインと、一新している。