この型式が好きだからと乗り続けていく
スズキの中心モデル、GSX-Rシリーズ。油冷エンジン車も含めれば初代750の’85年から2020年時点で35年の間に、毎年のようにモデルチェンジを繰り返してきた。しかも、強い支持がある。車両各部を上質化して、性能も乗り味も高めるバージョンアップ・コンプリートを手がけるテクニカルガレージRUNでもGSX-Rはその対象の主力で、ベース車は新車だけでなく、中古車両でもいい。ただ、そのための見極めは必要という。そこで参考になるのが、この車両だ。
「このスズキGSX-R1000は当店のバージョンアップ・コンプリートの最新作。K5ですから’05年型、もう15年前の車両がベースです。毎年進化するGSX-Rですから、最新型と比べれば電子制御に大きな差がありますが、シンプルに良く曲がるシャープな走り感や、盛り上がるパワー感など、K5の元々の性格は特筆ものでした。今のモデルは制御を細かくして乗りやすくしているんだなと逆に分かるような作り。
それでこの車両では、各部の雑味を除いて、より上質に走れるよう手を入れてます。新型車でもそうですが、このように型式が古くなった車両が元の場合、油冷や空冷カタナのような旧車と同じように考えていくんです。20年続くシリーズとなったハヤブサの場合でも、GSX-Rと考え方は同じです。
このK5を例に挙げれば、新車で購入いただいて、ワンオーナーの車両なんです。なのでオーナーも我々も履歴は分かっている個体。ですから何の問題もありませんが、これから手に入れるなら、買おうと思う車両を見て、それがほしいと思うかどうか」とRUNの代表、杉本さん。そう、最新型でない限りは中古車両を元にバージョンアップコンプリートを手がけることになる。それにしても、ベース車両として良好なものがいいのは当然だ。
「よく分からないのなら、ノーマルに近い車両を。履歴の分からない改造車は避けましょう。とくにスーパースポーツの場合は荒い乗り方の車両も多いので、過走行車は避けたい。それから、ショップで買う時の保証や整備履歴も確認する。信頼できるお店で、納車整備の内容も確認するといいと思います。売り飛ばすのでなく、その価値を理解して売るお店という感じです」
このK5は新車時代から整備履歴がしっかりしていて、この話に挙がったような良好なベース車への資質をオーナー自身が築き上げていた。それで新型が出てきても好きで乗り続け、最近になってその資質引き上げ=バージョンアップを行い、今後の楽しみを広げたというわけだ。新車で楽しみ、整備で良さを維持した上でカスタムの良好なベースにした=ベースのための見極めは済んでいる。さらにカスタム化で楽しむ。これなら、もっと先も乗り続けていけるはずだ。
Detailed Description詳細説明
肉抜き加工も施されたトップブリッジはTG-RUNのスペシャルで、チタンコートスクリーンとシルバーカーボンのメーターカバーはマジカルレーシング製。フロントマスターシリンダーはブレンボラジアル、ワイヤ式のクラッチはレバーをZETAに換装している。
シートはTG-RUNスポーツ&コンフォートシート(他のGSX-R用もあり)に換装されている。15年ものと思えないほどきれいな外装からも、定期整備がきちんとされていたと分かる。TG-RUNは多くのスズキ新車や中古車を扱ってきた経験から、定期整備の重要性を知っているわけだ。
ケイファクトリー製エンジンスライダーやTG-RUNオリジナルチタンフィラーキャップの装着、シートレールボルトをβチタニウム製とする以外、内外ともノーマル状態のエンジンまわり。エンジンオイル交換はじめ定期的なメンテナンスによって良好な状態を保っている。
5ポジションをセレクト可能でシンプルなデザインが施されたステップはTG-RUNライディングステップキット。操作性も良好だ。
フロントフォークはオーリンズ倒立で、ラジアルマウントの4ピストン・フロントブレーキキャリパーはブレンボGP4だ。フロントディスクはワンオフアタッチメントを組み合わせて、往年のレーサー風味でサンスター・レーシングディスクを装着している。
スイングアームはK5ノーマルで、ホイールはマルケジーニ・アルミ鍛造のM10Sを履く。サイズはノーマルに同じ3.50-17/6.00-17インチとした。
リヤショックもオーリンズに換装し、インナーフェンダーはマジカルレーシング製。リヤブレーキキャリパーはブレンボCNC・2ピストンをTG-RUNサポートでマウント、ブレーキディスクはサンスター。レーシングスタンドフックはケイファクトリー製をセット。
マフラーはケイファクトリー製フルチタンで、焼き色のブルーは車体色にも合っている。各部ボルトはβチタニウム製に変更されている。