現役当時からのノウハウも活用し細部まで凝った1台
1981年から’94年までヨシムラに在籍。特に油冷車ではレースの最前線で現場を眺め続けてきたのが、ブライトロジックの代表・竹中 治さんだ。そしてこの車両はその竹中さんがレース現役時代の1988年鈴鹿8耐用ヨシムラ車を同店で再現した1台。#12ケビン・シュワンツ/ダグ・ポーレン組が2位、#45大島行弥/高吉克朗組が22位の戦績を残した年だ。’88年のGSX-R750Jはφ73×44.7mmにショートストローク化していたがヨシムラはレースでは従来のφ70×48.7mm仕様を使った。
ベースはその’88年Jかと思いきや、なんと翌’89年の限定車、GSX-R750RKだ。RKはレースベース用に作られたが、それに際して従前のφ70×48.7mmスペックでエンジンを新作。レギュラーの’89GSX-R750(K)がショートストローク版を継承(’90年型LでRKに準じたφ70×48.7mmとなる)。その意味ではエンジンは’88年レース仕様と同じボア×ストロークの油冷ということになる。ただこの車両では入庫時にはGSX-R1100エンジンが積まれていたのを、同店でストックしていたRKエンジン(もちろん内部チェックとオーバーホール済み)に積み替えて使っている。
スイングアームもRKでは上側スタビライザーが標準装備で、これも’88年ヨシムラレーサーに近い形状。このあたりの仕様やRKを選択して’88年レプリカを作るという手法は同店では以前にも使われていて、問題なし。
これを元に当時のTTF-1用パーツをふんだんに盛り込まれたり、フロントカウルのゼッケンプレートがこの年の全日本仕様(TTF-1/スプリント)と違い8耐仕様では若干の膨らみを持っているなど細部まで細かく再現されるのは、当時の現場を知る竹中さんならではと言える。カラーリングやデカール配置を含め緻密に再現するのも、当時のヨシムラに居た竹中さんだからこそ形にできる部分。まさにブライトロジックの真骨頂とも言えるカスタムだ。
ところでこの車両ではオーバーホールされたエンジンが使われるが、今から油冷を長く乗るポイントはどう考えているのだろうかも聞いた。
「油冷車のエンジンを長く保ち続けるコツですか? 特別にしなければならないことなど何もありませんよ(笑)。エンジン自体も頑丈ですしね。ほかのバイクと異なることなど何もない。あえて言うなら、いいエンジンオイルを使って、こまめに交換してあげることかな」と竹中さん。
「でも、それも快調なエンジンであってこそ、の話です。正しく整備され、定期交換部品にも絶え間なく気を遣いたい。一方で言い尽くされてもいるけれど、純正部品の廃番が続いて手に入らない部品が増えたのは悩みの種です。
人気車種のZなどは市場のボリュームが大きいから、リプレイスパーツを作ってくれるサプライヤーさんも多く、デビューから半世紀を経た今も快調が維持できる。一方で油冷車はと言えば、ここに来て人気は高まってはいるけれどZほどのボリュームが期待できませんから、そこに投資しようというメーカーも現れにくいですよね。
そうした中で京都のエムテックさんが行うリプレイスパーツへの取り組みは本当にありがたいですし、ヨシムラさんが立ち上げた油冷復刻プロジェクトにも、大いに期待しています。これらのおかげで、エンジンはもとより車体まで、“このパーツがなくて困った”ということはありません。ただし今後を見据えると、純正廃番となったカムチェーンガイドあたりで困ることになるかな」(同)
いずれにせよ今なら、他車からの流用も含め、ブライトロジックでは直せない油冷車はありません、というから心強くもある。この車両でもそれが適用されるから、今後もこの状態を保てるというわけだ。
Detailed Description詳細説明

フロントカウルはゼッケン部が膨らんだヨシムラ耐久仕様を再現。ヘッドライトは当時の8耐用で、ブルーのレンズカバーはブライトロジックで新作した。フロントウインカーはエアダクト内にケラーマン製の超小型LEDを配してレーサー感を高めている。

テールレンズ左右(テールカウル後ろ面)もレーサー同様に赤く処理。フェンダーレス化するとともに、リフレクタープレート両横にフロントと同じケラーマン・バレットアトーJE超小型LEDウインカーをレイアウトする。

サイドスタンド収納時にはサイドカウル本体とサイドスタンドに付いた外装がツライチになる凝った作りこみだ。

サイドスタンド使用時はこのようにカウルの分割部が外に出てくる。

エンジンは入庫時に載せられていたGSX-R1100用から、ブライトロジックで在庫していてリフレッシュした'89年型GSX-R750R(K)用に換装。ヨシムラ・オイルキャッチタンク等も備える。

キャブレターはTMR-MJNφ40mm。アルミフレームは外装に合わせて西村コーティングでブラック塗装仕上げとした。

フロントフォークはφ43mmのGSX-R750RKのボトムペースを赤で塗装、内部セッティング。フロントブレーキは純正ニッシン4ピストンキャリパーにサンスターディスクの組み合わせ。

リヤブレーキも純正2ピストンキャリパーにサンスターディスク。排気系はこのGSX-R750RKがモチーフとした車両当時のTTF-1用デュプレックスサイクロン(肉厚t0.8mmの軽量チタン管で、エキパイに付くチャンバーが後ろに付くSPL)をチョイスした。

上側スタビライザー標準装備のスイングアームはGSX-R750RK純正でリヤショックはオーリンズに換装。中空3本スポークのホイールはマルケジーニM3Rでサイズは3.50/5.50-17だ。

バックステップもヨシムラ、ドライブチェーンはRKの520 XXWを使う。