油冷機を楽しむ王道、専門店の活用を体現する
新旧GSX-Rを軸に車販からメンテナンス、カスタムを手がけるほか、最近では廃番パーツや入手困難な部品を精密スキャンと3Dプリンターの活用で復元・再生する3D Labo事業部を興し、油冷機向けリプレイスパーツの開発製造でも知られるプロショップ、京都のm-tech。同店が直近で修復したGSF1200は油冷機に関わる近況が分かるような1台かもしれない。
オーナーは東北在住で、京都への単身赴任をきっかけにして油冷車のカスタム&メンテナンスで知られるエムテックに、キャブレターセッティングの相談に訪れたのだという。以降の経緯と、カスタム内容をエムテック・松本さんに尋ねてみると ──。
「お越しになった当時は純正BST36キャブレター+パワーフィルター仕様で、これでは希望される細かなセッティングはできませんよ、ということでキャブレターのヨシムラTMR-MJNへの換装を勧めました。車体やエンジンまわりもチェックしましたが、エンジンの調子も良くなかった。今後も長く乗り続けたいというご希望もありましたから、状態の良いエンジンを見つけてそれをオーバーホールして積み替えた、というのが当店での作業です」と教えてくれた。
m-techではこのエンジンとキャブ換装等を行い、足まわりやレタリングが施された外装などはそれ以前にオーナーが自身で進めてきたものだった。まずは乗り続けるための芯となる動力系をしっかり押さえてもらったということで、ここはさすがに専門店の目で見てもらえたのが幸いとも言える。参考にしたい。
ここではいいエンジンが見つかったのも良かったが、最近は良質な車両が手に入り難くなっている、とも松本さん。エムテックは油冷機の中古車販売も行っている。
「最近は旧車ブームもあって油冷機も高額化しました。そんな中、インターネットオークションなどで価格に釣られて状態のよくない車両を入手して、修理に難儀するという話は多く聞きます。例えば当店なら車両を仕入れ、お客様が安心して乗れるように整備やパーツ交換を行って値付けし、保証も行いますが、オークションの個人売買などだと違う。結果、車両購入のほかに、多額の修理費がかかることになる。これから油冷機を長く楽しみたいなら、まずの車両選びは冷静な目で行うべきです」と言う。
また一方で、エムテックが勧めるのがオリジナルのクロモリシャフト。流行りのパーツとなる以前から販売を続けるもので、交換メリットも大きい。フロントシャフトなら締結剛性の向上からくる路面インフォメーションの変化の感じ方向上、ピボットシャフトなら高速道路でのレーンチェンジでのクイックさに現れる。リヤアクスルならねじれ抑制効果と、総じてバイクの運動性能の底上げができることが挙がる。
ただし、これも車体が正しい状態にあってこそ。これらでも分かるように、ノウハウや情報に長けたショップとの付き合いが、油冷機ライフを楽しみ続けるために大事なファクターと言える。この車両はオーナーがそこに気がついたわけだ。
Detailed Description詳細説明

3眼のメーターや警告灯、ステムまわりはGSF1200の純正ベース。フロントマスターはブレンボ・レーシング、クラッチマスターはニッシン・ラジアル。スロットルキットはアクティブ。燃料タンクほか外装はグレーベースでペイントされ、オリジナルグラフィックが入れられる。

エンジンはm-techの目利きで良質な個体を入手。そのオーバーホール時に使用したピストンは、長く乗り続けることを主眼に純正1mmオーバーとなるヴォスナー製φ80mmで、1156→1186cc化でとどめる。ほかは新品が出た純正バルブを組み込んだ程度でその他は既存部品を使っている。キャブレターは新たにヨシムラTMR-MJNφ40mmに換装した。

フロントフォークは純正φ43mmでフロントブレーキは純正ニッシン4ピストンキャリパーにサンスターディスクの組み合わせ。ラインはプロト・スウェッジラインでステンレスメッシュ化される。

前後ホイールは純正中空3本スポークホイールでサイズは3.50-17/5.50-17。レーシングサプライ製サイレンサーと組み合わせられるチタンエキパイはブランド不詳だ。ステップはAVARANCHEだ。

リヤショックはオーリンズに換装。スイングアームは純正でドライブチェーンはRK 520XXWを使う。