シンプルだから時代の進化に対して応えていける
初見でカーボンのタンクやサイドカバー、テールカウルといった外装パーツに目が惹かれてしまうマッハIII=750SS。全体をよく見ていくと、しっかり走りそうな雰囲気も漂っている。
「テレビでキカイダー(『人造人間キカイダー』/’72年の主人公)が乗っていたのを見て、大人になったら乗ろうと思っていたんですよ」。その当時10歳だったというオーナー・阿部さんはにこやかに話し出す。あの黄色いマシンはサイドカーになっていたが、空冷3気筒のエンジンはじめ、確かにマッハがベースになっていた。
「いざ手に入れてみると面白くてわくわくする。それで最初はフルノーマルで乗ってたんですけど、手を入れると変化すると分かって、それも楽しみながらあれこれ手を入れていきました。今の仕様というか内容は、エンジンはボーリングしてオーバーサイズピストンを入れてて、クランクも芯出しとオーバーホール。
特別なことはしていないんですけど、皆さんも知ってると思いますけれど当時のものだから、今のものと比べたら精度も甘いですし、作り方や素材とか、古いなあと思うところもあります。でもその辺をきちんと詰めて、ちゃんと作っていけば楽しく乗れるんです」
阿部さんはそうしたところに目を付けて、クリアランスをアップデートされた適正なものにしたり、素材を置き換えたりして性能のアップデートを図る。3本出しの排気チャンバーはワンオフ品で、これは燃料タンクを作ったのと同じ人の手になるものだという。
「タンクはノーマルから型を起こしてやってもらいました。ほかの外装はドレミさんで限定で出してたのを探したんです。それで全部カーボンにできた。
そうそう、手を入れれば変わるというのは、いい方にも悪い方にもなるんです。当時は今みたいにいろいろはなかったですから、工夫して良くする方法を探してきました。エンジンはちゃんと調子が出れば音が変わりますし、それで状態も分かります。シンプルだから、きちんとやれば良くなる。
あと大事なのはブレーキ。やっぱり時代が変わってますから、きちんと止まれるようにしないといけない。ですから一式換えてます。フロントディスクはビトーさんで作りましたし、リヤもディスクになってます」。キャリパーも前後ブレンボに換わっている。
阿部さんはプライベートでこのように車両を仕立ててきたが、それはめっきマッハ(2022年3月21日に紹介。’21年9月のSUGO 2FUNでのカスタムコンテスト優勝車)のオーナーにして阿部さんの友人、クレイジーマッハさんがパーツやマッハの機構を調べ、いい方法を適用してくれたからでもあった。いい仲間といいバイクの関係も見せてもらった1台でもあった。
Detailed Description詳細説明

中央にフリクションステアリングダンパー用のノブを持つステムは750SS純正で、メーターは速度計、回転計とものちの時代の純正品に入れ替えてデイトナ・アクアプローバ電圧計を追加。ハンドルはハリケーン・セパレートハンドルTypeⅠで、左右マスターはブレンボRCSとしてブレーキコントロール性にも配慮した。

フルカーボンの燃料タンクはワンオフで製作されたもの。この車両の軽量性にも寄与する。

燃料タンク以外の外装はドレミコレクションがかつて限定で製作・販売していたカーボン製品を探したとのことだ。

純正よりもかなり後ろにバーをマウントするステップはペダル肉抜きも行う。リヤマスターはゲイルスピードを使う。

削り出しマウントを介して積まれるピストンバルブの2スト直列3気筒エンジンは純正状態をベースとしてオーバーホール、クレイジーマッハさんの助言も得て細かい手が入り、いい状態を維持するようにしている。

カーボンファンネルを備えたキャブレターはミクニ・フラットバルブだ。

ステップはペダルからのリンケージを工夫しシフトシャフトホルダーでも作動向上を狙う。クラッチも油圧作動化されている。

純正φ35mmのフロントフォークはオーバーホールとリセッティングして使う。フロントブレーキはBITO R&Dをディスクを特注しブレンボ・アキシャル4Pキャリパーを組み合わせ、現代の道路状況に対処する。

リヤブレーキはブレンボGP2-SS CNC 2PリアキャリパーをSS/KHのサポートでセットして、純正ドラムからディスク化した。

リヤサスはスイングアームをアルミ化してナイトロンR3ショックを組み合わせる。ホイールはリムを組み替えて純正19/18から前後18インチとしている。排気チャンバーはワンオフ品だ。