純正再現車を気に入ったから考えていた発展性をプラス
空冷カタナらしい印象をそのままに、今新たにラインオフされたかのような仕上がりを見せるこのカタナ・ファイナルエディション。テクニカルガレージRUN(以下TG-0RUN)によるものだが、じつは2年ほど前のこの欄でも紹介している車両だ。
その時にはホイールは純正の1.85-19/2.50-17サイズ星型キャストを使っていたが、今回は2.50-19/4.00-18サイズのMAGTAN JB1に履き替えられている。他パートの仕様は前回に準じていて、フロントブレーキはブレンボ・レーシングマスターとTG-RUNブレンボ用キャリパーサポート&レーシングディスクSET(このSETはカタナ・ファイナルエディションにブレンボ4ピストンキャリパーとサンスターディスクを使ってブレーキ系を強化するものだった)とし、ステップとシートはTG-RUNオリジナル。
フロントフォークはφ37mmの純正だがインナースプリングを変更して油面を調整、リヤにはオーリンズショックを組み合わせる。そして純正らしいルックスと構成、音のままで大幅な軽量化ができるオオノスピード・フルチタンマフラーを装着した。
フロント19インチやφ37mmフォーク&ステム、スイングアームに外装といったカタナのノーマルスタイルを極力生かしつつ、今安心して乗るために必要な部分をアップデートし、純正ホイールのままでもかなり軽く押し回しできた印象だった。今回はその軽い印象がさらに強まり、重心となるエンジンの存在感を残しながらも現代車のような軽さを感じられるようになった。アップデートなのだというが、改めてTG-RUN・杉本さんに聞いた。
「オーナーさんが最初の仕様を気に入ってくださって、そのコンセプトを崩さずに進化させました。このホイール換装でラジアルタイヤも履けるようになってタイヤが選べますし、もちろん軽いしホイールもより精度良く回る、つまり、意図するハンドリングが手に入る。
元々を振り返ると、カタナノーマルを大きく変えたくない。ノーマルフォークの細くてやや寝ている感じが良くて、フォークオフセットもスイングアームも換えない。それでフロント19インチ。最初に作った時点では私たちの考え、今の交通事情に合うようにブレーキを強化してサスペンションをしっかり動くものにする。操作系も快適に使えるものにするというものを織り込んで、この形になったんです。
それでフロント19インチでのホイール換装に選択肢はMAGTANしかないのですが、実際に装着すると想像を超えていい。タイヤもブリヂストンT32、今後発売が予定される後継T33もですが、最新のものが履ける。同じ理由でリヤも18インチにしています。エンジンは一切メカノイズが聞こえないほど調子が良くて、スロットルホルダーの角度を合わせてより使いやすくした。希望通りにできたと思います。カタナらしいスタイルがきちんと出てバランスも良く、今後作る車両の指標になると思います」
今、カタナの姿を尊重しながら乗る見本的な、ノーマルルックでよく走るカタナ。TG-RUNの手がけるヴァージョンアップ・コンプリートのひとつに挙げていいとも杉本さんは続ける。それはTG-RUNがカタナ・ファイナルエディションの新車販売も行い、そこから’25年の今まで25年に至る(それ以前の車両も含めて)間に整備に修理、パーツの調達。さらに映画「キリン Point of No Return」(2012年)の車両オブザーバーとしてカスタム車も含めて多彩な劇中車を製作・メンテナンスしたこと、「フルメタル・ハガネ」という杉本さん自身が求めるフルカスタムの製作等、多くのカタナを見て、触って、作ってきた知識と経験を投影したものとも言える。
なおこの車両は、オーナーの体調もあって現在(’25年春)はRUNの販売車となっている。今いいカタナ、ノーマルを愛していて走るのに安心な個体がほしい向きには最適だろう。
Detailed Description詳細説明

基本的に純正踏襲スタイルで、製作時に外装とタンクは新品交換している。

ステムや鍛造セパレートハンドルはカタナ純正。スロットルホルダーは角度を念入りに調整して扱いやすさをより高めている。フロントブレーキマスターはブレンボ・レーシングマスターで、クラッチ側にはゲイルスピード・エラボレート・クラッチホルダーを装着。

燃料タンクは車両製作時に新品にされた。外観もきれいに保たれ、内部腐食に対しても現状では不安なしだ。

シートはTG-RUNスポーツ&コンフォートシートとして居住性や操作性を向上するもの。

ステップはTG-RUNオリジナルステップキット GSX1100Sカタナ用で、バー位置が純正から上に3mm、前に5mm移動し操作性を高めている。

スイングアームピボットシャフトや前後アクスルシャフトはクロモリに変更されて車体のしっかり感に寄与する。

エンジンは車両製作時点で状態が良く走行距離も少なかったため、ノーマルのまま外観をきれいにし、その後も良好さを保っている。フレームも車両製作時にダイヤモンドコーティングが施した。

キャブレターも純正のBS34をメンテナンスして完調にしている。

排気系はフルチタンでエンド部の形状まで純正を再現した4-2-1-2左右出しのオオノスピード・菊砲。純正18kgに対して約7kgと軽量な上に経年しても消音材交換可能で、ノーマルスタイルを維持するという車両コンセプトにも合っていた。

純正φ37mmのフロントフォークはスプリングを変更し油面等をセッティング。フロントブレーキはカタナ・ファイナルエディション専用の「TG-RUN キャリパーサポート&レーシングディスクSET」でブレンボAxialビレットキャリパーとφ310mmのサンスター・レーシングディスクを組んで必要な制動性能を確保する。

リヤブレーキは純正2ピストンキャリパー+純正ディスク。このカットからもオオノスピード・菊砲の違和感のない純正らしさも分かるだろう。

リヤサスは純正アルミスイングアームにオーリンズ・レジェンド・ツイン(SU132)を組み合わせる。ホイールは2.50-19/4.00-18サイズのMAGTAN JB1に変更され、軽さをより高めた。ドライブチェーンはRKで520サイズにコンバートしている。