車両自体の特性を捉えて専用品によってさらに生かす
特定のモデルでなく、かつての時代が持つレーシングシーンの雰囲気をカウルのデザインやあえてアンダーカウルレスで表現したXSR900 GP。その直接のベースとなった、カウルのないカフェレーサー的なXSR900や、同じ3気筒888ccエンジンを積むMT-09にトレーサー9シリーズが、共通プラットフォームモデルとして存在する。
こうした場合、一般的にはアフターマーケットサスペンションやマフラーなどは、多少のセッティング合わせはあっても、共用化が図られることも多かった。
ところが、このSP忠男×ナイトロン・コラボレートのXSR900 GPに装着されているのはそうでなく、GPだけの専用品を開発して装着している。
マフラーはSP忠男「パワーボックス フルRS」。専用品をあえて開発するのは、エンジンや純正マフラーが同じであっても、吸気系やECU、ライディングポジションなどが異なる、ならばSP忠男の基準では、それに合わせたキャラクターを作るべきということから。このXSR900 GP用パワーボックス フルRSでは、低中速トルクの増強を念頭に置いて膨張室の前後長を伸ばし、低中回転域のトルクを増して常用域を使いやすく、かつ高回転域への伸びも鋭くした。
一方のナイトロンは、リヤショックの「レースプロ」。XSR900 GP純正がフルアジャスタブルのリヤショックを持つことから、それを凌ぐべくナイトロン通常モデルより6mm大径のφ46mmハイエンドボディを持ったレースプロの採用を決定。スプリングレートと減衰特性はXSR900用のものから始めながら、このXSR900 GP用製品版ではまったく別の設定になったとのこと。その結果、純正ではやや高荷重域重視に感じられた印象が和らぎ、車体姿勢変化をしっかり感じながら路面凹凸の吸収もスムーズに行われるようになるという。
転用でない専用開発パーツとしたことには確かな意味があり、XSR900 GPの場合はそれでネオクラシック、また冒頭で述べたようなシーンの雰囲気をきちんと走りに投影した上で、その世界をより濃く味わえる。ならば、どちらも使うべきカスタムパーツリストの最上位に挙げたい。
Detailed Description詳細説明

5インチカラーTFT液晶のメーターや外装にカウルステー、セパレートのハンドルにバーエンドミラー等はすべて純正。ただハンドルは別項のように取り付け高さを変更している。

A7075-T6材をダイアノ処理したSP忠男「グッドポジションキット」(写真中央部のオレンジロゴが入ったスペーサー、ここでは試作品を装着。製品版はボルトが異なる)を装着し、グリップ位置が14.5mm高くなって操作しやすいポジションを作る。スプロケットメーカーのISAと共同開発しハーネスやケーブルの交換は不要で、価格は4980円。

888cc3気筒直列3気筒のエンジンやシルバー仕上げで往時の雰囲気を持たせたアルミツインスパーフレームは純正。エンジン左、カウル下にショックリザーバーをマウントする。

リヤショックはナイトロン・R1/2/3より6mm大径の46mmボディチューブとトップアウトスプリングを持ったスーパースポーツ専用ハイエンドモデルのナイトロン・レースプロ。プリロード/伸び側・圧側2系統の3WAY減衰/車高が調整可能でXSR900 GP用は25万6300円。

XSR900 GP純正に通じるショートタイプのデザインの中に、独立した膨張室を持ち排気口をひとつとした、SP忠男パワーボックス フルRS。ユーロ5規制に対応するため、O2センサーは触媒前後の2カ所に設置する。低中速域のトルクも増して全体にフレキシブルな特性となる。素材はオールステンレスで、ポリッシュ仕上げは19万6900円、写真のブラックエディションは20万7900円。


上写真はSP忠男パワーボックス フルRSを右横から見たところ。メインサイレンサーの奥(左側)にパワーボックス(排気膨張室)が設けられる。この容量や内部構造も変更してXSR900 GPに適した特性を得るようにしている。

リヤサスは右側湾曲タイプのアルミスイングアームによるリンクタイプ。純正KYBショックもプリロード/伸び・圧側減衰調整可能で、伸び側の調整幅はXSR900より拡大、圧側も新追加となっている。この車両に装着されるXSR900 GP用ナイトロン・レースプロはその機能を上回るように考えて製品化された。

リヤショックユニット以外の足まわりは純正。フロントフォークはKYBφ41mm倒立でプリロード/伸び、圧側高速・低速2系統減衰調整可能とする。ホイールは純正のスピンフォージドホイールで3.50-17/6.00-17サイズを履く。