これから手に入れるNinjaとして好適な手が入っている
前後17インチの最新スポーツタイヤを履いて楽しめるニンジャとして作られるACサンクチュアリーのコンプリートカスタム車、「RCM(Radical Construction Manufacture) Ninjaスポーツパッケージ New TYPE-R」。17インチタイヤに合わせたディメンションとジオメトリーが与えられ、ワイドリヤホイールに対するドライブチェーン軌道の確保も行われた上で、ステムやスイングアームをこれに合わせたものとする。さらにエンジンもオーバーホール&対策パーツ組み込みを行い、電装も後継機種ベースに一新して、足まわり=サスや制動系、ホイールには最新スペックのものを与えるといったパッケージ。まさに現代を走るNinjaと言える。
ただ、純正部品に供給終了品が増え、ベースのNinja自体も生産終了して、今ある個体は20~40年強といった履歴のものとなっている。それゆえに、今までより1段、2段深い対応を行わねばならなくなっているのが実情だ。RCMだけでなく、純正を再生しようというケースでも同じだ。しかもその純正でも、大物パーツの劣化も進む。
シリンダーはそのひとつで、アルミのシリンダーブロックには鋳鉄製スリーブが入るが、スリーブの外は空冷車のようにすべてがぴったりとアルミブロックに密着するのではなく、密着するのは上下端のみで、間の部分は空間になっている。ここはそのまま冷却水通路で、この部分のスリーブ外側には冷却水が直接触れる。そしてシリンダーブロックとの密着部、上端の下には1本、下端の上に2本のOリングが入り、冷却水通路からの水漏れを予防する。
このOリングが経年で変形したり硬化したりすると、水漏れが起こりやすい。そこでサンクチュアリーでは入庫車両の水圧検査を必須としたが、実作業を行う同店内燃機加工部門のDiNx(ディンクス。htpps://DiNx.co.jp/)でも水漏れを発見するケースが増えたとのこと。そうなるとまずOリング交換だが、GPZ900Rでは先述の上側が純正廃番になった。そのため、DiNxではその代替対策品、シリンダーライナートップOリングを新作した。
純正廃番化して長くなってきたピストンも同様で、DiNxでは1mmオーバーサイズのφ73.5mm(920cc)と少し上のφ74.5mm(958cc)をオリジナルスペック&鍛造品で用意。
組みを行うサンクチュアリー側でも、SMB=サンクチュアリーメカニックブランドで新たな純正代替/対策パーツを用意した。
「ジェネレーターチェーンのカップリングギヤと、フロント側カムチェーンガイドです。どちらも純正廃番品で、これもやっぱりRCMを作るのに要る。つまり、普通にニンジャエンジンをオーバーホールしたりするのに要るんです。
前者はRCMニンジャ・スポーツパッケージNew TYPE-Rを作る際に、ギヤ/チェーンが幅広になったA8以降の対策品を使っていたところで、改めて図面から起こして製作。カムチェーンガイドは素材の検討後テストも済んで、リリースできるようになりました」
どちらも前述のOリング同様に純正より上のスペックを持つように検討され、送り出される。今後もこうした純正代替プラスαのパーツ群は続いていきそうだ。
その上で、それらを使うコンプリートカスタムについてだ。
「GPZ900Rエンジンを使う17インチのNew TYPE-Rは継続してオーダー製作します。ルックスも性能も安定したニンジャと捉えてもらうといいですね」と同店・中村さん。この車両に話を戻すと、RCM-458というシリアルナンバー(通算製作番号)が与えられ、冒頭のように17インチで楽しめるNinjaとして’18年に製作されたものだった。その後7年の間に1万3500kmを走行、前後ホイールやフロントブレーキマスターシリンダーやキャリパー、またキャブレターといった部分をアップグレードした後に、委託販売車としてサンクチュアリー本店に展示されていた。
写真はそのアップグレード時の姿で状態は非常に良く、少し後に新しいオーナーが付いた。既にエンジンは水圧検査を受けオーバーサイズの鍛造ピストンが入りヘッドまわりもしっかり手が入るなど、対策は万全。次回オーバーホール時にシリンダーのOリングを変えなければならなくなっても、また他の純正廃番パーツの交換が訪れても、パーツがないという心配は遠のいている。それが車両製作ショップによるものなら、安心度は高くなる。パッケージとして今から買うニンジャの好例と言えると紹介したが、パーツ対応の面でも“今から買う”が適した1台とも言える。
Detailed Description詳細説明

スカルプチャーφ43フォーク用ステムKIT TYPE-1でオフセットは40→37mmとし、POSHスーパーロー・ハンドルバーをセット。スクリーンはナイトロレーシングでカウルインナーパネルと後期型用メーターカバー、レーサーレプリカミラー・タイプ5ヘッドはマジカルレーシング製。

外装はA8パターンを元にフルペイント。左右マスターはブレンボRCSだ。

ナイトロレーシング・コンビネーションKITIII(ナイトロレーシング製アルミダウンチューブに同じくステップを連結)の装着によってダイヤモンドフレームを疑似ダブルクレードル化して車体剛性も高め、フレーム本体もドライブチェーンオフセット対応インライン処理等を施して17インチ適合化する。クラッチレリーズKIT(Type2)はナイトロレーシングでドライブチェーンはEK RCM530。サイドカバー下側にはTAGOSヒールプレートも装着されている。

シートはデイトナ・RCMコンセプトCOZYシートでフェンダーレス化等も行った。

エンジンは水圧検査後に0.5mmオーバーサイズのφ73mm鍛造ピストンを組み、クランクダイナミックバランス/ジャーナルラッピング、焼結合金オーバーサーズバルブガイド等も組み(これらの内燃機作業はDiNxで行う)、各部に対策パーツをセット。消耗部品も交換、電装も後継機用新品にコンバートされている。冷却系もナイトロレーシング・GPZ900R/750R NinjaワイドラジエターKIT&GPZ900R/750R NinjaオイルクーラーHIGHマウントKITで強化される。キャブレターはTMR-MJNφ36mmのヨシムラ・デュアルスタックファンネル仕様を組み合わせる。

フロントフォークはノーブレストE×MパッケージでオーリンズRWUをマウント。フロントブレーキはブレンボGP4-RXキャリパー+サンスター・プレミアムレーシングディスク“RCM”コンセプトモデルを装着。

リヤブレーキはブレンボGP2-SSキャリパー+サンスター・プレミアムレーシングディスク。排気系はナイトロレーシング・GPZ900R/750R Ninja 4in1機械曲げ チタンEXマフラーのショートテール UPタイプ(ハーフポリッシュ)に同ヴァリアントチタンサイレンサー(ヒートポリッシュ)の組み合わせだ。

リヤサスはスカルプチャー・R.C.M専用ワイドスイングアームの上側にモナカ合わせタイプスタビライザーを溶接した上でブラックコーティングしたものにオーリンズのNinja 17インチホイール/A12以降用のKA203をセット。ホイールはO・Zレーシングのアルミ鍛造、GASS RS-Aの3.50-17/5.50-17サイズへアップグレードされている。