いいエンジンを元に軽量&強化した車体を自在に楽しむ
ZRX最終型となるZRX1200DAEGが2016年に生産終了してから10年近く。これはZRXだけでなく、GPZ900R系エンジン搭載車としての歴史が終了したことを意味する。純正パーツはだんだん供給終了していくが、ZRX用シリンダーもそんなひとつ。トリニティガレージナカガワではこれに対してZRX1200R/DAEG、ZZR1200に使えるハイパフォーマンスシリンダー、「TGN HPC#1164」[TGN HPC#1224」を’25年初頭に発表・供給を行いだした。それほどにこのシリーズのエンジンへの大きな支持と重要性を感じ取っているからだ。
HPCのようなシリンダーだけでなく、TGナカガワではさらに広くニンジャ系への長寿化/高質化メニューを揃えている。各種加工やメニュー化されたコンプリートエンジンもそうだ。発表から8年が経ち、TGナカガワの主軸業務のひとつに発展した『R-Shot#M処理』は引き続き注目の作業だ。対象物の表面に二硫化モリブデンを混入した担体粒子=メディアを高速で打ち付け=ショットして対象物の表面強度を高め、かつ摺動抵抗を減らす手法。対象物の寸法を維持してくれる特徴もあり、長期定着性も確認されている。測定して許容範囲内にある中古ピストンに処理を施して再使用できるなど、メリットは多く大きい。そんなR-Shot#Mの良さを実走でも味わってきた車両も続々と作られている。
このZRX1200Rもそうした1台。ピストン/ピストンピン、クランクメタルにバルブ、ミッション、そしてオイルポンプにもとほぼすべての可動パーツにR-Shot#Mを施している。排気量は1224ccだ。
「ポート加工も行って、出力は190PS近辺とパワーも出ていますが、一方で過渡特性も良くなっています。スムーズに吹けて、回転が下がるときもスムーズ。そうした特性の良さを気に入って、R-Shot#Mを施す方も増えました。バルブに施すとバルブガイドの減りが抑えられますし、オイルポンプも傷がなくなり、スムーズに動くようになる。寸法復元性があって微細な傷は消せるんですね。
このZRXでは、車体の方にも当社で確立したような補強(キャブレター後部のループ内側への補強、フレームのリヤエンド左右をつなげるようにパイプを渡してねじれに対して強さを増し、リヤショックの作動もしっかりさせるなど)を施し、外装にカーボンパーツを多く使って各部軽量化もしてあります。それで存分に良さを楽しまれています」とTGナカガワ・中川さん。エンジンの性能+過渡特性の良さを、先のフレーム補強に効果的な足まわり構成で受け止め、軽量化でさらに引き延ばす。そうした密度の高いパッケージングにも注目したいし、R-Shot#Mによって(冒頭のHPCも長寿化をバックアップするし、今後の選択肢にもなる)それが長く楽しめる点にも注目という1台なのだ。
Detailed Description詳細説明

ドクターSUDAのフレームマウントカウルステーでフレームマウント化された平織りカーボンのビキニカウルはエーテックでスクリーンはMRA、ミラーはマジカルレーシング・NK-1ミラー・タイプ3ヘッドをセットと、多くの部分をカーボン化している。

ステムはケイファクトリー・トリプルツリーType2でハンドルはマジカルレーシング製カーボンハンドルバー、左右マスターはともにブレンボRCS。ヨシムラ・プログレス2メーターやシフトインジケーターも加えた。

ビキニカウル同様にシートカウルはエーテック・平織りカーボンでアルミサイドカバーはノジマエンジニアリング製。シートはワイバン・コンフォートでナンバーホルダーはケイファクトリー製チタン。

ステップはアグラスでドライブチェーンはRK 520XXW。ピボットや前後アクスルシャフトはKOODクロモリに換えている。

φ81mmのJE鍛造ピストンによって1224cc化、ポート加工や各部バリ取りにバランス取り等も行ったエンジン。カムはヨシムラステージ1が組まれる。ほぼすべての内部パーツにTGナカガワオリジナルのR-Shot#Mも施され、摺動性も耐摩耗性も高めている。クラッチカバー/パルサーカバー/クラッチレリーズはケイファクトリー、アンダーカウルはマジカルレーシングだ。

キャブレターはFCRφ35mmで点火系はTGナカガワH.I.R.(ハイパーイグニッションリーダー)+TGナカガワD.I.S.(ダイレクトイグニッションシステム)を組み合わせてセットアップしている。写真左側、デュアルスタックファンネルのメイン吸気口そばのフレームに立体三角プレートの補強が見える。

フロントフォークはオーリンズRWU・ゴールドでフロントブレーキはブレンボ・レーシングラジアルCNC 4Pキャリパーにサンスター・ワークスエキスパンドディスクの組み合わせ。ホイールはアルミ鍛造のゲイルスピード・Type-Cでリヤを純正から1サイズアップした3.50-17/6.00-17サイズを履く。

リヤブレーキはブレンボCNC 2Pリアキャリパーにサンスター・ワークスエキスパンドディスク。排気系はSC=スパイラルコレクターを持ったノジマFASARM PRO(R) TITAN TYPE-SCの、TGナカガワによるコラボバージョン・特注仕様。

リヤサスはOVERスイングアーム タイプ9にオーリンズKA417(グランド・ツイン)を組み合わせる。アッパーショックマウントの近く、純正では橋渡しされていない左右のフレームをつないで車体全体の剛性を上げるとともにショックの動きを正確化するのも特徴だ。