定期整備と維持の内容を理解したい油冷モデル
エンジンオイル交換を定期的に行っておけば維持できる──。初代登場から40年を迎えたGSX-R、とくに’85〜’91年の750と’86〜’92年の1100といった油冷モデルでは、もはやそれだけでは済まない。各部がきちんと動くのか、サスやブレーキ、タイヤはアップグレードを行った上でメンテナンスされているかも油冷GSX-Rを今走らせるのに不可欠の要素になっている。
この’92GSX-R1100Nは、それを体現する例です、とテクニカルガレージRUNの杉本さんは言う。今仕立てられたとさえ思える車両に込められた内容を聞こう。
「6年ほど前に購入していただいたもので、今回は車検での入庫。その間に走行距離も増えているのですがノントラブルで、それは私たちの提案を理解して使っておられるのも大きいです。オイル交換は当然としても外観はスクリーンの透明度も高いままできれいにしています。乗らない時の保管状態もいいんですね。
それでサスペンションですが、フロントフォークは内部チューンとスプリング変更、リヤはオーリンズできちんと動くように。ブレーキもマスターはブレンボでコントロール性を確保してキャリパーも整備、ディスクもサンスター製にして、タイヤも新しいもの。ステップもTG-RUN製品を使用いただいています。強いて言うなら、マフラーは純正から換えるといいかなという状態です。現行モデルでもそうですが、今ではマフラーは交換の目的が変わってきました。出力特性の変化より、ここを軽くすることで車両全体を軽くして運動性を良くする、タイヤやブレーキへの負担を軽くする。このR1100Nで言えば、重い純正からチタン製にするだけで約20kgと結構な重量が減らせます。その効果はやはり大きい。
そんな考えも含めて、この車両の作りは今油冷を維持するための参考になると思います」
杉本さん推奨の実践例をコアとして、制動力や衝撃緩衝性や操作性を高め軽くするという車両だ。これだけでも十分に参考になるし、そのコアを生かしてもっとその機能を堪能してみたいという向きには、TG-RUNのコンプリートカスタム=ヴァージョンアップ・コンプリートがある。場合によっては動力系のスープアップも加えて、車両の本質をより引き出し、かつ各オーナーに合わせて製作するもので、GSX-Rは水冷/油冷ともその中核にある。パーツの選択は機能的な推奨に基づき、さらに各オーナーの使い方やシチュエーションに合わせて組み合わせも変える。その見立ても参考になるのだが、ベースにしたいのはこの車両の販売時の仕立ての良好さ、そして今もそれを継続するという点だと思える。この良好さは、既にこの車両の方向性がヴァージョンアップ・コンプリートと同じだということも感じさせてくれる。
Detailed Description詳細説明

透明度を高く保ったままのスクリーンやきれいな外装/アルミフレームからも、車両各部に目が行き届いていることが分かる。左右マスターはブレンボ・レーシング。

アルミセパレートのハンドルは純正で、アルミの純正メーターマウントパネルともさびひとつない。インジケーターランプやキーシリンダーさえきれいな状態だ。

現状で純正のステンレス製左右出しマフラーはチタン製などに換装して軽くしたいとも杉本さん。

1127ccの油冷直4エンジンや外装類は純正で状態良好。自己判断でなく冷静な第三者(ここではTG-RUN)の目で見て状態等を判断するのは重要となる。

エアクリーナーボックス仕様で使われるキャブレターは純正のBST40SSでインシュレーター/バンド含めて状態良好。

ステップは純正よりやや前/下のバー位置も選べる9ポジションのTG-RUN バリアブルステップキット GSX-R1100(89-92)用(TG-RUN店舗、オンラインショップで販売中)だ。

ステップ左側。ベース=車両がきれいな状態だからこのように新品のアップデートパーツを付けても違和感がほとんどない。ドライブチェーンはRK 50XXW(530同等)を使う。

リヤショックはオーリンズSU635に換装される。すでに35〜40年が経過しているから純正を何とか使うというよりもこのように信頼できる現代の社外品を使うことが安全に乗るためにもいいとのことだ。

フロントフォークはGSX-R1100N純正のφ41mm倒立でインナースプリングを変更してセッティングしている。フロントブレーキは純正ニッシン4ピストンキャリパー+サンスター・プレミアムレーシングディスクで、マスター/ライン/ディスク変更で必要なタッチや制動力を加えている。

リヤブレーキは純正2ピストンキャリパー+サンスター・プレミアムレーシングディスク。メンテナンス用のレーシングスタンドフックも追加した。

スイングアームは純正アルミでアルミ中空3本スポークの前後ホイールは3.50-17/5.50-17インチの'92GSX-R1100N純正品を使っている。タイヤも現代のブリヂストン製を履く。