必要なものを残すミニマルにスマートに機能を追加する
サイドカバーを取り払い、配線類も外からは見せないレイアウトに徹したZ1-R。スカチューンと言うよりもミニマルやスマートという言葉が似合う1台だ。手がけたMGネスト・椎根さんはこう説明してくれる。
「オーナーさんが好きなイメージで、全体にすっきりした感じに作った車両です。パーツは私のKZ1000カスタム(’80年代スタイルを思わせるようなシンプルさにレースから街乗りまでこなせる内容を作り込んでいる)も参考にしてもらって好みのものを選んで。テールランプもベースフレーム自体から前に追い込んで、純正よりも内側に入るようにしています。電装などもサイドカバー内からシート下〜テールカウル内に移して不要な配線もなくしてまとめました」
残った配線も露出しないようにチューブ内にまとめてシンプル感をより高め、取っつきの良さも感じさせる。車体やエンジンの仕様はどうだろう。
「前後18インチはそのままでフロントフォークはSTDφ36mmですがステムはザッパー、Z650純正の50mmオフセット(Z1-Rノーマルは60mm)にしてます。エンジンはクランクやミッションなどはSTDですけどピストンはJBパワーφ76mmとして1197cc、ヘッドは2mm面研して圧縮を高め、バルブはINφ37.5/EXφ31mmに大きくしてポートも拡大、カムも変えています。これで後軸134PS。軽快に走りますよ」
Zの現役当時に19/18インチから前後18インチ化した際のトレール量不足を補うために使われた、フォークオフセットの少ないザッパーステム(Z1-R純正の前後18インチではZ1000そのままのオフセットだった)に軽量で強い鍛造ホイールを組み合わせる。そんな通好みとも言える車体に、強力ながら扱いやすさも持つエンジン。
吸気にRSキャブ(ミクニTMの北米での名称)を使うのは加速ポンプが使えるからと理由も明確。マフラーもこのスタイルに合ったネスト製メガホンとシブい選択。オイルクーラーもあえて付けない方がZぽいというオーダー(必要なら付ければいい)。このように細部にまでミニマルの魅力を強力に打ち出していた。
Zに手を入れて普段からパワフルさや軽快さを楽しみながら、保安部品だけ外してロードレースなどへもその範囲を広げてみる。ネストによるこのZ1-RはそんなZ現役時代からの使い方を今風に生かした、新鮮味もある仕上がりと言える。
Detailed Description詳細説明

ビキニカウルを外した上でステムをZ650純正に換装しフォークオフセットを60→50mmとしてハンドリングを適正化する。メーターはZ1-RのものからZ系純正に変更、そのケース右側にスタックST200エンジン回転計をインストール。フロントマスターは現代のニッシン製に置換した。

ASウオタニSP2点火ユニットなどの電装はシート下にアルミパネルでトレーを新作してまとめ、配線も必要なものを残した上でチューブでまとめてある。ETC車載器もテールカウル部に収まる。

シンプルでZ系に似合うデザインのステップはスピードショップイトウ・Z用ステップ。ドライブチェーンはRK・520XXWのゴールドをチョイス。

テールランプは少し突き出し量が多い純正よりもテールカウル内側に入るように、マウントベースから内側(車体前側)に追い込むように加工を施した。

きれいな外観を見ていると吸気→燃焼→排気の流れも想像できそうなエンジンはJB-POWERφ76mm鍛造ピストンで1197cc化され、ヘッド2mm面研で圧縮を上げてポートは拡大、バルブもINφ36/EXφ30mmの純正に対してφ37.5/φ31mmに大径化。カムもWEB435とし、スムーズなエアフローで強力な燃焼を生かすような感じで作られ、幅広いシチュエーションに対応する。

キャブレターはミクニRS36でこれはケーヒンCRと出力が近いがRSには加速ポンプが付いているからいう理由での選択だ。

排気系はMGネストオリジナルスチールメガホン(19万8000円)で、2024年末の取材時点でバックオーダー中だった。

フロントフォークは純正φ36mmベースでセッティングされ、フロントブレーキはブレンボ・アキシャルCNC 4ピストンキャリパー+サンスター・ワークスエキスパンドディスクと十分な制動力を得ている。

リヤブレーキはブレンボP2-RS84 2Pリアキャリパー+サンスターディスクの組み合わせ。

リヤサスはオーリンズKA446グランド・ツインを純正スイングアームにセットする構成。ホイールは純正前後2.15-18キャストから当時感もある十字断面5本スポークのMAGTAN JB1に換装、サイズは2.75-18/4.50-18サイズとした。