17インチコンプリートカスタムZの最新が分かる
ACサンクチュアリーのコンプリートカスタム、RCM(Radical Construction Manufacture)。Zシリーズを初めとする’70〜’80年代の名車に最新の17インチラジアルタイヤを履かせることを軸として、’90年代のカスタムブーム期に積み上げてきたノウハウを体系化して、コンプリート車両にまとめ上げたものだ。成立したのは2000年頃で、フォークスパンやオフセット、スイングアーム長さにピボット高といった数値を前後17インチに最適&定量化する。
成立当時で20〜30年、今なら40〜50年が経過している元々のフレームに対して、加工手前の測定や修正もきっちりと行った上でタイヤのグリップ、すなわち車体への入力の大幅なアップを受け止めるような補強を行うが、この場所や数、部材やそのサイズ等をメニュー化する。先の各部パーツを付加した際、例えばワイドタイヤを履いた時に外にオフセットされるドライブチェーンが干渉しないような軌道確保加工や、同じくリヤショックのマウントと最適レバー比で効果的にサスを動かすレイダウンマウント等の加工も行い、組み上げた際の車体姿勢も計算に入っている。
’24年末で通算650台を超えるRCMが製作され、そのうち9割近くが空冷Z系のモデルという。先の定量化、つまり基準になる数値を高いレベルで満たすことで完成度を高め、どのRCMもそれをキープする。そのレベルはパーツや技術の進化によって、さらに引き上げられ続けている。
オーリンズ前後ショックやブレンボ+サンスターディスク、アレーグリ・ショルトシステムラインによるブレーキまわり、MotoGPでのシェアも高いO・Zレーシング製鍛造ホイールといった吟味されたパーツ群による足まわり。これらの進化でもレベルが上がり、より高質化できる。またデイトナ・RCMコンセプトシートやRCMコンセプトハンドルバー、EK530RCMドライブチェーン等のRCMコンセプトパーツ群によっても、定量化が維持できる。劣化や万一の破損からの交換時にも同じ物が手に入るし、基準となるパーツがあればそこからの調整も容易という具合だ。
当然だが、RCMのエンジンも同様の流れがあった。経年や使用からくる劣化への対策パーツ製作や対策手法をオーバーホールと組み合わせて状態を良くする。それらをまとめて排気量の拡大は抑えて寿命を重視する「ライフパッケージ」と排気量拡大ほか性能強化を優先する「パワーパッケージ」がメニューとして成立した。さらに時を経て、純正でもう出ないオイルポンプをトロコイド式新品としてオイル送量を高めるようにしたり、ガタを抑えつつ作動を正確化するバルブガイド精密打ち替え&ガイド穴ボーリング、バルブシートカットにクランクの芯出しにフルバランス等も加え、ライフとパワーの両立という領域にも入ってきた。このZ1でもそれらのメニューが施されている。その上で今では内燃機加工部門DiNx(ディンクス)がこうした精密内燃機加工を担当することで、エンジンの定量化&高質化、作動のスムーズ化がアップデートされつつある。車体のところでも触れたように、後から加わったメニューは、エンジンならオーバーホール時(そうでなくてもいいが)に追加できるのも、RCMというパッケージの魅力と言える。
雰囲気や価値はそのままに、後のバイク界の技術や素材等の進化をカスタムという技法で取り込んで、今走るのに適した走り味を備える。オリジナル同様に、こうした進化版のZ(ここではRCM)も揺るがない価値を作った。そんな価値、そして安心の上にさらに自分仕様というカスタムも加えて変化もできるという現代版Z。このRCM-561は、そうした魅力を見せてくれる1台と言える。
Detailed Description詳細説明
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スカルプチャーφ43SPステムKIT TYPE1でフォークオフセットは60→35mmとし、デイトナRCMコンセプトハンドルバー&グリップエンドをセット。メーターは純正で、クラッチを油圧駆動化して左右マスターにブレンボRCSを使う。
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純正タイガーパターンをベースにグラデーションラインやメタリックでアレンジを加えたペイントはエンジェルによる。この外装カラーも含め、全体のスタイルはサンクチュアリーが2018年のアメリカ・ロングビーチでのモーターサイクルショーに展示したRCM-449がモチーフとなった。
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バックステップはナイトロレーシング。同じくナイトロレーシングのクラッチレリーズカバーKIT Type2でクラッチは油圧駆動化されている。フレームはオリジナルST-Ⅱ補強メニューでスイングアームピボット上はじめ12カ所の補強が入り、リヤタイヤのワイド化によってドライブチェーンが23mm外側に来ることに対しても軌道確保/インライン処理を行っている。
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シートはRCMに合わせた形状でスポーツ感も高めたデイトナRCMコンセプトCOZYシート。カラーリングやウインカーなどはオーナーの好みで変えていける部分で、カスタムの楽しみも十分に持つ。
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この車両の製作時は過渡期にあったが、エンジンはピスタル鍛造φ71mmピストン/PAMS ESTライナーによる1045cc仕様としてバルブガイド入れ替えやPAMS HFバルブ、ミッションドッグクリアランス調整やクランクケースのポンピングロス軽減加工も行う、ほぼフルメニュー。点火系はウオタニSP2、オイルクーラーはナイトロレーシングOILクーラーKITの11インチ13段ラウンドタイプで冷却性にも配慮する。
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キャブレターはヨシムラTMR-MJNφ38mmデュアルスタックファンネル仕様だ。
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排気系にはナイトロレーシング4in1手曲げチタンEXマフラー+同ストレイトチタンサイレンサーV-1ハーフポリッシュを選択した。
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フロントフォークはノーブレストE×MパッケージによってオーリンズRWUをセット。フロントブレーキはブレンボGP4-RXキャリパー+サンスターRCMコンセプトφ320ディスク、アレーグリ・ショルトシステムブレーキラインの構成だ。
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リヤサスはスカルプチャーR.C.M専用ワイドスイングアームにモナカ仕様スタビライザーを追加し、にオーリンズKA131レジェンド・ツインリヤショックを組み合わせる。リヤブレーキはブレンボGP2-SSキャリパー+サンスターφ250ディスク。
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ホイールはアルミ鍛造6本スポークのO・Z GASS RS-Aで3.50-17/5.50-17サイズを履く。ドライブチェーンはEK530RCMだ。リヤショックも180にワイド化したリヤタイヤに合わせて外側にマウントしてまっすぐ作動、かつ最適なレバー比で動くようにレイダウンマウントされている。